第34話 早く王都へ

 なんか馬車の中の空気が重い…あんな事された女の子を見てしまったのだから、仕方がないけど息苦しい感じが充満してる。


 リリスは御者に…

 「少し馬車止めて休憩ってできますか?」

 「いいけど、気分でも悪いのかい?」

 「少し違うけど、空気重いから気分転換できたらいいな?って」

 「あっ!そうか。悪かったね…少し休もうか」


 ハルファに向かう道沿いの木に馬車を止めてもらい休憩し始める3人。


 「リン、気分は大丈夫?」

 「うん。大丈夫」

 「教会出てから…あんな場面を連続で見てるから気になってたの」

 「ありがと。大丈夫だよ」

 「辛かったら言ってね?1人で悩まないで。いい?約束よ?」

 「うん。お姉ちゃんもね?」

 「うん。約束ね」


 2人を見ていた御者は…

 「仲良いですね?お2人は姉妹ですか?」

 「血は繋がってませんが…姉妹だと思ってますよ」

 「そうですか…実に仲が良い。私から見ても姉妹に見えますよ」


 御者の言葉を聞いたリリスとリンは…「だってさ?リンよかったね」と言いながらリンに膝まくらするリリス、抵抗する事なくリリスの太股に頭を乗せるリン。


 「町まで後どれくらいですか?」

 「もう半分以上進んでるから…お昼には到着すると思うよ」

 「わかりました」

 「しっかりしたお姉ちゃんだね~。どうりで、妹さんも安心しきってるはずだ」

 「うん。お姉ちゃんとなら何でもできそう…」

 「そうか、そうか。悪い人には気をつけるんだよ?」

 「はぁい」


 数分後…御者と話ながら気分転換できた2人は再び町に進み始める。


 「ありがとうございました。私も妹も気分転換できました」

 「いやいや、気づかんでわるかったね。もう行けそうかな?」

 「はい、大丈夫です」


 少し時間が経過し…時間がお昼頃になると、目の前に町が見えてきた。パッと見てルビードの町より大きく、ナーレの町より小さそうな感じがした。

 馬車はハルファに到着、ここで御者のおじさんとはお別れになる。


 「おじさん、ありがとうございました」

 「いやいや、何もしてないよ。気をつけてな」


 御者のおじさんと別れ、これから町に入れるかどうかのリリスたちにとっての難問が待っている。


 町の入り口の門兵にギルドカードを見せて…

 「町入ってもいいですか?はい、ギルドカード」

 「ん?リリス?ちょっと待て…お前魔族か?」

 「はい」

 「冒険者ギルドの依頼にリリスという名の女の魔族を探せ!と出ている」

 「ナーレの領主様ですね…私どうなりますか?」

 「まだ、捕まえろとは出ていないので、見つけた事とその居場所だけは報告させてもらう」

 「はい」

 「何したか知らんが、町に入っても安全な保障はない。早く移動しなさい」

 「わかりました。寄りたいお店だけ寄ったらすぐ移動します」

 「ああ、それがいい」

 「錬金術のお店ってありますか?」

 「それなら…真っ直ぐ行って3つ目の角を曲がるとあるぞ」

 「ありがとう」


 ハルファの町に入って行くリリスたちを後ろから見る門兵。(あんな素直で可愛い子が何したってんだ?)


 門兵に教えてもらった錬金術のお店に向かう2人は…

 「なんとか入れたけど、王都に近いからもうギルドに行けなくなっちゃたね…」

 「うん」

 「もったいないけど、この町でお薬になる草と葉っぱ半分売っちゃおうか」

 「そうだね。ここから先ギルドでお仕事できないからお金貰えなくなるもんね」

 「それにね…ちょっと思ったんだけど悪いのは領主だから、偉い人にバレないように私たちが王都に着く前に会いたがってる?のかも」

 「あ~そっか。きっとそうだね」

 「今はちょっとキツいかもだけど、頑張って王都に行けば手出し出来ないかも知れないね」

 「うんうん」


 錬金術のお店に向かいながら会話する2人。教えてもらった通りに行くと、そこは…扉の上に看板がかかってはいるが、どう見ても普通の民家。


 「お姉ちゃん、このお店でいいのかな?」

 「たぶん…ここかな」


 中に入ってみると…カランコロンと扉に付いているベルが鳴り、カウンター奥には高齢の女性が座っていた。


 「あら?小さなお客さんね。いらっしゃい」

 「あの…素材を売りたいんですけど」

 「ギルドじゃなくていいのかい?うちじゃ大金出せないよ?」

 「ちょっと訳ありでギルド行けないの。でもお金無くて…」

 「そうかい…こんな小さい子に…何を持ってきたんだい?見せておくれ」

 「これなんてすけど…」


 リリスは教会のお庭で取ってきた草と葉っぱを半分だけ店主の前に出した。


 「おや?あんたたちこんな凄い物持ってきたのかい?全部買い取ってあげたいけど良い物すぎて…これだけでもいいかい?」

 「うんうん。ありがとう」


 店主はこれだけでもと言い、半分出ていた素材をさらに半分にした。


 「じゃ買い取るね。お代は金貨1枚だよ」

 「はぁい」

 「ありがとう」


 2人は店主にお礼を言い、早く移動しようと入ってきた門とは違う門に向かって歩き、王都方面の乗り合い馬車を探すのでした。

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