第35話 優しい人には裏がある
入ってきた門とは違う門で乗り合い馬車を見つける。
「この馬車どこまで行きますか?」
「王都から1つ目の町ベリアだ」
「おいくらですか?」
「1人、銀貨2枚だ」
「お願いします。はい、銀貨4枚」
「あいよ。乗ってくれ」
2人が馬車に乗ると、先に乗っていた1組の父娘と1人の商人がいた。
「出発するぞ。今回はこの人数だ。到着は2日後だ」
ゴトゴトと馬車は動き始めた。今回、一緒に行くことになった商人は背負子を床に置き商品の確認をしていた。もう一方の父娘を見ると、娘が初めての馬車なのかキャッキャッと嬉しそうにしていた。流れる風景を喜んで見る娘とゴトゴトと揺れる娘を支えながら娘と話している父親。
商人なら何か知ってるかも?と思い商人に話しかけてみることにしたリリス。
「商人さんなんですか?」
「ああ、そうだよ」
「何を売ってるんですか?」
「ちょっとしたアクセサリーだよ」
「へぇ~」(かんざしってあるわけ無いよね…)
「かんざしって…ありませんよね?」
「かんざし?どんなやつかな?」
「纏めた髪に差すワンポイントおしゃれなんだけど…」
「髪に差す飾りかぁ…わるいね。持ってないみたいだ」
アクセサリー屋さんと聞いてあったらいいな…でかんざしを聞いてみたが、やっぱり無かった。このままの流れで奴隷関係も聞いてみようと思ったリリス。
「いえいえ、大丈夫です。王都に行けば何かおしゃれな物ありますか?」
「あるとは思うが、おしゃれは貴族様がやりたがるから、高いと思うよ」
「やっぱりそうなんですね」
「貴族はお金で何でもしようとするからなぁ」
「もしかして、奴隷もいたりするんですか?」
「小さな町じゃ見ないが王都にはゴロゴロいるぞ」
「こわ~」
「ああ、気をつけな。嬢ちゃんたち可愛いから誘拐されないようにな」
「誘拐?」
「ああ、王都の端には貧しい人たちが住んでいて、たまにそこの子供たちが誘拐されて、後日奴隷になってたりな」
「ひどっ!」
「だろ?でも相手が貴族と貴族のお気に入り商人だから誰も手が出せなくてね…」
「そうなんだ。教えてくれてありがとう」
「ああ、構わないよ」
そこまで期待してなかったのに、とんでもない情報を手に入れてしまった。
「自分たちが奴隷にならないようにしっかり準備しないと…」
「うん…ティムちゃん探すの大変かも知れないね」
ゴトゴトゴトゴト馬車は動き続け、気がつけばもう夕方過ぎ…すぐにでも夜になりそうだった。
「もうすぐ夜だね」
「うん」
「そういえば…何も食べて無かったね」
「うん。昨日からいろいろあったしね」
2人が話していると御者が…
「夜道は危険だから、今日はここまでにする」と言い馬車を止めた。
「あら、いいタイミングね。リンご飯しよっか?」
「うん」
2人はポーチからパンと果実と細かく切られた野菜を取り出し夜ご飯の準備を始める。周りを見てみると御者と商人は手持ちにご飯があったが、父娘の方は小さな干し肉1つだけしか持ってなかった。
リリスとリンは目を合わせ、コクンと頷き父娘の元へ近寄っていく。
「良かったら、これどうぞ」
「ありがとう。いいのかい?」
「うん。私たちの分もあるから大丈夫だよ」
「馬車に乗るために少し無理しちゃってね…ありがとう」
「いえいえ。私たちも町の人に助けられてきたので、誰かにお返ししたかったんです」
「君たちはどこから来たんだい?」
「ナーレの奥の森です」
「そっか…ナーレか、なら知らないと思うから教えてあげよう」
父娘にパンと果実を2つずつ渡すと…
「ナーレのような遠い町はそうでもないかもだけど、これから行くベリアと王都サレンでは、いくら優そうな人でも気をつけなさい」
「え?」
「優しそうな人は、関わりたくないから無難に済ませるか、終わった後のお礼に期待してるかのどっちかだ」
「そんな…」
横にいた商人も話に加わってくる。
「そうだぞ。嬢ちゃん。今までは良かったかもだが…ここからは気をつけた方がいいぞ」
「そうなんだ…」
「ああ、特に貴族と貧しい人たちだな…。平民や商人はそこまで酷くない」
「貴族はわかるけど、貧しい人たちも?」
「ああ、彼らはその日の食料を得るのに仕方ないんだろうけどな…」
「そっかぁ…」
ルシファー様からもらった本に書いてあった事がだんだんとわかってきた気がしたリリス。(欲にまみれた人の多くは貴族かぁ…)
「教えてもらい、ありがとうございます」
「いや、お金で返せなくてわるいね。ご飯ありがとう」
「ありがとー」
リリスたちは娘にニッコリ笑い、自分たちも夜ご飯を食べていった。
夜ご飯を食べ終わり、リリスとリン、御者、商人、父娘はそれぞれ寝る場所を決め寝ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます