第31話 時が経つのも忘れて

 リンは前世の記憶はあるものの天界の記憶はないんだと、リリスは理解した。


 「リンは、夢がその体に入る前の事とか覚えてるの?」

 「うん。だいたいだけどね」

 「元のリンはティムちゃんと遊んでて、ある日木登りしてて頭から落ちちゃったみたいで…3日間寝てたみたい。その時、夢が入り込んだ感じかな?」

 「そっか…元のリンは頭打った時、すでに亡くなってたのかも知れないね…」

 「…うん」

 「お姉ちゃんは?」

 「私の体はルシファー様が作ってくれたぽいかな?この体の記憶全くないし」

 「そっかぁ」


 リンには夢の魂が入る前のリンの記憶も持っているのがわかった。


 「でも、お姉ちゃんあっちでどうやって亡くなったの?」

 「リン覚えてるかわからないけど、あの施設にイジメっ子いたでしょ?」

 「うん。たぶんあの人かな…」

 「小学生になっても毎日ずっとイジメ続けられて…その子が施設外から来てる子たちにも、私を毎日イジメるようにしてたみたいで…ある日、頭おかしくなっちゃってね。たぶんどこかで車にはねられたかな」

 「えええ!ひどっ!もうあんな世界、いなくて正解だよ。もうこれからはずっと2人一緒だからね。お姉ちゃん」

 「うんうん。やっと会えたね夢ちゃん」

 「初めて会った時、ビビッとなんかきたんだよね」

 「え?私もだよ。初めて施設で会った時、ビビッときてびっくりして動けなかったよ」

 「ふふふ…やっぱ運命だ」

 「だね~」


 2人はこれまでの事をお互い話し合い、これからはずっと一緒だよっと約束するのだった。

 話をしている内に時間がたち、今は夕方になっていたが2人は再会を喜び施設の頃の話に夢中になっている。


 「先生覚えてる?」

 「うん」

 「リンとお別れした後、先生もお別れしちゃったんだ」

 「ええ!じゃお姉ちゃん半年間ずっと1人だったの?」

 「うん。代わりの先生来たんだけど合わなくてね…」

 「よくがんばったね~さすが私のお姉ちゃんだ。この短剣の形とか、リボンって…」

 「うん。覚えてる?先生と3人でテレビ見てた時に写ってた人の真似だよ」

 「あぁ~そうだったね。くのいちさんだっけ?お姉ちゃんやたら拘るからなんでだろ?って思ってたんだよ。なっとく!」

 「うん。前世の国に昔いたとされる女忍者なんだって」

 「へぇ~よく知ってるね」

 「先生が知ってる事、全部教えてくれて…ほんとに好きだから全部覚えてるよ」

 「装備1つ増えるたびに大喜びだもんね」


 お互いの記憶の確認をするように、施設にいた頃の話を続ける2人。


 「あっ!そうだ。リン後ろ向いて?」

 「え?なに?」

 「髪触るよ?櫛で髪といてっと…髪を束ねて、少しこの髪持っててくれる?」

 「うん」

 「ポーチから…リンは金髪だから緑がいいかな?」

 「かな~」

 「ここで蝶々結びっと。…どう?痛くない?」

 「うんうん」

 「これ、ポニーテールっていう髪型なんだって。くのいちさんもしてた髪型だよ」

 「おぉ、だからリボン欲しかったのね」

 「うんうん」

 「じゃあお姉ちゃんもしてあげるね」

 「ありがと~」

 「櫛で髪といて…髪を高い位置で束ねるっと…」

 「そうそう」

 「持っててね~。その赤いリボン貸して?」

 「はい」

 「ズレないように蝶々結び…っと。できたよぉ」

 「わぁ!ありがと~。鏡ないのが残念だけど…」

 「大丈夫!すごい似合ってるよ?」

 「ほんと?やった~嬉しいな♪リンもすごい可愛いよ」

 「やった♪嬉しいよ。おそろだね」

 「うんうん。おそろだね~」


 ポニーテールでお揃いになり喜びあう2人。もう、ついでだ…と気になっていた事を聞くリリス。


 「リンはティムちゃん助けたいのね?」

 「うん」

 「私はもちろん、一緒にいるリンも魔族扱いされるけど王都行くのね?」

 「うん」

 「わかった。どうにかしてティムちゃん助けようね」


 リンはともかくティムちゃんはこの世界の人…仲良くなれるかなぁ?と少し不安になるリリス。側にいるリンをギュッと抱きしめる。(ずっと探してたんだよ…こんな近くにいたなんて)

 リンも同じ気持ちなのか、そっとリリスを抱きしめかえしてくる。


 時間がたち、外はすでに夜になっていた。


 「明日から王都目指すんだから、ご飯食べて、魔力ぐるぐるして早く寝ようね」

 「うん!お姉ちゃん大好き!」

 「私もリン大好きだよ」


 2人はパンと果実と今日は野菜をちぎりサラダを作り、リリスにトマトを搾り、夜ご飯を食べた。パジャマに着替え、魔力ぐるぐるをこなし体がポカポカ暖かくなってきたら…ベッドに入る。


 2人はいつも以上に仲良く、一緒のベッドに入って眠るのでした…。

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