二十話 お互いの体温
するとそれを見て彼は優しく微笑み、僕の隣に座椅子を置いて腰掛けていた。そして、僕の肩にそっと寄りかかってきた。
「完全にさっきの人にバレてたよな。俺たちの関係」
「う、うん。だと思う」
だって完全に、お布団が隣り合わせに並んで敷かれているし。兄貴の奴なんて言って、予約したのだろうか。
僕たちはそんな感じで、最初は恥ずかしさが方が勝っていた。しかし、段々とそんなことも忘れておしゃべりに夢中になっていた。
「思っていたよりも、いい部屋だな」
「うん、僕。生まれて初めて、兄貴に感謝したよ」
「俺もだ。昔からっ、泣かせれてきたからな」
僕の意見に完全に同調してくれていて、それから僕たちは完全に兄貴と先生の悪口へとシフトチェンジしていた。
「まあ、でも女装の件は先生が犯人だったわけだし」
「ったくあの、馬鹿教師。狂ってるよ」
「あはは、確かに」
それからも僕たちは、悪口や愚痴に花を咲かせていた。でもそれは半分、好きの裏返しだったのかもしれないなと思った。
そんな感じで、談笑しているとお部屋のドアがノックされた。そして次々と運ばれてくる美味しそうな料理の数々に僕たちは舌鼓を打つ。
「美味っ」
「京懐石っていうんだよ」
「そうなのか、陸はやっぱ。物知りだな!」
「まあね!」
例の如くスマホで調べたのだけど、彼が喜んでくれてるのなら良かったと安堵した。僕たちはいつものように、楽しく夕食を食べていた。
旅館の人が食器を、取りに来て帰って行った後。僕はふと、窓の外を見ると紅葉が綺麗にライトアップされていた。
「としくん、紅葉が綺麗だよ」
「おう、思ったよりも綺麗だな」
「――――なんで脱いでいるの」
「風呂入るだろ」
としくんが突然脱ぎ始めてしまったから、僕は直視できずにそっぽを向いてしまう。僕は急激に急激に恥ずかしさが込み上げてきてしまった。
昔はよくお風呂にも入ったし、この前だって一緒に入ったのに慣れない。僕がそう思っていると、彼に後ろから抱きつかれてしまった。
「風呂、入んねーの?」
「入りたいけど、恥ずかしくなって」
「つっ……そういうことを言うなよな。可愛すぎ」
僕が本心を言うと彼は、そう言って僕の首筋に顔を埋めてきた。僕は突然のことで変な声が出てしまった。
恥ずかしくて、手で口を押さえてしまった。それでも彼は構わずに、僕の首筋にキスを落としていく。
そして僕の服の裾を上げて、胸を辺りを触り始めた。最初はくすぐったくて笑ってしまった。
「あはは、くすぐったいよ」
「そう?」
しかしそのまま触られていると、いつからか変な感覚になってきた。僕はだんだんと自分の息が変な声に変わっていくのを感じた。
そして立っているのも辛くなってきて、倒れそうになって後ろから支えられた。後ろから耳元で、嬉しそうに囁かれた。
「陸、風呂行こ」
「う、うん……」
彼は静かに僕を脱がせ始める。自分でも脱げるのに、完全に流れを身に任せた。それにしても前から思ってたけど、なんでこんなに同じ男なのにスペックが違うのだろうか。
彼は全く筋肉がついてない僕と違って、すごく筋肉がついていてかっこいい。僕は自分と体と比べて思わずため息をついてしまう。
「はあ……」
「り〜く、寒いだろ」
「うん、寒い」
僕は上目遣いで、そう言って彼の体に密着させた。すると彼は顔を真っ赤にして、僕の手を引いて浴場の方に向かった。
そして毎度の如く彼はとても嬉しそうに、僕の体をくまなく洗ってくれた。その間、僕はさっきのことを思い出して恥ずかしくなった。
ふと鏡を見てみると、彼も顔を真っ赤にしていた。彼も僕と同じで、恥ずかしいのかなと思って嬉しくなった。
それから彼の体も洗って一緒に湯船に浸かったが、その背中に何やら固いものが当たって変な感じがした。
「離れるなよ。寒いだろ」
「う、うん……でも、その」
「どうした? のぼせたか?」
「えっと、その……当たってて……」
僕は相当に恥ずかしかったが、本当のことを言うと彼は更に抱きしめてきた。僕がどうしようと思っていると、彼はまた耳元で囁く。
「俺だって、恥ずかしいんだからな」
「だったら止めてよ」
「嫌……か?」
彼はより一層体を密着させてきて、可愛く言ってきたため僕は抗えなかった。僕は思わず、静かに首を横に振ってしまった。
しばらく温まってから、僕の髪を先に乾かして彼は自分で乾かしていた。僕は急激に恥ずかしくなって、布団にくるまってあたふたしていた。
鈍感な僕でもこれからすることは、なんとなくだけど認識できた。そのことを考えると、僕はどうすれば良いのか分からなかった。
そのせいか僕はずっと落ち着かずに、色々と考えてしまった。男同士のやり方ってどうするのかな?
やっぱ男とは無理だわ。とか、思われたりしないかな? とか、色々と考えすぎて頭がおかしくなりそうだった。
「り〜く、布団にくるまるの好きなのか」
「べ、熱にそんなんじゃないけど」
僕がそう言うと、被っている布団を優しく剥がした。そしてとても優しい瞳で僕を見て、優しくキスをしてきた。
僕は流れに身を任せて、彼の首に腕を回した。それから何度も角度を変えて、キスをする。どうすれば良いのか分からずに、彼に完全に身を任せた。
「陸、可愛い」
「つっ……」
僕を見つめる瞳が、いつにも増して綺麗で思わず一瞬息を止めてしまった。すると彼は僕を優しく布団に寝かしてくれた。
下から見ると、彼のかっこよさが引き立って見えた。それから彼は、僕の身体中にキスを落としていく。
僕はそれからの記憶が、曖昧になっているぐらいに必死だった。でも、幸せな時間だったことは間違い無いと思う。
目が覚めると朝になっていて、起きようとしたが腰の痛さが尋常じゃなかった。僕は体を洗いたかったがもう一度横になった。
「まあ、いっか」
「ん……陸、起きたのか」
僕が彼の方を見ると眠たそうに目を擦っていた。その様子が可愛くて、なんだが嬉しくなってしまった。
それから二人でお風呂に入って、まったりしていると朝ご飯の時間になった。
昨日の晩御飯も美味しかったけど、旅館の料理ってなんでこんなに美味しんだろう。
「美味しいか」
「う、うん」
なんかこの会話、一体何回言うのだろうか。まあでもこれからも何回も言っていくのかな? そう思って彼の顔を見て嬉しくなった。
早いもので僕たちは、新幹線で帰って家までも道を歩いていた。その道中、彼は僕に提案をしてきた。
「明日にでも、陸の両親に挨拶したい」
「明日か……」
「ああ、俺はこれかも陸と一緒にいたい」
「うん、僕も」
僕は背伸びをして静かにキスをして、両親に改めて自分たちのことを話すことを決意した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます