第47話 みんなのお姉ちゃん

 朝になり、ナーレで門兵をしていたアダンが王様に呼ばれ来ていた。


 「私がナーレの町で門兵をしていますアダンと申します」

 「うむ。よく来てくれた。実はそなたに聞きたい事があり呼ばせてもらった」

 「聞きたい事とはなんでしょうか?」

 「そなたが門兵として働いている時にリリスとリンと会った事はあるか?」

 「はい。確かにそのような名前の女の子をギルドに案内しギルドマスターと一緒に会話しました」

 「そうか。会話の内容聞いてもよいか?」

 「はい」

(潰れかけの教会に住んでいた事、連れのリンの村が盗賊に襲われた事、その当時2人には身分証がなかったのでギルドカードの登録、魔力の有無、ギルドの説明をした事を話すアダン)


 「子供たちの言動はわかった。そなたはその後どうした?」

 「私は子供たちと別れた後、ナーレ領主様に報告をして門に戻りました」

 「そうか…。他に何かあるか?何でもよい」

 「では…子供たちが教会から離れた原因ですが、魔物討伐の依頼を受けたまたま休憩をしに教会にきていた冒険者2名が、盗賊の追手をひきうけ子供たちを逃がしたそうです。のちに…1名だけ町に帰り、まだ生きているはずだともう1名の冒険者を探す捜索隊が組まれました」

 「して…どうなった?」

 「領主様にも報告したのですが1人も捜索に出していただけず、リリスとリンとギルド員と冒険者とで出発しました」

 「そうか…」

 「夕方ごろには出発した者たちともう1名の冒険者も皆戻ってきましたが、全員の顔つきが暗くどんよりした空気でした。次の日…子供たちが領主様の屋敷に向かっている姿を見かけました…その次の日には子供たちをナーレから追い出せと領主様からの通達がありました。以上です」

 「わかった。そなたの言葉でリリスたちの言葉も本当だと証明された。下がってよい」

 「は!失礼します」


 王様はおでこに手を当てながら…

 「トンベルめ、余計な事ばかりしおってからに」

 「そうですな。門兵の話からちゃんと報告はされており…暗くどんよりした空気とはリリス殿が言っていた隠し部屋の事とリリス殿が魔族との事でしょうな」

 「うむ。ギルドから報告でも受け、呼び出したということか…」

 「そうですな。リリス殿の言う通りなら、そのまま決闘になったはずです」

 (ナーレ領主:オディロン・トンベル)


 そんな話がされているとは知らない子供たちが目を覚ます。


 「おはよ」

 「おはよ~」

 「おはよ。お姉ちゃ~ん」ギュ-

 「はいはい。おはよティム」


 3人とも目を覚ましティムはリリスに抱きついてきた。


 「王都でのお話が終わったら、1度村に戻っておじいちゃんのお墓にちゃんと挨拶しようね」

 「うん」

 「私もティムを助けれた事とこれからティムのお姉ちゃんになる事、ちゃんと報告したいからね」


 ずっとリリスに抱きついているティムを見るリン。それに気づいたリリスは…片腕を広げ「リンもおいで」とリンを抱きしめてあげる。


 「ふふ。私の妹たち可愛い~」

 「お姉ちゃん」

 「お姉ちゃ~ん」


 その時、コンコン!と扉がノックされ王妃様とアリアーヌがやって来た。


 「あらあら、本当に仲が良いのですね~」

 「えへへ。おはようございます。ほら?2人も」


 2人はリリスから離れ…

 「おはようございます」と挨拶する。


 「はい。おはよう」と王妃様が言うと、突然アリアーヌがリリスに向かって走り出し…リリスに抱きつきながら「お姉ちゃんおはよ」と挨拶してきた。


 「あらあら、やっぱり同じ年頃の子が欲しかったのね。さぁ朝ご飯にしましょうか?お腹すいたでしょ?」

 「はい」

 「うん」


 王妃様がパンパンと手をたたくと扉が開き、メイドがワゴンを押しながら入ってくる。

 「お願いね」

 「はい。かしこまりました」


 メイドはワゴンに積んで持ってきたパンとスープと果実を子供たちの前に置いていく。

 「アリアーヌも一緒に。みんなで食べてね」

 「はぁい」


 リリスはスプーンを器用に使い綺麗に食べていくが、妹たちとアリアーヌは口の周りがベタベタだった。


 「ほら、リン」フキフキ

 「ほら、ティムも」フキフキ


 妹たちの口を拭いているとアリアーヌも顔を近づけてきた。


 王妃様の顔を見るとコクンと頷かれたので…

 「ほら、アリアーヌちゃんも」フキフキ


 アリアーヌに口の周りを拭いてあげると喜ばれた。


 「アリアーヌも皆さんには心許しているようですね。これなら安心して任せられます。私は仕事のため一緒にいられませんが、ご飯や何か困った事があればこちらのメイドに話してくださいね」

 「はい。わかりました」

 「アリアーヌ、お城の中ならお姉ちゃんたちと遊んでいいわよ」

 「ほんと?わ~い」

 「後は頼むわね?」

 「かしこまりました」

 「あの子がしっかりしてるから、側で見ているだけでいいわ」

 「はい」


 王妃様はメイドをその場に残し、部屋を出て行った。

 リリスたち4人は「朝ご飯食べ終わったら何しようか?」と相談し始める。

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