第24話 新たな力

 「おはよ」

 「おはよ~」


 いつもと変わらない挨拶。この町での挨拶は最後かも…。いつもの服へ着替え、ポーチにパジャマをしまい顔を洗い、食堂に向かう。

 食堂につくと大人の人たちが数人、食事をしていた。


 「おや?おはよう。朝ご飯食べるかい?」

 「うん。今日でこの町出ちゃうから美味しいのお願い」

 「あら、まぁそうかい…待ってな?美味しいの作ってあげる」

 「うん。で、よかったよね?リン」

 「うんうん」コクコク


 宿のおかみさんにも今日でお別れだと言えたし、最後ゆっくりと宿のご飯を食べたかったリリス。パン、小さな肉が入ったサラダ、スープ、ベーコンエッグが出された。


 「少しおまけしといたよ。ちゃんとお食べ」

 「ありがとう。いただきます」


 リリスたちが食事をしていると…

 「おい、聞いたか?領主の娘のアルベルティーヌ様が屋敷の庭で見たことない檻の中に捕らわれていたらしいぞ」

 「どこのどなたか知らんがよくやってくれた。それ聞いただけで胸がスッとしたわ」

 「あのわがまま姫、これで懲りてくれればいいが…」


 「これって…もっと懲らしめた方がいいの?」

 「さっきの会話だとあの人だいぶ町の人から嫌われてるね」

 「まぁでも、もうお別れの挨拶回っちゃったしね。決心鈍らない内に予定通り町出ようか」

 「うん。いろんな町いこ~」


 領主の娘は町の人からもわがまま姫として嫌われているのがわかった。

 朝ご飯を食べ終わり、お世話になったおかみさんに食事代の銅貨4枚とお別れの挨拶をする。


 「あとはカーラさんたちだけど…あの家には行かない方がいいかな。ローラさんの精神病んじゃったし、あの母親のことだからまたお金って言いそうなのよね…」

 「リンはもう寄るとこない?」

 「うん。ずっとお姉ちゃんといたから挨拶終わってるよ」

 「だよね~」

 「じゃ出発しようか」


 町の入り口へ歩いていくと門兵のアダンを発見する。


 「アダンさんお世話になりました」

 「ありがと」

 「いや、何もしてないよ。頑張って生きろよ」


 入り口から少し歩き、後ろを振り向いてアダンに手を振る。

 欲にまみれた人が多いと本には書いてたけど、町の人は優しい人のが多かったかもしれない。

 てくてく歩き、帰ってきました教会内の私のお部屋。中に入りキッチンがある部屋で椅子に座りのんびりする。


 「リン?この教会はもうこの国に目をつけられたみたいで…」

 「ギルマスが言ってたね」

 「うん。早くて明日か明後日には出発した方がいいと思うんだけどね…」

 「うん」

 「もう見れることないと思うから…隠し部屋見てみる?あっ…嫌ならいいの。頭痛くなるかもだし…」

 「う~ん、お姉ちゃんは私に見てほしいの?」

 「かなぁ…もう隠してるの嫌だから知っといてほしくて…」

 「いいよ。見よ」

 「ごめんね」

 「ううん、大丈夫だよ」


 この教会がもう安心できる場所で無いこと、もう隠し部屋も見れなくなること、もう隠し事したくないことをリンに伝える。

 2人で本棚に向かい仕掛け本を触るとガコッ!と本棚がズレ始める。


 「びっくりする前に教えとくね?白骨化したミイラがあるよ」

 「…わかった」


 2人で隠し部屋に入っていくと、荒らされた様子もなくあの時のままのミイラがそこにあった。


 「…うっ」

 「リン大丈夫?」

 「うん」コクコク


 ミイラを見たリンが一瞬、気持ち悪そうにしていたがすぐに正気に戻った。


 リリスは…

 「私のために用意された血液か…何か意味あるのかな?」これが本当に天使の血なら…

 リンは…

 「あの突き当たりの壁に落ちている羽、すごい気になる」これ、天使様の羽?

 2人…

 「何か起こりそうな気がする!」


 リリスはまだ固まってない血を見つけ、指に少しつけ…ぺろっとなめた。

 リンは突き当たりの壁に近寄って、落ちていた羽を指で…触ってみた。

 すると…2人の頭の中に❮血の精密操作❯、❮光魔法:ライトボール、ヒール❯が浮かんできた。


 「おぉ~新しい魔法きた~」


 さっそくリンは❮ライトボール❯で隠し部屋を照らしてみる。

 リリスは❮血の操作:槍❯を❮血の精密操作❯で槍先だけを作ってみる。


 「おおー!くないできたぁ~。リンのアイデア形にできたよ」

 「おめでとう」


 まさかこんな近場で力を得られると思わなかった2人は喜んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る