第40話 便利な魔法
王都サレン行きの乗り合い馬車を見つけて乗り込む2人。
どうやら今回の同乗者は…ローブと杖を身につけた魔法使い風の女性冒険者と大剣を背中に担いだ男性冒険者の2名のようだ。
「出発する時間となりましたので、今回の同乗者は以上です。到着は1日後となります」
リリスとリンはゴトゴトと馬車に揺られながら会話を始めた。
「今、向かってるのが王都サレンだよね?」
「そうだね」
「やっと最後の馬車だね。明日には王都着くんだ」
「うんうん」
「そういえば…この国に名前ってあるのかな?」
「そういえば…今まで聞かなかったね」
「お金ギリギリになっちゃったな…」
「王都に着いたらまた買い取ってもらう?」
「それしかないよね…王都に当分いる事になるかもだし、お金の使い方考えないとね」
「うん」
「あと…最悪な事も予想しとかないと」
「最悪な事?」
「王都には到着出来るけど…入れるとはわからないし、もしかしたらそのまま捕まるかも知れないからね」
「そっか…それもありえるんだね」
「うん」
さらにゴトゴト揺られ時間が経過し、夕方になってきた。
「そろそろ、今日の寝る場所決めるのかな?」
「そうだね」
と話していると…
「今日はこの辺りで泊まろうと思う」
と御者が言い出す。
「やっぱり」
「ね~」
馬車は道沿いにあった大きな岩の下に止まり、リリスたちは夜ご飯を食べようと準備していく。
「馬車に乗ってる間はパンと果実でいいよね?」
「うん。火使うと後片付け大変だもんね」
パンと果実を用意して食べていると…
「ねぇ?お嬢ちゃんたち」
「なんですか?」
「私、ご飯忘れちゃって…まだあるなら売って欲しいんだけど」
「いいですよ。でも、お金じゃなくて何か別のものだと助かります」
「別のもの?」
「お姉さん魔法使いですよね?」
「お嬢ちゃんたち魔力持ってるの?」
「はい。何かいい魔法ないですか?」
「持ってる属性は?」
「私が火・風・闇・無で、この子が水・土・光・無ですね」
「ええ?4つも?」
「はい。無属性魔法が2人とも1つも覚えてないので、何か普段から使えるような魔法があるといいのですが?」
「そうですか?なら…❮魔力サーチ❯とかどう?」
「どんな魔法ですか?」
「魔力を持ってる人や魔物を探せる魔法だよ」
「おお~いいですね」
「しかも、これを覚えれば❮スキル:気配サーチ❯の練習にもなるから、一定レベルとはいえスキルも使えるようになるかもね」
「いいですね。2つ同時に出来るとか」
「スキルの気配サーチは魔力使わずに自分の周囲の人や魔物の気配を探るスキルね」
「時間かかると思うから、後でやってみようか?」
「うん。ありがとう」
「はい、先にご飯どうぞ」
「ありがとう」
ご飯と交換で魔法を教えてもらえる事になったリリスたち。すると…男性冒険者の方も近づいてきた。
「わりぃ…俺にもくれねぇか?」
「いいですよ。じゃあ2~3質問していいですか?」
「ああ、いいぞ」
「この国に名前あるんですか?」
「この国の名前はイスラント王国だ」
「王都で奴隷売買してる人っていっぱいいるんですか?」
「ん?まぁよくわからんが、貴族と関係ある商人ならいっぱいいそうだよな」
「ちなみにベイン男爵と関係ある人って知ってます?」
「いや、わからない」
「わかりました。ありがとう。ご飯どうぞ」
「おう。わりぃな」
「いえいえ、ちゃんとお代いただきましたので」
リリスたちと冒険者たちが夜ご飯を食べ終わり、いよいよ魔法の練習をすることになった。
「魔力循環は2人とも出来るよね?」
「うん」
「じゃあ2人手つないで1人は魔力受けとる側、1人は魔力送る側になってみて」
「私が流すね?」
「うん」
「どう?」
「暖かいのが体に入ってくるよ」
「その暖かいのを意識して覚えようとしてみて。どんな特長があるかな?」
「うん。特長…暖かいけど、たまにピリピリするかも?」
すると…リンの頭の中に❮魔力サーチ❯が浮かんできた。
「魔力サーチ覚えたよ」
「おめでとう」
「じゃ交代ね」
「この子の魔力の特長探してみて」
「はい」
「暖かくて爽やかな感じ?」
すると…リリスの頭の中に❮魔力サーチ❯が浮かんできた。
「覚えた~」
「おめでとう」
「誰かに魔力を送られて、特長を捉えて覚えようと意識するってのがきっかけみたいね」
「なるほど~」
「あとは…いっぱい使ってけばスキルの方も一定レベルになるよ」
「ありがとう」
「試しに今使うと、頭の中に自分と他に2つ光る人がいると思う」
「はい。自分を中心に魔力が広がって2人の位置がわかります」
「私もできた~」
「これで迷子なっても探しに行けるよ」
「ありがとう」
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