第45話 ティムに説明しよう

 リリスたちを騎士団長エックハルトにまかせ、応接室に残る王様と宰相とアリアーヌ。


 「アリアーヌや。次はお前が知ってることも教えておくれ」

 「うん」

 「朝からずっと姿が見えなかったみたいだが、どうしていたのだ?」

 「んとね…朝起きてご飯食べてお庭に出てたら、おじさんが近づいてきていきなり真っ暗になって寝ちゃて…目が覚めたらティムちゃんと一緒にお部屋にいたの」

 「おじさん?見たことある人か?」

 「わかんない。お部屋にいたら、カベが壊れてリリスちゃんが出てきたの」

 「陛下。リリス殿は魔力持ちなので魔法を使いカベを壊したのでしょう」

 「ああ、そうだろうな」

 「うん。すごかった~。リンちゃんのお部屋行く時もドカーンって、みんなでお部屋出る時も2人でドカーンって壊してた」

 「そうか。一緒にいる子も魔力持ちと考えてよかろう」

 「そうですな~」

 「みんなで歩いてたらゴトゴト音がしてきて、リリスちゃんがおじさんとケンカしてたの。すぐガシャガシャ歩く人がきて、あの冷たい部屋に入ってたの」

 「リリス殿の言う通りですな。馬車が近づき、リリス殿が言い合ってたのはナーレ領主でしょう。ガシャガシャはおそらく衛兵たち、冷たい部屋は牢屋ですな」

 「うむ。どうやら王都での出来事は本当みたいだな」


 王様と宰相がアリアーヌの話を聞いていると…リリスたちを案内し終わったエックハルトが戻ってきた。


 「戻りました」

 「うむ。ご苦労」

 「陛下、ナーレといえば…今、ナーレの門兵をしていた者が王都に別の仕事で来ております」

 「そうか。すぐ呼んでくれ」

 「はっ!」


 お城の一室に案内されたリリスたちは、お城の部屋の豪華さにびっくりしていた。


 「うわ~キラキラ~」

 「ね~」

 「ツボとか触っちゃだめよ~。すごい高い物だからね~」

 「はぁい」

 「ソファもふかふか~ベッドもふかふか~」

 「そうだね。綺麗に使おうね」

 「はぁい」

(とりあえず、お城から出なければ大丈夫よね…)


 「お姉ちゃん、アリアーヌちゃんやっぱり王族だったね」

 「うん。あの感じだと誘拐されてあまり時間たってないね」

 「そうなの?」

 「王様あまり焦ってなかったもん。いなくなった事にも気づいて無かったんじゃないかな?」

 「そっかぁ…」

 「たぶん…このお城、他に小さな子供いないんじゃないかな?」

 「だから、誰も気づかなかったとか?」

 「たぶんね」

 「あっ!そのための護衛?」

 「うん。私たちは魔力持ちだし、護衛役ならずっと一緒にいれるってことで利用されちゃったかも知れないね…」

 「むむむ…」

 「まぁでも、このままじゃ宿にも泊まれないしお互いに助かるからありかな…」

 「そっか。お互い様ならいっか…」


 リリスとリンが話しているとティムが話しかけてくる。


 「リンちゃん、お姉ちゃんと仲良いね?」

 「うん」

 「あの日までずっと村にいたのに、なんでそんなに仲良いの?」

 「なんでかぁ…お互いビビッときた運命の人だからかな?」

 「運命の人?」

 「うん。産まれる前から仲良かったんだぁ」

 「産まれる前から?え?」


 リンの言葉にティムは理解出来ないでいた。リンはリリスの方を見て…


 「ティムちゃんなら教えていい?」

 「リンが言いたいならいいよ」

 「遠い遠い世界で、私とお姉ちゃんは一緒に生活してたことがあってね…」

 「へぇ」

 「孤児院ってわかる?親がいない子供たちを預かってくれる所ね。そこで知り合って、2人とも顔見た時ビビッときてね…」

 「うん」

 「一緒に生活してたんだけど、ある日お別れする事になっちゃって…その後2人共亡くなっちゃったんだ」

 「え?亡くなった?」

 「うん。私は神様にお姉ちゃんは悪魔に助けられて、この世界で暮らしなさいってね」

 「…神様?悪魔?」

 「うん。昔、村で木登りして頭から落ちたの覚えてる?」

 「うん。覚えてるよ。びっくりしたんだから…」

 「あの時、リン亡くなってるんだ。今、この体に入ってるのは遠い遠い世界からきた夢って名前の女の子の魂なの」

 「え?え?私が知ってるリン亡くなってるの?」

 「うん。でもね…この体にはリンが生きていた時の記憶もあるから、ティムちゃんの事わかったんだよ」

 「…そっか、そっか」


 いきなり想像もつかない事をいっぱい聞いて頭がパニックになっているティム。

なんとか理解しようと頑張っているが…。


 「リン、これ以上は待って。ティムちゃん困ってる」

 「あっ!…うん」


 困ってるティムの側に寄り添いリリスが話かける。


 「前のリンが生きていた時の記憶が今のリンに残ってたから、今回ティムを助ける事が出来たんだよ」

 「…そうなんだ」

 「うん。ちゃんとティムの事覚えていたよ。私に早く助けに行こうって、ティムのおじいちゃんと話した時からずっとね」

 「…おじいちゃん」

 「今すぐは無理かもだけど3人仲良く暮らしていけたらいいな…」

 「私も~3人で暮らしたい♪」

 「…リンちゃん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る