第32話 次の町へ
「おはよ」
「おはよ~」
2人は目覚めると顔を洗い、パジャマをしまいいつもの服に着替え、ポーチを付けてベルトに短剣を差していく。やってる事はいつもと変わらないが2人の顔は明らかに違っていた。
「リン、おいで~」
「なになに~?」
「後ろ向いて」
「うん」
リリスはリンを呼び、後ろを向かせリンの髪を整えていく。
リリスより少し髪が長いリン、寝癖が暴れていたがリリスの手によって直される。櫛を入れ、後方にリボンで束ねて結ばれた。
「髪の毛長いから寝癖できちゃうね。今日はこんなのどう?」
「ありがとう。髪バラバラにならないからいいね。これ」
「でしょ?リボン買って良かった」
「次はお姉ちゃんの番ね。はい、後ろ向いて~」
「私はもう決まってるけどね」
「わかってるよ。ポニーテールでしょ?髪型じゃなくて…してあげたいんだよ」
「ありがとう。綺麗な蝶々リボン作ってね~」
「うん。がんばる」
「これから朝の時間作っていかないとだね。2人とも女の子だし綺麗にしとかないと…」
「うん」
朝からまったりとした時間。これからはできるだけこんな時間を増やしていこうと決める。
「ティムちゃんだっけ?私も仲良くできそうな子?」
「夢がこの体に入る前の記憶しかないけど、リンは元気いっぱいな子でティムは優しくておっとりしてるけど、言う時はちゃんと言う感じ?」
「そうなんだ…ん?なんか、リリスになった今の私ぽい?」
「うんうん。私も思ったぁ」
「奴隷なんてイジメ以上にヤバいね…精神壊して性格変わっちゃう前に助けないと」
「うん。はい、綺麗にできたよ~」
「ありがと」
残りのお金を考え、今日もパンと果実と葉物野菜をちぎりサラダにして朝ご飯を食べていく。
「宿出たら、この町ルビードに奴隷が買えるとこがあるかと、乗り合い馬車の王都方面と探そうね?」
「はぁい」
朝ご飯を食べ終わり、宿を出る2人だが…
「でも私たちって、冒険者ギルドのお尋ね者なんだよね…」
「あっ!そうだった…ナーレの領主め~」
「とりあえず、乗り合い馬車から行ってみようか?」
「うん」
気分よく宿を出た2人だが…今2人はお尋ね者になっている事を思い出し、ギルド周辺は危ないと思い乗り合い馬車から探す事に決めた。
「この馬車どこまで行きますか?」
「隣町[ハルファ]まで行くよ」
「おいくらですか?」
「銀貨1枚だよ」
「はい。銀貨2枚」
「もう少しお客さん集めるから待っててな」
「はぁい」
隣町行きの乗り合い馬車を見つけ、お金を払い待ってる間に情報収集することにした。
「門兵さん辺りがいいかな?」
「そうだね。馬車から離れられないしね」
門兵のところまで近づき…
「門兵さん?この町って奴隷商人かお店ってあったりしますか?」
「どうだろ?この町にはなかったと思うが…裏で何かするやつがいるなら隠れてるだろうしなぁ」
「ありがとう」
「まぁそうだよね…堂々と奴隷売買とかしないよね」
「そうだね…」
「そろそろ馬車出るだろうから次の町行ってみようか?」
「うん」
リリスたちは馬車に乗り込み、次の町ハルファに向かい始める。
「隣町ハルファまでは約1日かかります」
「はぁい」
今回どうやらリリスたち以外のお客さんはいなかったみたい。
「向かってるハルファの町から王都までってまだ距離ありますか?」
「そうだな~あと1つくらい町越えれば、王都行きの乗り合い馬車出てくると思うよ」
「あと…奴隷が売っていたり、奴隷商人がいたりする町って知ってますか?」
「ん?あんたらちっこいのに奴隷買おうとしてるのか?」
「いえいえ、盗賊に襲われた村から強制的に連れていかれた子が幼馴染みなので、助けたいんですよ」
「そうか…まぁ王都にでも行けばいるんだろうが…わからんなぁ」
「そうですか…ありがとう」
奴隷商人のような仕事はやっぱり表だって堂々とはしてなさそう…王都に行けばたぶんいるらしい。何もヒントが無い中、少しずつ情報を集めるのでした。
「村に来た商人は王都から来たらしいけど、寄り道せずにそのまま王都帰ったのかな?」
「かなぁ?」
他に今の問題としてお金がない…ハルファ着いたら何とかしないと…。
「リン?ハルファ着いたらお金そろそろヤバいから…ギルド行ってみる?」
「大丈夫なの?」
「う~ん…たぶん?」
「仕事じゃなくて、草とか葉っぱ売る?」
「それだ!ギルドじゃなくて錬金術とかしてるお店あれば…売れそうだね」
「そうだね」
今回は2人と御者だけの旅なので、他人に気を使うこともなくゴトゴトと馬車はゆっくり隣町ハルファに向かい進んでいく。
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