エピローグ 『加速』の『家族』は『過速』する


 魔王討伐より五年後ーーーーーーーーーーーーーーー


 双剣を佩き、長い金色の髪を後ろで一つにまとめた黒いコートを着た少女。魔王討伐を成功させたを彷彿とさせる少女は、手に花束を持ち、ゆっくりと歩いていた。

 少女が向かったのは墓場。かつて教会で権威を持った者達。そんな者達の墓が並ぶ中、一際目立つ真新しい墓。それが少女の目的の場所であった。

 少女は花束を地面にそっと置き、墓石に水をかけ、持ってきていた布で墓を丁寧に拭いていく。しっかり、じっくりと。

 しばらくの間そうして墓を手入れしたあと、少女は地面に置いていた花束を墓に置き直す。真新しい勇者の名前が彫られた墓の前で、少女はへと思いを馳せる。

 優しかったこと。楽しかったこと。遊んだこと。叱られたこと。悲しかったこと。

 沢山の思い出が少女の中を駆け巡る。


「ねえ様、、、ねえ様ぁ、、、」


 いつの間にか、すんっすんっと少女のすすり泣く声が墓場に響いていた。五年前、少女は十三歳だった。けれど、その頃から少女の姉への思いは変わっていない。ずっと、ずっと。姉を思い続けていた。


 少女の名前はエノラ・ノール・リレート。正真正銘の勇者の妹である。勇者としてエルカが訓練を行っていた一年、それと旅をしていた一年の計二年を除いて、十一年間。長くに渡り姉を思い続けた、モンスターシスコンである。

 六年前、かつてのエノラはエルカよりもひ弱で頼りない少女だった。転機が訪れたのは五年前。姉のエルカの死であった。エノラにとっての絶対であり心の支えであったエルカの死は、これまでのエノラの価値観を破壊するには十分であった。

 三年後、気がつけばエノラは英雄となっていた。姉の幻影を追い求め、姉へと近付こうと必死にもがき、あがき続けた結果である。エルカという存在。それがエノラを突き動かしたのだ。エノラにとって、勇者等というのはどうでも良かった。いやむしろ嫌いだったかもしれない。姉を殺した要因の一つだから。

 しかし、世間は違った。エルカという勇者と、エノラという英雄を同一視したのだ。具体的に言うなればエノラを死んだエルカの後継者と見た。

 エノラはこれが苦痛だった。『何故私を見る?ねえ様を見ろよ』そんな思いでいっぱいだった。

 自分を見て姉を見ない愚民共の他に、エノラが嫌いなモノがあった。ヘーネだ。姉をただ一人で魔王討伐へ行かせ、死に追いやった張本人。そんなヘーネが、エノラは大ッッッッッッッッッ嫌いだった。







 だから、だから殺すことにした。

 あらゆる作戦をたて、あらゆる殺害方法を模索し、あらゆるつてを伝った。結果、自力で殺すのが一番だと思い至った。


「待っててね、ねえ様。今罰を受けさせるから」


 エノラは立ち上がり、墓場をあとにした。ヘーネクソ女を殺す為に。








 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「こんな場所に、わざわざ呼び出してすみませんね」


 今、エノラとヘーネがいる場所は、テルプト平原。広く、回りには人気もない。国どころか、町すら近くにはない。エノラにとって、ヘーネを殺すのに最適な場所である。


「謝るのでしたら、もう少し態度を良くしたらどうですの?謝意が伝わりませんわよ?」

「はぁ?謝る気などないからでしょうが。この"ピーー"が。礼儀ですよ、礼儀。その程度もわからないのですか?低能な下等生物さん?そもそも、ねえ様一人では負けるという事実を一兆歩程譲ったとしても、貴女がついていけばねえ様は死ななかったという事実にかわりはないですよね?その程度も、、、あぁ理解出来ないんですよね。下等なウジ虫以下の畜生なんですから」

「毒舌キャラは私の特権だったのですが、、、とらないで頂けますの?で、とりあえずなんですが、あなたなどではなく昔みたいにヘーネお姉ちゃんと呼んで下さればーーー」

「おぅ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"」


 吐いた。盛大に。余程"ヘーネお姉ちゃん"という言葉が聞くに耐えなかったのだろう。


「あぁぁぁぁ!!!気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!!!!!何故私はあなたのような"ピーー"を姉などとしたっていたのですか!?何故?何故!?ねえ様を見殺しにするような"ピーー"を!!!!!!あぁ気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いぃぃぃ!!!!!!」


 一息にそこまで喋ると、エノラはうってかわって静かになった。ただ、小声でぼそぼそと呪詛を呟くその姿は、ただただ恐怖でしかなかった。


「消さなきゃ。汚物は。あんな汚ならしい存在は生かしちゃダメだよ。あぁ気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。ダメだ、、、ねえ様ぁ震えが止まらないよぉ」


 顔色を青白くさせ、エノラは震える手を双剣にかけた。


「消さなきゃ。消さなきゃ、、、」

「ちょ、ちょっと待ってくれませんこと!?確かに、結果的に私はエルカに一人で魔王との決戦に向かわせてしまいましたわ。しかし、私はーーー」


 ヘーネの声は、そこで遮られる。もとより、エノラにヘーネの声などは届いていなかった。


「『加速アクセル』」

「ッッ!!!!?」


 ゴキィ!!!と、ヘーネの両腕の骨が折れる音が響いた。ヘーネの顔面へと、エノラが拳を打ち込み、それをヘーネが両腕で防ごうとしたからだ。

 吹き飛ばされたヘーネは、そのまま地面へと転がる。


「何で、、、?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で死んでくれないの?ねえ様の仇。ねえ様のかたき。ねえ?早く死んでよ」


 今度こそエノラが双剣を引き抜く。確実にヘーネを殺す為に。


「死んで?」

「継承」


 振り下ろされたエノラの剣は突如として現れたハルバードによって防がれた。

 そして、エノラを見上げるヘーネの瞳からは光が失われている。


「当代の依り代に、多大なる身体ダメージを確認。これより、わたくし継承統合意識が第一操作権を保有致します」

「?、、、あぁ、そうなんだ。がねえ様を死なせた黒幕なんだね。気持ち悪い。死んで?」


 エノラが再び剣を振り下ろすも、ヘーネの持つハルバードによって、全ての斬撃が弾かれる。


「対象、エノラに停戦を要求します。当スペックと比較して、貴殿の勝率はゼロに等しーーーーー」

「『お姉様。嗚呼お姉様!お姉様。お姉様好き。お姉様LOVE』」


 突如として唱え出したエノラの愛のコールにより遮られる。


「『ギアチェンジ』」

「っ!?」


 エノラの速度が桁違いのものとなり、ヘーネの体へと傷がつきだす。


「『2セカンド』。ねえ?何で生きてるの?早く死んでよ」

「『縮地』」


 ヘーネの体がかき消え、ざっと20メートル程後方に現れる。


「速い。加速アップテンポでいうところの100ハンドレット程でしょうか。恐ろしい。ですが、速いならば手数で勝ればよーーー」

「ゴタゴタくっちゃべってないで早く死んでよぉ!!!!!」


 ガキンッ!ガッガッカッガッガ!!

 先ほどまでとは違い、エノラの攻撃は完全に受け止められた。宙に浮く無数の剣によって。


「人の話は聞くべきですよ?かつてのように。

 剣帝アルゴレア・ラルガラスト。四番目の勇者、シノバルド閣下。彼のお方の時代の英雄。つまりは《千帝の時代》の一人です。そのお方のスキル空中帝閻俺TUEEEE剣。読みは不可解ですが実に有用なスキルです。そして、、、」


 ゴウゥ!!!!!

 音を立て、エノラにこれまた無数の炎の柱が襲う。


「同じく《千帝の時代》の英雄。炎帝オスタント・ホーグのスキル覇呈魔炎ムカ着火インフェルノ。並びに五番目の勇者、様の時代の英雄、《暗雲の時代》が一人、ヒューズ・レガソン様のスキル絨漣魔陣じゅうれんまじんのコラボレーションです。さぁ、耐えきって見せて下さい」


 そこからはヘーネによる無双が始まる。宙に浮く剣撃に気を取られれば赤い炎に焼かれ、幾条もの炎から成る魔法の連撃を避ければ剣撃に身を裂かれる。蒔かれた炎により燃え広がる草原は、まさしく蹂躙の様を呈していた。


「ふむ。理解不能。何故そうにもなって降参なさらないのですか。人間の持つ等というものはほとほと理解に困るものです。手っ取り早くけりを着けましょうか。継承・『アガルタ』『ミリオネア』『好悦戒』『空挺闊捕』」


 ヘーネの体が空へと浮き上がり、頭上に太陽とみまごうかの如き炎球が現れる。直径にして100メートルはあるかと思われるその炎球は、一つではなく、空を埋め尽くす程大量に浮かび上がっていた。

 なお、余談ではあるが、この日は後の歴史に"太陽が増えた日"として残されている。


「貴殿の戦闘能力から測定するに、生存率は1%を遥かに下回ります。ご存命を願っております」


 ヘーネの手が振り下ろされると同時に、炎球が、逃げ道を炎と剣撃にふさがれたエノラへと襲い掛かかる。


「これでーーー」


「『お姉様!嗚呼お姉様!!お姉様。お姉様好き。お姉様ラブ❤️』」


「はい?何か聞こえた?これを食らって、生きてるというのでしーーー」

「『ギアチェンジ』」


 ヘーネの背後に、聞こえないはずの、聞こえてはいけないはずの声が聞こえる。


「『3サード』」

「まいっかい、毎回!私の発言をとぎらないでいただけませんでしょうか!!」


 全くの無傷。全くの無表情。しかしその目には殺意を宿らせたエノラの攻撃。先程よりも速く、鋭く、強かなそれをヘーネはまたも両腕を犠牲に逃れる。


「『超回復』。はぁ、、、はあ、、、。どうなってるのでしょうか。貴殿は。はぁ、、、はぁ、、、理解を行うことが極めて困難です」

「理解が、困難?それはお前だよ、"ピー"。何をどう考えたらまだ死なないって発想に至れるの?不思議だよ。何で申し訳ないと思わないの?ねえ様を殺しておいて、どうしてそう呑気に生きていられるの?ねぇ何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?ねぇ、何で!?答えろよ!!!!この"ピー"が!!!ほら言えよ!!なあ!!!!」

「ですから、理由があっての上での事故であるとーーー」

「どうせ"ピー"で"ピー"みたいなくったらない理由なくせしていちいち言い訳してんねぇ!!!!!」


 再びエノラの猛攻が始まる。剣撃も、炎球も、その他の魔法も。ありとあらゆる攻撃を意にも介さず攻め続けるエノラに、ヘーネは防戦一方となる。


「くっ『縮地』ぃっ!?」


 ヘーネが縮地により逃れるも、コンマ数瞬でエノラが追い付き、猛攻が続く。終わらない。止めさせない。そんなエノラの意識の伝わるような攻撃であった。


「継承・因果」


 猛攻が続く中、ヘーネの小さな声を皮切りにして、プシャァッと音を立て、エノラの体から血飛沫が飛び散った。ヘーネの体に付いた傷と同じ数だけ、ヘーネの傷よりもより深く。


「負荷が多く、余り使いたくなかったのですが、、、」

「いんが?、、、因果?六番目の勇者の?ねえ様に好かれるとかいう身分知らずで頭の高い脳の腐った下等な奴隷階級の汚らわしいアレの?ねぇ、あなたみたいなゴミがゴミで着飾っても、所詮ゴミはゴミにしか馴れないんですよ?ああ、ここまで来るとですね、さすがに哀れになってきます。だから、死んだ方がいいですよ?」

「かつて勇者の使っていた天啓をその身に受けた感想がそれですか、、、。ですが、どうするのですか?貴殿のその『加速』とやらで現状が打開できる可能性はないと存じ上げます」

「?、、、何言ってるのですか?」


 こてん、と。無表情のまま、エノラが首をかしげる。


「ねえ様をバカにした?私と、ねえ様の愛の結晶である『加速この術式』を?」

「術、式?、、、まさか今までのは全て魔ーーー」

「『ねえ様へ。叶わぬコトと、知りつつも。溢れでる恋、包み隠せず』」

「これもまさか詠唱とでもいうのですか?こんなバカみたいな文で!?」

「『過速アクセル』」


 その一撃は、余りにも『速』過ぎた。あらゆるモノを置き去りにし、あらゆるモノを超過し、あらゆるモノを断ち切った。

 そう、例えそれがであろうと。


「カハッ?」


 最初、ヘーネは自身が両断されたという事実に気付けなかった。ヘーネは理解できなかった。崩れ落ち行く視界の中、何故か平然とヘーネを見下ろすエノラが無傷であることを。何もかもが、ヘーネでは理解しきれないものだった。


「何、、、故」

「何故?そんなの簡単ですよ。速ければ基本、どんなものも切れるんですよ?知ってますか?紙をこう、シュッてやると、指が切れるんです。それと、同じことですよ。さ、理解もできて、安心しましたよね?死んで下さい!」


 笑顔のエノラを前にして、ヘーネは、ゆっくりと回らなくなる頭でエノラの言葉を飲み込んだ。飲み込んで、しまった。

 そして、最悪の判断を下す。最もエノラを怒らせるであろうことを、行ってしまう。





 ヘーネは、自身に対し、『超回復』を行うと共に、ある『天啓』を発動させた。させてしまった。速すぎるエノラに対し、それこそが最善手だと判断し、、、そうーーーーー


「、、、加速アップテンポ1000サウザン





































「あ"?」


 瞬間、エノラが壊れた。元から壊れていた気もするが、それでも、それ以上に壊れた。


「あはっ、あはっ。ははっ、あはははは、ハヒャ、ハヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ。そっか、、、そっかぁ!!!!!!ねえ様は、そんな、そんなゴミみたいな理由で殺されたんだぁ。ははっどんなクソな理由かと思えば、ただのコレクション!!!!!!ははっ、ははっ、はははは、、、、あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 、、、、、、、はあ、死んで頂けます?そんなゴミみたいな生き様晒すくらいなら、死んだ方がマシですよねぇ!!!!!さぁ!速く!!!!!速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」







「『お姉様、嗚呼お姉様、お姉様。お姉様好き。お姉様ラブ』」


 一瞬の静寂の後に紡がれる、これまでとは違う格段に静かな詠唱。しかし、込められた魔力もまた格段に多い詠唱が、草原へと響き渡った。


「『ギアチェンジ』」


 エノラの光すらも映さない漆黒の瞳がただ一つ、ヘーネの存在だけを映した。


「『10《テン》』」


 周囲一帯の壊滅と共に、ヘーネの肉体は塵となって消えた。意識も何もかもを残さずに。


「ん?ん~、、、ん。これ、ね。あ~最悪な気分です。私も早くお姉様の元へと行きたいのに、、、まあいいでしょう。あの"ピー"を殺してからです」


 エノラは、ズボンのポケットから一枚の紙を取り出した。


「ヘルズ・ネプテトル。あの男に従うのは癪ですが、今回も言われた通りに逃げられましたしね。信じず損するよりは信じた方がいいでしょう」


 はあ、と。疲れをたっぷりと含んだため息を吐いたあと、エノラは一言唱えた。


「『時間加速アクセル』」


 そして、テルプト草原には誰も居なくなった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「か、完成しちゃったよ。おい」


 カサンドラ・マルクシナは目の前ポットを見て驚愕している。正確にはポットの中、目を瞑っている少女を見て。

 額に菱形が連なるがある、どことなくアルカナに似た少女を見て。






━━━

『後継』の英雄 エノラ・ノール・リレート

 筋力 A 耐久 B 俊敏 EX 器用 SS 精神 SSS+ 魔力 EX


加速アクセル

魔術式。つまりエルカの加速アップテンポとは違い理論上誰でも再現可能。

ギアチェンジによって加速度を変えられる。速度は10のn乗。加速アクセルギア10は加速アップテンポに直すと加速アップテンポ10000000000。


某南軍総指揮官「師匠、この人、魔王様より強くないですか?」

ポポリアス「ふむ。姉狂いの場合キャロルが覚醒する。キャロルに頼んでエルバスを動かす。どうだろうか」

某南軍総指揮官「師匠って基本エルバスありきの作戦しか建てないですよね」

ポポリアス「だって強いじゃないか」


完結です。読んで下さった方ありがとうございます。次書くとしたら10番目の予定です。ではでは

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七番目の勇者 芝ッフル @173763

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