第23話 いっぱいお買い物しよう

 この町ナーレで最初で最後のお買い物がやっとできた2人。

武器、防具、服は高すぎて手が出なかったけど…ずっと欲しかったリボンが銅貨1枚で買えたことに大喜びするリリス。


 「あぁ~リボンあるなら、櫛かブラシ欲しいなぁ」

 「ん?何に使うの?」

 「このリボンで髪を纏めたくてね。櫛かブラシで綺麗に髪を整えてから纏めたいの」

 「いいね。お姉ちゃんとお揃いで可愛いくなりたい」

 「ね~。もうちょっとお店見ようか」


 ほんとは最後の銀貨1枚、食料に使う方がいいんだけど…もう少し果実とパンで我慢してもらおう。

 ウェストポーチの中身を確認するリリス、(果実とパンはまだまだ大丈夫だしパジャマとして使ってる服も大丈夫だね。後は…残ってる草や葉っぱは町出る前にギルドで全部買い取ってもらおかな…。買い物して町出たら、1度教会に戻って草花や葉っぱの全回収と…問題のあの部屋をリンに見せるかどうかだなぁ。)


 「リン?今から冒険者ギルド行くよ?」

 「なんで?お店いこ~」

 「早く行きたいけど、いい物あっても買えるお金ないのよ」

 「あっ!…そっか」

 「ほら?お庭の葉っぱまだあるから、これ全部売っちゃお?」

 「うん。また取りに帰ればいいもんね」

 「うんうん。わかってるね~」

 「えへへ」

 「お金いっぱいできたら食料も買わないとね」

 「うん。トマトも買わないとね~」


 2人は冒険者ギルドへ向かい受付カウンターに近寄るとカウンター奥からギルマスが出てきた。


 「だいたい聞いてるぞ。町を出るんだろ?」

 「うん」

 「そっか…で、どうした?」

 「町を出る前にお買い物したくて…この草と葉っぱの買取りお願い」

 「ああ、そうだな。食料いっぱい買ってけよ。どれ?貸してみろ俺が見てやる」

 「ありがとう」


 「なぁ?これって…あの庭に生えてたやつか?」ボソボソ

 「うん」

 「町出たら1度戻るんだろ?あの教会はもうこの国に目をつけられたから…庭の草花や葉っぱはすべて回収して、もう帰ってこなくていいぐらい準備してから教会出るんだぞ?この草や葉っぱは中級…いや上級ポーションにもなる素材だ」ボソボソ

 「うん。ラウルさんありがとう」

 「こんな事しか出来なくてわるいな…ほれ?買取り金の金貨1枚だ」

 「ううん。ラウルさんありがとうございました」


 ギルマスがリリスから渡された草や葉っぱを見てみると…なんと上級ポーションが作れるほどの薬草だとわかった。このままだと庭の植物ごとこの国に取られてしまいそうだったので周りに聞こえないようにアドバイスをするギルマス。

 ギルマスにお別れを言い、2人はお店を探しに行くがおしゃれするための小物店がわからず、リボンを買ったお店に聞きにいくことにした。


 「お店わからないから、リボン買ったお店に聞いてみようか?」

 「うん」

 「おや?さっきの子たち。どうしたの?」

 「櫛かブラシ売ってるお店知りませんか?髪結ぶ前に綺麗に整えたいの」

 「あ~そうだね。あの店ならあるかな?でも少し高いかもよ?」

 「そうなの?」

 「おしゃれは貴族がするのが主流だからね。うちのお店が高いのも貴族様用なのよ」

 「そうなんだぁ」

 「どんな物でもいいのかい?」

 「うん。使えれば…今はいいかな?」

 「ちょっと待ってな…」


 店主は2つに割れた櫛を手に…

 「これ、売れる前に落として割れちゃって…こんなのでもいいのかい?」

 「2つともいいの?」

 「いいよ。割れて2つになったしあっても捨てるだけよ」

 「これ、ちょうだい。これで足りる?銀貨1枚。」

 「いいのかい?うちは助かるけど?捨てる物だったから良かったのに…」

 「うん。いいの~ありがとう」

 「こちらこそだよ。ありがとね」


 この世界でおしゃれするのはだいたいが貴族以上だとわかった。今のリリスたちの手持ちではと、諦めかけた時2つに割れた櫛を激安で売ってくれた。


 「はい、リン。これもお揃いね」

 「うん」

 「さぁ、ご飯いっぱい買って1度教会に帰ろうね~」

 「はぁい」


 この後、お肉、野菜、屋台で串焼きとジュースを頼む2人。

 気づけばもう夕方、明日帰る方が安全だと思いいつもの宿へ行き最後に1泊することにした…。

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