第9話 倒れていた女の子

 隠し部屋に入り、ベッドで横たわる白骨化したミイラを見てしまったリリス。

この部屋も明かりがなく…血が壁一面に飛び散っている中に壁掛け燭台があるのがわかった。あそこにロウソクでも立てて明かりにしていたのだろうか…?


 リリスは急いで体を起こし自分が寝ていたベッドがある部屋に戻る。

スライドした本棚を押してみるが動かない…もしやと思いもう1度仕掛け本を触ってみると本棚は再度元の位置にスライドし、隠し部屋の入口を隠してしまった。


 「はぁはぁ…見なかったことにしよ…赤い液体でいいなら果物でも大丈夫よね」


 もう1度、自分が寝ていた周りを確認。小さな明かり取り窓、ベッド、小さなテーブル、テーブルの上にはランプ、部屋の隅にルシファー様からもらった木箱、隠し部屋行き仕掛け本棚、本棚の反対側に扉があった。


 「ここはこれだけだね。あの扉から外出れるのよね~」ワクワク


 扉を開けると、上にあがる階段があり今いる部屋が地下室だとやっとわかった。

階段を上っていく…上りきった先にはここも小さな部屋、壁には窓があり太陽の光りが部屋中を照らしていた。


 「うわぁ~かわいいお部屋」


 そこには、小さな家具だけを集められたような…小さなキッチン、小さな竈、横に水瓶、小さな椅子2つ、小さなテーブル、地下階段横には、食器棚まで置いてあり、壁には扉と窓が1つずつあった。この部屋の扉を開けてみる…


 「わぁボロボロ~ここ教会?よく私の部屋残ってたね…」


 リリスが扉を開けるとそこには…かつて使われていたであろう教会。

 崩れかけの大きな銅像と数個の壊れたベンチが置いてある大きな礼拝堂、屋根もボロボロ、いつ屋根が崩れ落ちてもおかしくなかった。


 「この広間、少し掃除すれば何かできそうね…屋根ないけど。。」


 大きな両開き扉を開けるリリス…そこに見えたのは雲1つない青い空、教会の前だけ草木1つない整えられた砂利道、奥には小さな池が見えた。

 空を見上げ、池まで駆け寄っていくリリス。


 「これが魔族になった私かぁ…」


 池の水面には、赤いワンピースに編み上げブーツを身に付け、肩まで伸びたさらさら銀髪に赤い目にぷにぷにほっぺ、紅葉のような小さな手、色白の肌をした幼女が写っていた。


 「魔族って聞いてたから心配してたけど…これなら人間と変わらないよね。よかったぁ」


 教会の周囲だけが綺麗に整えられたようで、池の奥、教会の裏からは森が広がってた。

 

 教会まで戻り両開き扉横から庭へ入る。

 「お庭はどうだろ~?…ん?何か植えてあるのかな?」


 それが薬草だと、まだ知らないリリス。さらに周囲を見渡すと……


 「え?誰か木にもたれて倒れてる?」


 近くに寄ってみると、金髪の長い髪、白いエプロンドレス、中には薄黄色の布の服にスカートを身に付けショートブーツを履いた小さな女の子が倒れていた。


 「なんで?なんで?こんな所に女の子倒れてるの?」


 女の子の側まで行き…

 「ねぇ?ねぇ?大丈夫?」ユサユサ


 女の子の体を揺さぶりながら呼び掛けるリリス。

疲れきっているのかぐったりしている女の子。自分のベッドへ運ぼうと女の子の体を抱えようとするリリス…


 「なんとか大丈夫そうだね…魔族になって力も強くなったのかな?」


 リリスは女の子を抱えると自分が寝ていたベッドに連れていき、静かに寝かせるのだった…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る