第7話 真夜、異世界へ

 そこは何も見えない真っ暗な空間。

その中に人の形を保った真夜の魂が寝かされていた。


 「覚めたか?」


 まるで洞窟の中にある崩れた神殿、足元はゴツゴツした岩肌、所々に崩れた石柱、知らない人の声も響いている。

 身体を起こし声がしてきた方を見てみる。


 「誰?」

 「我は堕天使ルシファー、まぁサタンと呼ぶやつらもおるがどちらでもよい」

 「え…神様…ですか?」

 「我は悪魔だ!あんなのと一緒にするな!」


 ルシファーの左右に小さな光が現れ、周囲を照らしだした。

真夜から見えたルシファーは、黒い羽に白い衣を纏い鋭い目付きで真夜を睨むような人物だった…


 ルシファーにさらに質問しようと話しかけようとした時…


 「次は我が質問する番だ」


 真夜は咄嗟に口に手を当てコクコクと頷く。

ルシファーが口を開くと真夜の予想外な質問してきた。


 「夢なる者を知っているか?」

 「……え」


 固まる真夜。まさかここで夢の名前を聞くことになるとは思わなかった…


 「その様子からして…やはりあの魂を知ってる者であったか」

 「……」コクコク

 「今より半年前…神がなにやら大事そうに1つの魂を抱え、❮夢よ、もう大丈夫じゃ❯など言いながら天界へ向かう姿を見かけたのでな」

 「……」


 夢ちゃんも亡くなっていた事を知ると、真夜の表情がどんどん落ち込んでいく。


 「御主の魂も神のヤツが拾い上げ天界に連れて行こうとしたから、邪魔して奪ってやったわ!」

 「……私どうなるの?」

 「御主の魂は闇に染まりつつある。我から見ればとても面白い事になっておる。

我、みずから御主に力をやろう❮魔族❯として異世界を生きてみせろ!」

 「…ま、魔族?」


 私も亡くなっていた事、神様が私を保護してくれようとした事、ルシファーが邪魔して無理矢理私の魂を奪い今ここにいる事…すべてがとんでもないことだか…。


 「魔族ですか……」

 「そうだ。1つ良いことを教えてやろう。その夢とやらもまた人族となり異世界へと向かったらしいぞ」

 「え?…また会える?」

 「人族は長く生きても100年も生きられんが、魔族は誰かに襲われん限り万年は生きていける」

 「……?」ポカーン


 異世界だけど夢ちゃんとまた会える。そう喜んでルシファーからの話を聞いていたが…何故か寿命の話になり、話についていけなくなった。


 「御主が魔族になることで夢なる者とずっと一緒に生きていける方法があるといえばわかるか?」

 「え、ずっと?一緒に?」

 「そうだ。もし御主が断るなら…わかるな?その者は人族の短い寿命で過ごし、御主は今ここで我に消滅される」

 「ひぃ……なります。魔族なります」

 「では、御主の名を聞こうか」


 夢ちゃんとずっと一緒に生きていける方法があるとわかったが…もう断れなくなってしまった真夜。


 「…真夜」

 「ほぉ…真なる夜か、良い名ではないか。御主に❮リリス❯の名を与える」


 名前を名乗り、ルシファーから新しく❮リリス❯の名前を受け取ると…真夜の魂が突然光だした。

 ルシファーが真夜に手をかざすと、真夜の魂は光となって消えた。


 「くくく…頑張って眷属を増やせよ。あぁすぐに死なれても叶わんな…異世界の仕組みでも書いてある本でもくれてやるか」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 真夜より一足先に異世界に来ていた夢は…

小さな田舎村で❮リン❯という名前になり、父親、母親との3人家族で過ごしていた。

 「はい。お母さん持ってきたよ」

 「ありがとう。リンが手伝ってくれるから助かるわ」

 「そろそろ、お父さん帰ってくる時間かな?」

 「そうね。夜ご飯作らないとね。お手伝いしてくれる?」

 「うん」


 毎日、両親のお手伝いを見つけては一生懸命頑張ってました。

 そんなある日…リンのいる田舎村に盗賊の集団が襲いかかってきた!


 「お父さんたちが盗賊引き付ける。その間にお前たち女子供は村から逃げるんだ!」

 「そんな…お父さん、お父さん行かないで…」

 「…あなた。…急がないと。行くわよリン」


 危険を知らせにきたお父さん。お母さんに腕を引寄せられ急いで村から逃げるリン。

 村の裏から森の中へ急いで逃げる…その時、村の方から父親と思われる男性の声が聞こえた…


 「ここは通さん!」

 「これだけの人数相手に何言ってんだ?もういい、おめぇらやっちまえ!」


 「ぐわぁ!」

 「大人しく通せば死なずにすんだものを…おい。逃げたやつらを追え!」


 お父さんは亡くなった…追っ手がすぐ来ると思ったお母さんは、リンの後方に位置取り逃亡を再開する。


 「やはり、来たわね」


 お母さんはリンに気付かれないように盗賊の足止めを試みる。


 「…リン。逃げて」


 リンはお母さんが付いてきてないことに気付き、少し戻ろうと思ったその時…


 「女1人で俺たちを止めれるはずないだろうがぁ」


 リンは…盗賊に剣を振り下ろされるお母さんを見てしまった。

リンはワンワン泣きながらも…再び逃げ始めた。

 自分が何処へ向かってるかもわからず、逃げて逃げて逃げまくったリン…


 「…お父さん…お母さん…もっともっと逃げなきゃ…」グスン


 少しの間、森の中を逃げ続けていたリン。

そろそろ、森を抜ける頃…ぽつんと1件のボロボロの教会を見つけ、ホッと安心したのか教会横の木を背に意識を失くした。

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