第16話 これが欲しかったの!

 「ちびっ子2人は昨日登録したばかりだから、これからのために訓練しような」


 この建物の横に訓練場があるからそっちに行って待機しててくれと言われ、移動し始める。


 横の建物に入ると大きな広間になっていた。

 「なんか学校の体育館みたい…」


 まだ、誰もいなかったので壁際に置いてあるベンチに座り休んでいると…ぞろぞろと訓練生と今日の指導者がやってきた。ガッチリした体格の大人の男女とリリスたちより少し年上くらいの男の子たち。今回、女の子はリリスたち2人だけとのことで、ガッチリした体格の女性は私たちに付きっきりで教えてくれることになった。


 男組と女組に分かれ…

 「私はAランク冒険者のメルタよろしくね」

 「私はリリス、この子はリンです。よろしくお願いします」

 「リンです。お願いします」


 訓練開始。今日は武器の訓練だった。

 「この建物にある全ての武器は訓練生用に❮木❯で作ってあるよ。片手剣、大剣、短剣、槍、斧、弓といろいろあるから、まずは自分に合う武器を触って探そう」

 「はぁい」


 リリスはまず片手剣を手に取るが、剣の方がリリスの身長より長く体がフラフラする。


 「片手剣がいいのかい?それだと体フラフラで振れないだろ?短剣持ってみな?」


 短剣を持つと…長さも重さも丁度よく、なんちゃって片手剣な感じになった。


 「お?丁度良かったみたいだね。片手剣は大人になってからにしようね」


 「ん?これって…ね~ね~こんな感じの短剣ってあるの?」と、指で木の短剣の刃の部分をなぞり思っているイメージを伝える。


 「ないが…片刃がいいのか?」

 「うん」


 リリスは木刀のイメージをメルタに伝えると…「ほれ?貸してみな?」と、木の短剣をリリスのイメージ通り削ってくれた。


 「こんなもんか?はいどうぞ」

 「わ~い。ありがとう」


 これが欲しかったの!先生と一緒にテレビで見た…くのいちさん装備!今は木製でも嬉しい。

 リンも片手剣を手にしていたがどれもしっくりこないみたい…


 「メルタさんの剣は少し形が違うけど、なぜ?」

 「これはレイピアといって、切ることもできなくはないけど突くことが得意な剣だよ。見た目より重いよ」

 「レイピア…持ってみたい…」


 リンがレイピアを持ってみたいと言いだすと、急遽メルタは木の片手剣をさらに削りだし訓練生用のレイピアが完成した。が…リリスが嬉しそうに持っている片刃の短剣も気になるリン。


 「リン、お揃いにする?」

 「少し触らせてくれる?」

 「いいよ。はい」

 「…うん、重さも長さも気にならないし…いいかも」


 迷っているリンにリリスの木製、片刃短剣を触らせてあげると…。


 「あなたもそれがいいのね?」

 「うん。レイピアごめんなさい」

 「大丈夫だよ。訓練用のレイピア無かったから、訓練場に置いとけばちゃんと出番あるよ」


 リンも置いてある短剣をリリスと同じ形の片刃短剣に削ってもらい…


 「お揃いだね~」

 「ね~」


 どうやら、気に入ったようだ。

 2人の武器が決まったので…片手剣としての持ち方、振り方、短剣としての持ち方、振り方を素振りをしながら教えてもらっていく。

 素材は木だが…施設にいた頃、先生と一緒に見ていたテレビに出てきたあの武器にリリスは喜びを隠しきれなかった。 


 「あらあら、そんなに気に入ったの?」

 「うんうん」コクコク

 「そんな形は見たことないから、本物買う時は武器屋に作ってもらうしかないけどね」

 「そっかぁ。でも嬉しい」

 「じゃあ、それは君たちにプレゼントするよ。そんな形の短剣使える人限られるし…素材も木だし大丈夫よ」

 「ありがとう」


 片刃短剣をとても嬉しそうにしているリリスにメルタは短剣をプレゼントした。


 「続けるよ?じゃあ私に打ち込んでみようか?どっちからでもいいわ」

 「いきます。それ~」

 「そうそう…カンカンカン。いい動きだね。次は短剣として持ち方変えてきな」

 「は~い。…カンカン」


 訓練再開、実際に使ってみた。嬉しさを我慢し真面目に訓練を受けるリリス。


 「よし。じゃ交代!次はリン」

 「はい」

 「…カンカンカン。いいね~リンもいい動きだ。持ち方変えようか?」

 「はい。…カンカンカン」


 リンもメルタに打ち込み始める。リンも真面目に訓練を受け終わり、気付けば外は夕方になっていた。


 「あの…」

 「なんだい?」

 「小さいナイフの投げ方も教えて欲しいです」

 「あたいは投げナイフ使わないから、今日は練習だけしようか?また今度、投げナイフ使ってる人紹介してやるよ」

 

 リリスは小さなナイフを弓矢用の的に向け、投げる練習も始めた。訓練時間ギリギリまでメルタに付き合ってもらい…今日はここまで!と終了する。

 ギルドの受付に戻り、今日の宿代が無いのでどうしたら?と、受付のお姉さんヒルデさんに相談するリリスたち。2人でギルドの荷物を指定の家まで運んでくれるなら、宿への紹介状と1泊分はギルドが払う…と仕事を依頼してくれた。


 「冒険者ギルドからの荷物です」コンコン

 「小さなお嬢さんありがとう」

 「サインお願いします」


 ギルドに戻りサインしてもらった紙をヒルデさんに渡すと、宿への紹介状と1泊分のお金を受け取る。紹介状を持ち紹介された宿に向かうと、夜ご飯いるか聞かれたが大丈夫と断り、今日の部屋へ案内される。


 「今日は魔力使ってないから、寝る前に少し魔力ぐるぐるしとこうか?」

 「うん」


 今日は武器を使った訓練だったので、寝る前に魔力も練習しようと魔力を体の中でぐるぐるさせ、体がポカポカしてくると2人はウトウトし始める。

 ポーチからルシファー様からもらった木箱に入っていた服を2枚取り出し、これからのパジャマにする。リンにも1枚服をあげ…そのままベッドに入る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る