第29話 お尋ね者・リリス
ナーレの入り口付近にあった乗り合い馬車に銀貨2枚を支払い、隣町[ルビード]へ向かうことにした2人。
もう少しお客さんを乗せて行きたい。と御者が言っていたので待機して待っていると…冒険者風の服装をした男性4人組が乗ってきた。
「では、行きますよ。隣町ルビードは1日後に到着予定です」
馬車が動き始める。道中、4人組とは話さず2人で話をしていたが…向こうから話し掛けられてしまった。
「なぁ?そこのちびっ子」
「…なんですか?」
「今、ナーレで噂の領主事件知ってっか?」
「領主事件?」
「なんだ…知らね~のか」
「どんな話なんですか?」
「なにやら…領主の娘が魔族に決闘を挑みボコボコにされたから、領主が仕返しを考えてるとか…」
「そうなんですね~どんな魔族だったんでしょうか?」
「それが、名前だけしか教えてもらえね~んだよ」
「へぇ~領主が最近ギルドによく顔を出すのは知ってましたが、そんな事が…」
「ああ、なにやら【リリス】って名前の魔族を探し出せ!とギルドに依頼したって話だ」
「なるほど~」
「ってことだ。わりぃが名前教えてくれや?俺の勘だと領主の娘はこんなやつにって感じの魔族に負けて恥ずかしくて、魔族の姿を言えないのではと考えてる」
「なるほど。いいですよ。私はマーヤ、この子はスズです」
「そうかい、わるかったな」(こいつらかと思ったが違ったか…)
(おバカさんなのかな?自分から対象の名前だせば、そりゃ偽名言われるよ)
「馬車にいる間、合わせてくれる?今からマーヤとスズよ?」
「……わ、わかった」
「…?」(なんだろ?さっき返事までに間があったけど)
4人組との会話が終わり、馬車はどんどん進んで行きやがて夜になった。
「馬を休ませたいので今日はここで野宿になります。あの…冒険者と見受けられます…一応魔物避けを使っておきますが、魔物が出た時はお願いします」
「おう。まかせとけ」
リリスたちはポーチから果実とパンを取り出し、夜ご飯を食べていると…
「お?旨そうじゃないか?俺たちにもくれや」
また話し掛けられ…仕方なくパンと果実を4つずつあげる事になった。
リリスがポーチから取り出そうとしているのを見ている4人組…
(おい?あれってマジックバックか?名前違うから放置しようと思ったがあれを奪うぞ。売れば金貨10枚以上は確実だ)
4人組がコソコソと話してるのがわかったリリス。
(こいつら…ポーチ狙ってる。どうしてやろうかな)
悪い人間ならご飯あげるのも嫌だなぁと思ったが、あげる事に決まってしまっていたのでパン4つだけにしておいた。
ご飯を食べ終わり、それぞれ寝やすい場所を探し寝ることになった。
(たぶん、寝ている間にポーチ狙ってくるはず…リンも持ってること知られないようにしないと…)
リリスはもちろんリンと一緒に寝る。
「たぶん、夜中に起こすからすぐ動けるようにしててね」
「え?魔物?」
「いや、こいつら私たちのポーチ狙ってる」
「あっ!うん、わかった」
「リンは持ってない感じにしたいから、こいつらの前で触らないでね」
2人は軽く打ち合わせをし、ポーチを奪いにくるであろう夜中に向けて交替で仮眠するのだった。
数時間が過ぎ…リリスが仮眠する番、リンが起きてる番の時、4人組が寝ていた方向からザッザッと足音がする。リンが頑張って起きていたが、そこはやはり小さな女の子ウトウトと夢の中へ向かっていた。
ザッザッザッザッ足音はだんだん近づいてくる!…起きない2人。
4人組の1人がリリスたちに近づきポーチに手をかけようとした時…❮血の操作:網❯を唱えるリリス。1人は網にかかり動きまわるが、動けば動くほど網に絡まり最後には動けなくなった。
「リン!起きて!後3人気をつけて」
前世の頃の事もあり、真っ暗な場所に慣れているリリス。目を凝らし耳を澄まして他3人の居場所を探す。3人は寝ていた場所にはおらず、馬車の裏から狙ってるのがわかったのでわざと気づかないフリをして、3人を誘いだすことにした。
そろりそろりと近づく3人…リリスは急に3人の方を向き❮血の操作:網❯で絡めとる。もちろん、動きまわるのでだんだん絡まり最後には動けなくなった。
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