第1話

今日もお客さんはあまり来なかった。まぁ、あまり来ないほうが平和なのだろうが。

さて、僕は先程「本屋で働いている」といったがあれは副業に過ぎなくただのバイトである。本業は「精神科医」である。個人で診察所を立てたがあまり収益もなく、止む終えなくのバイトである。

ただ、今日来たお客さんの数は昨日の約一点五倍ぐらいだっただろう。そのうち、八割は宗教関連であり家族が無理やり連れてきたものだった。それぞれが異常なほど信仰していた宗教には大きな共通点があった。

「人類および、地球は二万四千年頃に終焉を迎える。」

彼らはそう呟いていた。それが本当ならば約八十年後には終焉を迎えることとなるだろう。馬鹿馬鹿しい。私はバインダーを閉じて白衣を脱いだ。

商店街に入ると本屋さんはかなり前側にあった。あの本は今日もまた売り切れていた。きっと多くの人が買っているのだろう。あまり多くの本を読む時間もなく、いつの間にか欲求も無くなっていた。分厚い本なら尚更だ。

もしかしたらあの本には人を惹かせる何かがあるのかもしれない。

僕はそういうことを考える、よりも先に行動してしまったようだ。僕はいつの間にか脳科学の本を胸に抱えていた。仕方ない、と家に帰って読むことにした

「さて。」

椅子に腰を掛けて分厚い本を開く。全く習っていない教科だ、難しくて頭が痛くて当然である。目次の数は十を超えていて読み終わるにはかなりの時間がかかりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る