第33話 奴隷商人の足跡
ゴトゴトと乗り合い馬車でハルファに向かっている途中…道の端に止まっている馬車を見つけた。
「なんだろ?馬車でも故障したのかな?」
「困ってるのかな?」
御者も…
「お客さんどうしましょ?声かけて行き先がハルファなら馬車は放置して、人だけでも乗せていけるんですが…」
「そうですね。とりあえず止まって声だけでもかけてみましょうか?」
「そうだね」
御者は止まっている馬車に近寄り自分の馬車を止め、リリスたちは馬車から降りて止まっている馬車に近寄りぐるっと馬車を1周見て回ると…車輪が壊れていた。
「ああ、これが原因かな?」
「中はどうだろ?」
荷台を覗くと樽が2つ荷台の隅に残っていた。他に何もないとわかり、リンが樽を開けてみようとするが…リリスに止められた。
「待って!リン」
「どうしたの?」
「血の臭いがする」
「え?まさか…この中?」
「私が開けてみるから、リンは下がってて」
「うん」
リンの代わりに樽を開けたリリス。
「うわっ…」
「どうしたの?大丈夫?」
「大丈夫。まだ来ちゃだめよ」
リリスが見たのは…体中がアザとキズだらけのガリガリの女の子の遺体が入っていた。
「かわいそう…何でこんなことに」
「うっ…」
「リン大丈夫?」
「うん」
「さて、もう1つの樽は…」
リリスはもう1つの樽も開けてみる。すると…こっちにも体中キズとアザだらけの首輪を着けた女の子の遺体が入っていた。
「こっちもかぁ…かわいそうに」
「そっちも入ってたの?」
「うん。こっちの子は首輪着いてるみたい」
「奴隷かな?」
「ねぇリン?一応この子たちの顔見てくれる?」
「え?」
「いや…私、ティムちゃんの顔知らないから確認できないのよ」
「あっ…そっか」
樽の中の子を触るリリス「ごめんね。お顔見せてね」と顎をクイッと上げる。リンは顔を横に振る。もう1つの樽に入ってる子も触るリリス「ごめんね。お顔見せてね」と顎をクイッと上げる。リンはまた顔を横に振る。
「ティムちゃんじゃなくてよかった…」
「そうだね。でもこのままはかわいそうだから手伝ってくれる?」
「うん」
2人で樽を抱え馬車から降ろしていく。
「連れてはいけないから埋めてあげようか?」
「うん❮ピットホール❯」
リリスが首輪が着いてる子を見ると、首輪に印がついていた。
「リン、待って。この子の首輪に印ついてる」
「ほんとだ」
「御者さん知ってるかな?」
リリスは乗ってきた馬車に戻り…
「たぶん家紋?だと思うんだけどわかりますか?」
御者は馬車から降りてきて、樽の中を見る。
「あちゃ~かわいそうに…」
「この子の首輪の印なんだけど…」
「どれどれ…ちょっと失礼するよ。この印はベイン家の家紋だ。この首輪は奴隷だろうな…」
「ベイン家?」
「ああ、確か領地はかなり北の小さな土地で、黒い噂が絶えない男爵だよ」
「何でそんな人の奴隷がこんな場所に…」
「男爵と関係のあるどこぞの商人の仕業かもしれんな」
だいたいわかったので、リリスとリンで亡くなった2人の女の子を埋めてあげる。
「連れていけないから…こんなとこでごめんね」
御者とリリスたちは馬車に戻り、ハルファに向かっていく。
「ベイン男爵か…ティムちゃん連れてないといいけど」
「うん…あの感じだとご飯食べれてなさそう…」
「うん。早く助けないとね」
「うん」
ゴトゴトと馬車は進み、やがて夜になる。
「馬休ませるから今日はここまでかな」
「はぁい」
「一応魔物避け使うけど、気をつけてくれよ」
「はぁい」
リリスたちはポーチから夜ご飯にパンと果実を取り出して食べる。
「お料理もその内、覚えたいね~」
「うん。さすがにずっとこれはねぇ」
その後、魔力ぐるぐるして体がポカポカしてきたところで、荷台の中で2人一緒に寝ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます