第46話 家族
まだ気持ちが落ち着いてないティムに寄り添い優しく抱きしめるリリス。
「ティムの家族って全員あの村にいたの?」
「…うん」
「そっか…」
「リンの祖父母さんって存命されてる?」
「存命?」
「生きてる?ってことね」
「ううん。リンが産まれた時にはすでに2人共いなかったみたい」
「そっか…じゃ私たち3人共、もう自分の家族いないのね」
「え?うっ…うわ~ん!」
「え?ちょ、ちょっとお姉ちゃん泣かしちゃってどうするの?」
「今は泣いていいよ。でもね…泣き終わったら3人で家族になろうね?」
「お姉ちゃ~ん」ギュッ
「リンもおいで。落ち着いたら家族になろうね」
「うんうん」
「よしよし…今は泣いていいよ。全部出してスッキリしちゃえ」トントン
リリスはリンとティムを抱きしめ、2人の背中をトントンと軽く叩いていく。
「私が2人のお姉ちゃんとしてちゃんと守ってあげるからね」
リンも少し両親を思い出したのか、少し泣いていた。ティムは大泣きしていたが少し落ち着いてきている。
「小さくてもいいから2人が安全に暮らしていける家探さないとね。畑でも作って自分たちでお野菜作ったり…いろいろやってみようね」
(そのためにも早く今抱えている王都の問題を終わらせないと…)
リンは落ち着き、ティムもやっと落ち着いてくれたが…2人はリリスから離れない。
「お姉ちゃん」
「お…お姉ちゃん」
「はいはい。お姉ちゃんだよ。一気に甘えん坊になっちゃったね」
(ティムも、もしかして1人っ子なのかな?)
2人がリリスに甘えていると…コンコン!と扉をノックされ1人の女性が入ってきた。
「失礼します。あら、お邪魔だったかしら?」
「いえ、大丈夫ですよ。さぁ2人ともちゃんと座ろうね」
「うん」
「しっかり者のお姉ちゃんと甘えん坊の妹ちゃんたち…可愛いわね」
「どうされました?」
「あら、ごめんなさいね。あなたたちを見ていたら…あの子にももう1人いる方がいいのかな?ってね」
「あの子って…」
「ごめんなさいね。私はマリアンヌ・イスラント。あの子アリアーヌの母親です。この度は誘拐され監禁までされていたアリアーヌを助けていただきありがとうございました」
「いえ、たまたまですよ」
「あなたたちの事は夫であるフレデリクから伺ってます。たまたまだったとしても助けてくれたのは事実、ありがとうございます」
「アリアーヌ様はお元気ですか?」
「ええ。危険な目にあったとわかってないのか…元気よ」
「よかった」
「アリアーヌは1人っ子なのよ。城内には小さな子供があの子しかいなくてね…短い間でも同じ年頃の子と会えて嬉しそうでしたよ」
「そうですか。実は今回の話が終わるまで、アリアーヌ様の護衛役としてこの城に泊まる事になりまして」
「そうなのね。今日はゆっくり休んで明日からアリアーヌといっぱい遊んであげてね」
「はい。わかりました」
「私はそろそろ失礼しますね。ごゆっくり」
王妃様が挨拶しに来たことにびっくりしたリリスだが、王妃様も1人の母親だとわかり何故かホッとしていた。
「アリアーヌちゃんも1人っ子なんだね」
「みたいだね~」
「ティムも1人っ子?」
「うん」
「そっかぁ。みんな1人っ子だね」
「おそろだね~」
「少し何か食べようか?お昼も食べてなかったもんね」
「そうだね。お腹すいちゃった…」
「火は今使えないから、パンと果実とサラダでいい?」
「うん」
「え?いいけど、どこにあるの?」
「ここだよ」
ここだよ。とリリスはマジックバックをポンポンと叩きパン3つと果実3つと小さくちぎった葉物野菜のサラダを皿に盛り1つ取り出した。
「わぁ、すごいね」
「マジックバックっていってね。バックは小さいのにこの部屋くらいの荷物をしまえるんだよ」
「へぇ~すごい」
「いっぱい食べて、今日はもう寝ちゃおうね」
「うん」
「…お姉ちゃん?」
「ん?どうしたの?ティム」
「一緒に寝たい…」
「うん。いいよ。私もリンもいつも2人一緒に寝てたんだよ」
「そうなんだ?」
「うん。ご飯食べたら、みんなで一緒に寝ようね」
「うん!」
夜ご飯を食べ終わった3人は寝る準備を始めた。リリスはポーチからパジャマを3着取り出し、リンとティムに渡す。
「これは?」
「寝間着だよ。そのまま寝たらベッド汚れちゃうからね」
「は~い。今着てる服どうしよ?リンちゃんいい?」
「いいよ。一緒に入れといてあげるね」
「ありがと」
3人とも着替え終わり、ベッドに入る。
「さぁ一緒に寝ようね」
「うん」
「どうしよっか?」
「お姉ちゃん真ん中に寝て?」
「ん?いいけど2人は?」
「私たちは両側から1人ずつくっついて寝る~」
「あはは…そうきたかぁ。いいよおいで」
「わ~い。お姉ちゃん」
3人は川の字に寝転び、リリスを真ん中にリンとティムはその両側からリリスに抱きついて寝ることになった。
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