終章 魔王様

第二十五話 魔王様


「ポポリアス死亡からはや半年。その間勇者は順調に魔族領我らが領土に侵攻しつつ回復速度上昇アップテンポの修練に努めていると。いやはや、我らが参謀様の計略には恐れ入るね」


魔族領でも一際開けた荒れ地の巨大な岩で、長い角の生えた女性が嗤う。


「きっと、勇者ちゃんがエルカちゃんでなければオレが世界を取れたってのも、本当なんだろうなぁ」

「魔王様!探しましたよ!このような場所で何を!?」


魔王、と呼ばれた彼女の元に一人の魔族が駆け寄る。


「何って。勇者ちゃんとの最終決戦場の視察さ。大切だろう?」

「それはそうですけれども!いいですか魔王様!」

「ああああ聞きたくない聞きたくない。どうせ説教だろう?オレは褒められて伸びる娘だって言っているじゃないか」

「魔王様はそんな駄々こねるような歳じゃ無いですよね!」

「あっ!言ったな!?女性に歳のことを言うのは禁句だぞ!?」


魔王とその残り数少ない配下は追い詰められているはずであるというのにも関わらず、和気あいあいと騒いでいた。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


早朝、軍を率いて魔族領を順調に侵攻していたエルカたちは、唐突な伝令によって叩き起こされた。


「はっはっはっはっ、、、で、伝令です!勇者様、後続部隊が、、、魔王により全滅しました」

「え?」


驚きの余り、エルカは素頓狂な声をあげる。今回の作戦に参加しているのは魔王討伐の為に集められた各国の精鋭部隊だ。であるというのに、後続部隊である六万の兵がたった一人によって全滅させられたというのだから無理もないだろう。


「そ、それと、、、こちら、勇者様宛と魔王に渡された手紙です」


伝令が握りしめていた手紙を広げ、エルカとヘーネは中身を確認する。


「『現在勇者ちゃん率いる部隊は我が南軍総指揮官率いる精鋭2万によって包囲されている。勇者ちゃんのみ通すよう伝えている故、この先10キロ直進した先にある荒原にて待つ。30分以内に来られたし。さもなくば殲滅に出る』ですか。エルカ、明らかに罠ですわ」


苛立ちを隠そうとしないヘーネに、エルカは苦笑を浮かべる。


「そうは言っても行かないなんて選択肢はないよ。仮にこの場に私が残ったとして、手紙通り魔王と魔王軍が合流されちゃったらそれこそ全滅しかねない。一対一なら、後続部隊を殲滅して疲労している魔王なら、何とかなるかもしれないし」


手紙が届いた直後に放った偵察兵によれば、魔王軍に包囲されているというのは事実だという。

ただでさえ人間よりも身体能力が高い魔族が二万。それがポポリアスの一番弟子とも呼ばれる南軍総指揮官によって指揮されるのだ。いくら数の上では有利とはいえ、苦戦は必至だろう。

そこに魔王が加われば、目も当てられない。


「、、、さっさと倒して、必ず追い付きますわ」

「ありがとう。ヘーネ」


合流を約束し、エルカは魔王の元へと向かった。







「はい、勇者の通過が確認できましたと。では、さっさと全軍滅ぼしてさっさともう一人の方の記録を取るとしましょう。魔法用意」


『儀式魔法ホルル・ファン・フレア』


「放て」


エルカが去った直後、ヘーネらがいる駐屯地の地面に魔方陣から吹き出す業火によって、進軍部隊は吹き飛ばされた。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やあエルカちゃん。オレの参謀が認めし勇者。はじめましてだね。オレはアザミ。アザミ・クラシキ。魔王をやっている者だ」


黒々とした刺々しい金棒を地面から引き抜き、エルカへと鬼が嗤った。






━━━

最初はただの脳筋巨人魔王の予定だったのが、「ポポリアスがこいつなら世界を取れると確信できる魔王がそんな分かりやすいやられキャラな訳ないよな?」という思考の元ヤヴァイのができた。

ステータス

倉敷 薊   鬼人     魔王様

筋力 SS 耐久 S 俊敏 A 器用 S 精神 S 魔力 EX

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