第4話 急なお別れ
2人がいるこの施設には、一月に一回お客さんが来る日がある。
「夢ちゃん今日も可愛いなぁ♪」
「ほんとね。この子なら将来も任せられそうだわ♪」
この優しそうな夫婦だけではなく、夢ちゃんは養子募集しにこの施設に来る様々な夫婦に大人気でした。
「この子でいいよな?」
「ええ、この子なら何も問題ないわ♪」
ついに、夢ちゃんを引き取りたいと言う夫婦が現れた。
「先生、是非とも夢ちゃんをうちの子供にさせて頂きたい」
「あの~1つ質問宜しいでしょうか?」
「ええ、お伺いします」
「もう1人、引き取られる予定はありますか?」
私は夢ちゃんと常にずっといるので、この場にも勿論来ています。
まさか、先生は私も一緒にと考えているのでしょうか?
「ちなみに、どちらの方でしょうか?」
「こちらの真夜さんもご一緒出来ないでしょうか?」
優しそうな夫婦は、私のことをジロジロと品定めしているようです。
(ふむ。身体中のあざ、傷だらけ、一生物の傷を抱えて私たちの老後の世話できるのか?)
夫婦から言われるまでもなく、こちらからお断りさせてもらう。
「私は大丈夫です。夢ちゃんを宜しくお願いします。」
夢ちゃんが一緒にいることでイジメも無くなっていたし、それ以前に私の最初で最後のお友達。本当は離れるのは嫌だけど夢ちゃんの将来を考えれば……。
今は我慢して送り出す方がいいよね…。今すぐにでも泣きたい涙をグッと堪えて。
「わかった」
おじさんはそう言うと、夢ちゃんをすぐに連れて帰ろうと準備を始めた。
おばさんに許可をとり、夢ちゃんとお別れの挨拶を交わす。
「…お姉ちゃんも行こう?」
「私はいいよ。たぶん行ってもここと同じだと思うから…夢ちゃんも苦しんじゃう……ごめんね…」
「…お姉ちゃん…また会えるよね?」
「うん。すぐには難しいかもだけど、会えるよ。私はいいから行っておいで?」
夢ちゃんとギュッと抱擁すると、連れて帰る準備ができたのかおじさんが戻ってきた。その日、夢ちゃんはこの施設を去って行った……。
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数日後、嫌なことはまだまだ続いているみたいで…
先生宛に緊急のお手紙が届きました。
「ごめんなさいね。私の親が危篤状態らしいから1度故郷へ帰ろうかと…」
「え!先生までいなくなるの?」
「落ち着いたら帰って来ますよ。その間は代わりの先生を手配してあるわ」
代わりの先生が施設に到着し、先生が故郷に帰ってしまいました。
ここ数日で真夜の心の支えを同時に失ってしまった真夜…。
唯一の友達と恩師のような先生がいなくなった今、幼い真夜の心が耐えられるはずもなく…夢ちゃんによって癒されていた心はリバウンドし始める…。
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一方その頃、
夢ちゃんは、優しそうな夫婦と共に自動車に乗り新しく自宅となる家に向かっていた。
新しい自宅となる家まで、あと少しのところで……
【交通事故を起こし、夫婦と夢ちゃんは……亡くなっていた!】
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