閑話 ある修道女の子育て


 私はアルカナ。元勇者。

 昨日、今代の勇者の様子を見に行ってきた。勇者の反応か2つあって、なんだかおかしいなって思ったから。

 そしたら、魔族のしょーぐん?みたいな人に、魔族の女の子を渡された。年齢は5歳くらい。ほっぺたがぷにぷにしてて、可愛い。

 昔寄った村の娘さんの子供らしいけど、娘さんのことは正直覚えてなかった。だから、私はこの子をどうすればいいかわからない。

 でも、村の娘さんはもう死んでしまったらしいし、しょーぐん?も道中の傷が祟って死んじゃった。

 この子のお父さんが何処にいるかわからない。だから、私が育てるしかないんだと思う。

 家に帰ってから女の子のことをよく観察した。名前はナタルティーナ。愛称はナティ。凄く可愛い。年齢は九歳で、魔族だから人間よりも成長が遅いみたい。魔族の中でも長命種らしいし。

 髪の色は黒色で、濡れ羽色?っていうのが近いと思う。とってもさらさら。凄く可愛い。

 角が二本頭の横から生えてて、前に突きだしてる。抱きつかれたりしたら、刺さって痛いと思う。抱きついて貰えるかな?えへへ。

 この子となら楽しく過ごせそう。育てられそう。そう思った。














「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!わたちおうち帰る!帰るの!!ママと一緒がいい!パパと一緒がいい!アルカナヤダ!!!」


 無理だった。

 ナティは、起きたあと、くりくりとした可愛いお目めで回りをキョロキョロと見渡した。

 そして一言。


「ママは?」


 ナティに知っている事情を全部話した。

 話を聞く内に、ナティのこぼれんばかりの大きな瞳は、これまたこぼれんばかりの涙を湛えていった。それで、話し終わった瞬間、爆発した。大変だった。


 ぶっすぅと、膨れっ面をするナティは可愛かった。けど、ご飯を出しても、話し掛けても、近くの村に借りた絵本を読んでも、ナティの機嫌が治まらなかったのには困った。

 何をしてもナティはママがいい。パパがいい。と言って拒絶する。何もできない。困った。


 どうしようか。思い出してみれば、私はどちらかというと世話をされる側の人間だった。そう考えると誰かに相談するのが一番かもしれない。そう思った。

 、、、セフィロストさんに頼もう。あの人ならどうにかしてくれる。









 ナティが寝静まった後に、家の外に出た。


「顕現せよ。【黒槍天陽】」


 未解物質アーティファクト黒槍天陽。私の主武器。その柄の部分と私の胴体を、紐で結んで繋げた。


 ブンッ、、、


 そしておもいっきり槍を投げ、、、ようとして手を止めた。

 よくよく考えてみる。あの人は子供が産めない。その事で悩んでいるって、夫のカルグラルムに聞いたことがある。

 、、、よし。行き先を変えよう。


 私は槍の矛先を南から北西に変え、おもいっきり投げた。


 ブンッッッッッッッ!!!!!!!!!!


 びゅおおおお!!!と音が聞こえる速度で、空を飛ぶ。寒いけど、走るよりは空を飛んだほうが疲れない。

 地面に落ちたら、また投げる。繰り返しやって、目的地へ進んだ。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 マルクシナ魔導連邦ーーー

 シコユコル大陸における大国の一つ。その歴史は長く、当国のトップである四兄弟によると、ざっと600年近い歴史を持つという。建国当初はまさしく連邦という体制をとっていたものの、長い時間により自然と四兄弟を頂点とした体制へと移行していった。


 国家としての特色は、高い技術力と、国家のトップが四人であるという点だろう。

 その高い技術力は他国の追従を許さないレベルであり、現状、例えるならば他国が剣と盾で戦う中、この国だけは機関銃やら戦車などを使うといった風体を成している。

 無論、その技術力は国力の増強にも使われており、近隣諸国を支える屈指の農業国であると共に、国民の生活水準もまた、下手をすれば他国の貴族に勝るとも劣らないものとなっている。


 国家の運営は、長男、エルドラ・マルクシナ。次男、マルコ・マルクシナ。三男、ナレフ・マルクシナ。長女、カサンドラ・マルクシナの四兄弟によって独裁が敷かれている。この4名は建国当初から国家の首席として在籍しており、記録が正しければ500年以上独裁を敷き続けていることとなる。


 国政に関しては、国外への移動、商売には制限がかかっているもののその他の面では比較的自由であるため国民の不安や不満はあまり出ていない。

 極めて優秀な国家であるとされる。




 sideミューズ・ラッタ・ネーミル(連邦軍の一指揮官)

 今日未明、だいたい4時くらい?に良く分からない飛行物体が連邦の領土内に侵入したとかで私は叩き起こされた。

 私、そんなに地位高くないんだが?国防の為ならもっとお偉いさん指揮に出せっツー話だよ。

 んまぁ原因分かってるからなんも言わないけどさぁ。


 謎の飛行物体。確認された形状は、細長い棒状のものに何か人型の物体がぶら下がっているというモノ。

 普通さ、なんだろね~ってなる話なんだが、マルクシナ魔導連邦ウチのデータベースにはなーぜか載ってるんだよね。なんで載ってんだよ。私の睡眠時間削りやがってチクショウ。

 登録コードNo.000奔放な厄災アルカナ、、、の遠距離移動時の姿。それが飛行物体アレ

 過去一度、ウチのトップマルクシナ四兄弟とガチバトルして、国力を半減させたとかいう怪物だ。

 そんなんだから、今度こそ滅ぼしに来たんじゃないかって、国の上層部は怯えまくってるんだよね~。

 アルカナとの戦闘があったのはかれこれ400年前。その時よりも今は国力も技術力も上がっている。負けることはない、、、と思いたい。


 ズドンッッッ!!!!!!!


 爆音と土煙を撒き散らし、飛行物体が連邦の首都付近の荒原へと落下する。

 土煙が晴れると、こちらへと歩く修道服の少女が見えた。


「か、観測出来ました!左頬に大きな火傷を確認!その他もデータベースと95%一致!アルカナに間違いありません!!!!」


 メルティーちゃぁん。観測手として仕事を全うしてるのは分かるけどさ、そんなこと言わなくてもあんな落下に耐えられるのはアルカナくらいしかいないんだよねぇ。見てみ?あのクレーター。半径10mくらいあるよ。なんで無傷なん?


「防衛部隊、各員用意。上層部からは防衛機能は全部使っていいとのお達し。だからさ、全力で守れ。首都に一歩も近づけさせんな」


「「「「YES!マム!!!!」」」」


 多様な魔法、機関銃による弾丸の雨、防衛陣地に仕掛けられた遠距離型爆弾。それらが一斉にアルカナへと襲い掛かって、、、、そしてことごとくが月明かりに煌めく細長いナニカに切り刻まれ、阻まれていく。


「メルティー」

「は、はい!あ、あの、えっと、、、糸です!」

「は!糸っ!?」


 マ、ジ、か。昨今糸使いなんざ聞いたこともないんだけど!?知識としては知っているよ?糸で戦う実力者もいるってことを。けどさ、それらの使い手は総じて遠距離や暗殺が主なんだよ。わざわざ糸で国の防衛機構突っ切ろうとする奴なんて、前例がない。

 舐めてるんだろうなぁ、私らのこと。槍じゃなくて糸なんて使ってるわけだし。


 スパスパスパスパと切り落とされ、絡めとられ、撃墜されていく。此方がいくら撃とうと、アルカナは意にも介さず歩を進める。戦闘中に抱く感想じゃないけどさぁ、流石国家に名指しで厄災扱いされてるだけあるよ、ホント。


 だからさ、だからこそさぁ、そういう自信を打ち砕くのって、、、、、、、最高じゃん?


「各員、用意は?」

「マム!完了しております!!」

「オケ。じゃ、あと数十m。アルカナに気取られないように攻撃続けて」

「「「YES!マム!!!!」」」


 数秒後、アルカナが目標地点に到達する。


 首都外縁部第一防衛機構『ロフルス・サーネス』

 魔科学の総力を賭して作られた傑作。首都の外部側に向けて、秒速300mの速さで砂鉄が凪払うように射出される兵器。簡単にいうと、大量の砂鉄が横に回りながら敵に向かって行く。相手を問答無用で削り殺す兵器。


 私は一回だけ見たことがあるけれど、あれは恐ろしかった。巨大な竜種の強靭な鱗が何の障壁にもならずに切り裂かれていったし。

 +αで大規模魔術式。強制的に叩き起こした魔術師総出の一撃だ。


 3、2、1、、


「放て!!!!」


 号令に合わせて2つの攻撃が放たれる直前、アルカナの体が赤く光り、青く閃き、紫雷が舞う。

 一拍遅れて、アルカナへと通常の防衛機構を含めた数多の攻撃が殺到する。


 ドガガガガガガガガ!!!!!!!!


 暗闇の中、粉塵が舞うにも関わらず煌めき存在を主張するのは、焼け野原ではなく、おそらく糸によるものであろう竜巻だった。


「えっと、えっと、あ、あの!こ、ここここれって、どういうことでしょうか!!!!」


 メルティーちゃんの一言により現実へと引き戻される。ちっ、余計なことしちゃってさぁ!


「さあ?知らんよ~もう。糸の回転で砂鉄もろとも魔法を絡めとって防いだんじゃない?知らないけど」


 もうさ、やけっぱちだわ。

 防衛機構自体はまだある。第二第三って。でも、第一であれならいくら数を重ねようと結局は防がれて終わりでしょーよ、こんなん。


 なーんて諦めてたら、アルカナが仕舞っていた槍を取り出し、投げの体勢に移っていた。、、、これ、ヤバくない?


 ブンッッッッッ!!!!!!!


 投げられた直後、槍は私たちのディスプレイにでっかく写し出されていた。

 、、、アルカナと私ら、だいたい二キロは離れてるんだが?

 であろうその槍は、防衛機構の一部ごと首都の防壁を破壊し、アルカナの手元へと帰って行った。


「、、、えぇぇ」


 メルティーちゃん、気持ちは分かるけどさ、そういうのは口にしちゃ駄目なんだよね?あーた軍属でしょ?


 結局、私たちの防衛陣は突破され、アルカナは首都へと侵入していった。







 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 side四兄弟末っ子、カサンドラ・マルクシナーーー


「ズズッズズズズズ、、、」


 マルクシナ魔導連邦うちの会議室の椅子に座って、アルカナ厄災がりょくちゃ?とかいうのを啜っている。

 エルドラにーさまの趣味のもので、マルコおにーちゃんが嫌がらせに出したんだけど、にーさまの反応を見る限り、作法は完璧っぽい。にーさまの満足そうな顔久々に見たなー。おにーちゃんが悔しげなのはいつもだけど。


「それで、要件はなんだ?貴様が此処で席に着いたということは、ファーストコンタクトでの捕縛の件ではないのだろう?」

「ええ。子育ての仕方を師事したいと思いまして」

「ガルゼの遺言だか遺志だかは知らんが、貴様の取り繕ったような敬語はかえって不愉快だ。元に戻せ。

 それで子育てだったか?我々に頼らずともセフィロスト、、、は、駄目か。クァーボス、、、他大陸か、遠いな。ミールプメプメ、、、あいつに聞く奴は頭が可笑しい。バルバイド、、、あいつも遠い。ファラー、行方不明。よし、理解した。一番近いからか。だが我々も子孫はおらん。あまり期待はするな」


 、、、にーさま、なんで協力するのが前提なん?

 あ、単純に子供好きだからかにゃ?孤児院だの学校だのばっか作ってるし。うーん、納得。


「ん。期待しない」


 ざっと400年前、初めて会ったころのアルカナの口調に戻り、説明が始まった。


「まず、名前はナタルティーナ。今9歳の女の子でーーー」


 そこで、唐突にナレフおにぃが手を挙げた。


「ならさ、僕の『幼女シミュレーター』使おうよ!あれならーーー」

「却下だ。ナレフ、黙っていろ」


 おにぃがにーさまに怒られる。いつもどうりだ。


「遮って済まなかったな。それで?続きを話せ」

「ん。ナティはーーー」


 そこから、アルカナは昨日あった出来事を私たちに話した。


「成る程。状況的に非常に対応が難しかったことは理解しよう。だがな、何故子供に母親が死んだと堂々と伝える?」


 え?駄目なん?私がおんなじ状況なら言うけどなぁ。

 おにぃの方を見てみる。苦笑いしてる。にーちゃんの方を見てみる。苦笑している。アルカナを見てみる。ポカンとしてる、、、私の感性はアルカナと同レベルだったみたいだよ。


「、、、理解できんか。あー、、、例えばだ。アルカナ。貴様が知らぬ間にセフィロストが殺されたと、見知らぬ人物に聞かされたとしようか。そして、だから私が面倒を見ますよ、と見知らぬ人物に言われる。キレるだろ?」

「ん。プッチン」

「つまりだ。貴様は自身がキレることをたかだか9歳の子供相手にやった訳だ」

「!?」


 アルカナは目を見開いたあと、下を向いてしょんぼりとしてる。

 私で考えてみよっか。起きたらどっか知らない場所に居て、知らない他人ににーさまが死んだって言われて、だから一緒に暮らそと言われると。ふーむ。キレるね!プッチンだよ。私だったらその他人を殺してにーさまを探しに行くなぁ。それをアルカナはやっちゃったと。わぁ。


「、、、どうすればいい?」

「謝れ。謝罪を何よりも優先しろ。その後は基本的に自由に行動させろ。貴様も知りもしない相手に突然付きまとわれるようになれば、不愉快だろう?自身がやられて嫌だと思うことは、基本やるな。どうしても困っていたのなら手を差しのべてやれ。以上だ」

「、、、ありがと。エルドラ、意外といい奴。これからも、頼っていい?」

「構わん。が、基本日中に来い。夜間の警備は手間だ」

「ん。善処する」


 言い残すとアルカナは席を立ち、帰ろうとする。


「待て、帰るならば相談料及び夜間訪問の迷惑料を払ってからにしろ」


 にーさまがアルカナに圧をかける。流石にーさま!絞れる時に搾り取るスタイル!そこに痺れる憧れるぅ!!


「んー。腕でいい?」


 え?


 私たちが何か反応をする前に、アルカナは自分の片腕を引きちぎった。


「置いとくね」


 ポンっと何事もなかったかのように、引きちぎった腕を、会議室の円卓の上に置いた。


紋章エンブレム大聖女。『パーフェクトヒール』」


 ピカーって光ると、アルカナの腕が生えていた。


「じゃ、またね」


 引きちぎった腕を残して、アルカナは帰って行った。


「えええええぇぇ、、、」

「妹よ、気持ちは分かるぞ」


 にーさまの声に、残りの兄二人もうんうんとうなずいた。


「さて、あれは見なかったことにする。お前ら、せっかくのアルカナの腕実験材料だ。夜通し研究するぞ」

「おおお!!!そうだね!何造ろう!せっかくなんだし、前回失敗した、クローンがいいな!」


 にーさまの声に、私は思考を切り替えた。だって、前に材料と実験が足りてなくて中途半端な出来になっちゃった実験が、再開できるんだよ!?


「そう慌てるな。お前らは着替えて来い。俺は先に準備して待っている」


 そうだった。私、まだパジャマだった!

 同じくパジャマ姿の兄二人と目を合わせ、一斉に走り出す。んー!待ちきれないね!




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 廃村付近の森、アルカナの家ーーー


「居ない、です、ね」


 家に帰ったら、部屋にナティが居ない。どうして?何処に行っちゃった?


 家の周りを見渡す。僅かに草の葉や茎が折れた跡。まだ新しい。良かった。これならそう遠くには行ってないはず。ナティが軽いからか、見にくいし判りづらいけど、なんとかなる。


 糸を木に巻き付けて、体を木に引き寄せる。その勢いで次の木に。繰り返して加速していく。

 ここに住んでる私が言うとアレだけど、この森は凄く危険。

 数百年前まで村もあった場所なのに、今じゃ入ったら生きて帰れないなんて言われるくらい。危険度Sの致死の森だなんて呼ばれてる。ナティがそんな場所で長く生きられる筈がない。急がないと。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 side森の白狼


『なぁ親分、こんな追跡なんて辞めて食っちまいましょうぜ。あんな柔らかそうな獲物滅多にありませんわ』

『そうっすよ親分。あっしあんなんずっと見てたら腹が空いてしょうがないっすよ』


 、、、こんの莫迦子分どもが。


『いいか、お前たち。この小娘はアルカナの家から出てきた』


 ピタリと子分どもの脚が止まった。さもありなん。気持ちは我輩もわからんでもない。


『お、親分。あっしなんだか満腹になっちまったみたいっす。さっさと巣に帰って寝たいっす』

『親分。自分はなんだか腹が痛くなってきましたわ。ああ痛てて。こいつも満腹みたいですししょうがないから帰って寝ましょうぜ!?』

『ならん。我輩が他の物の怪を退ける間、貴様らには小娘を見張ってて貰わねばならんからだ』


 アルカナはこの森の主。我輩がまだ子狼であった頃に森へと入ってきた。以降この森はアルカナから漏れる魔力に充てられ魔の森へと至った。

 そのアルカナの家から出てきた小娘がまともな筈がなかろうが。餌にでもするのかペットとして飼われる予定だったのかは知らぬが、喰われれば確実にアルカナの怒りの琴線に触れることだけは事実。

 溢れ出る魔力のみで森を変異させる存在が怒りに任せて暴れたとして、周りに住む我輩らが生き残れるとは考えられん。


『ーーー故に、保身だ。死にたくなければ小娘を守れ』

『しゃあないっすねぇ』

『今度捕った獲物のモツは自分が貰うっすよ?』


『グルグルルルルルル、、、、、、グルァァァァァァァアアアア!!!!!!!!!!』


 この雄叫び、崩龍グルルガランか。他のものは我輩の気配に怯え近づかんが、あいつは違う。全く、あやつも手出し厳禁だと判っておる筈だろうに。それでも尚襲う気か。


『親分!グルグルガランはヤバいですぜ!逃げましょうや!!』

『バカ!グルグガランっすよ!名前間違えたら殺されるっす!!』

『双方不正解だ。貴様らはあそこで怯えて座り込む小娘を守っていればよい。グルルガランは我輩が相手をする』

『『分かりやした了解っす!!』』


 子分どもの返事を聞き終えるや否や、我輩はグルルガランの前へ躍り出る。


『よぉ犬っころ。アルカナにしっぽを振って楽しいかぁ?』

『黙れトカゲ。貴様こそ腹の足しにもならん肉にずいぶんとご執心のようだな』

『ガッハッハッハ!』

『クッフッフッフ』

『『死ねやオラァ死に晒せ下郎!!!!!』』


 我輩がグルルガランへ飛びかかり、グルルガランが我輩へと爪を振り下ろそうとしたのと同時であった。


「ナティ!探しましたよ?」


 白い修道服を来た少女が涙を浮かべ、我々を気にも止めずに小娘へと抱きついた。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ご、ごわがっだぁぁぁぁ!!!!」


 びゃぁぁ!!と泣き叫びながらナティが抱きついてくる。可愛い。離さないと言わんばかりに皺ができる程私の服を握っているお手てもかわちい。

 なんだこの可愛い生物は。


「一人にしてすみません」


 泣き続けるナティを抱き締める。泣き終わるまで、ずっと。可愛い。


「落ち着きましたか?」

「う"ん」

「それは良かった」


 泣き終わったナティはむすっとした表情を浮かべてる。とても可愛い。


「まず、貴女のお母さんのこと、何の配慮もせずに伝えてしまって、ごめんなさい」

「、、、」

「でも、伝えたことは事実です。どうか、私で我慢してくれませんか?」

「、、、、、、、、、わかった」


 ナティの頬がぷっくり膨れてる。可愛い。凄く押したい。


「それと二つ目です。この森は危険です。恐ろしいトカゲもいます。私も心配になります。勝手に出歩か無いで下さいね?」

「、、、、、、わかった」


 ぎゅっとナティを抱き締める。


「良い子です。これから、よろしくお願いしますね」


 ナティから恐る恐る抱き締め返される感覚にふわふわする。

 堪能した後、犬とトカゲの方を見る。


「白、良くなってくれました。トカゲ、後で鱗をむしります」


 犬へのお礼はどうしよう。考えながら、ナティと家に向かった。









 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「アルカナ料理へた!!お肉生焼け!野菜火が通ってない!!スープ甘い!!」


 朝食。ブスッいじけるナティを見ると、上手くやっていけるか不安になる。






━━━

そういえば今日はベリークルシミマス。一年のご褒美に近くのリア充に爆弾を投げつけましょう。




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