第十八話 終戦
再び開かれた戦前。今回の戦いも、都市を囲む魔王軍が攻城戦を行う形で始まった。
前回と違うことがあるとすれば、打って出たエルカと軍を無視し、そのまま攻撃を続けたことだろう。
「、、、、、、、、、、、、ぬ、、、、、、!?」
ただ、無視されたのは勇者と兵のみ。勇者の周りに隠れていた死神は、あらかじめ用意された多数の兵で囲まれた。
スパスパと、プリンのように魔族の兵が切り刻まれる中、魔族の指揮官の怒声が響く。
「動揺するな!あの大技はあまり使えん!囲んで攻撃を途切れさせるな!」
ゼルブは死神という大駒を押さえ付け、その間に強引に大都市メルブールを攻め落とそうとしたのだ。
「よく来たな。勇者よ」
「ゼルブ、、、殺す!!」
当然、無視されたエルカは自由に動くことができる。
が、エルカの戦法は手数で相手を圧倒的というもの。大型種の魔族相手には効果的とは言えず、エルカが戦場でいかに大立ち回りしたとしても、魔王軍にとって大したダメージが与えられることはない。
では、どうすれば良いか。そう、無視されているならば、軍のトップであるゼルブを直接討ち取りに行けばいいのだ。
「『
エルカはゼルブとの距離を一気に詰め、切り裂きつつ走り抜けた。
ゼルブの太ももから、血が吹き出る。エルカから与えられた傷は、先日の戦闘よりも鋭く、そして深かった。
「ほう?先日よりも速、、、」
話しかけるゼルブを無視し、エルカは攻撃を続ける。
(、、、敵に時間は与えぬと。いや、そも回復が追い付かぬのか)
エルカの剣戟を新しい戦斧で防ぎながら、ゼルブは思考する。
(儂の使える魔法は『フィジカルアップ』のⅠ~Ⅲ迄。もしくは『プロテクトアップ』のⅠかⅡのみ。死神を抑えられているのは良いがあまりにも兵を消費するわけにはいかん。とすると)
「『フィジカルアップⅢ』!!!」
選んだ魔法は『フィジカルアップ』。防御力のみではなく、身体能力の全体強化を選んだ。ゼルブは、エルカとの勝負を早めにけりをつけることに決めた。
確かに、今までのエルカなら一瞬で勝負は決した。だが、、、
(っ!?速い!!)
(当たらん!しくじったか!!!)
ゼルブは使う魔法を見誤ったことを、エルカが攻撃から離脱する度に顔を歪めることで悟った。
ゼルブが狙うべきだったのは『プロテクトアップ』による防御特化の持久戦。早急にけりをつけようとした判断が間違いだったのだ。
ゼルブは大型種。魔法の使用を
しかし、
「ヌゥゥゥン!!!!」
気息をはき、対峙するゼルブに対し、決め手に欠けるのはエルカも同じだ。ゼルブの傷は増える。攻撃は入っている。だがエルカの腕力では、いかに速さで威力が増そうとゼルブに致命的な一撃を与えるのは困難だった。
(くっ意識が朦朧とする!)
先に限界が来たのは、ゼルブだった。『
貧血により、ゼルブが一瞬ふらつき、無防備になる。その瞬間を、エルカは逃さなかった。
ドンッ
と、戦場に響く突きの音。音速を越えた加速をした、エルカの必殺の一撃が、ゼルブの首を貫いた音。
一拍おいて、ゼルブが倒れた。
「四天王ゼルブ・ガーレヤン!討ち取ったり!!!!」
エルカの渾身の叫びが、戦場に響く。
全力を出しきったエルカぎ倒れるのと、魔族にどよめきが広がるのは、ほぼ同時だった。
「『
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???ーーー
廃村近くの森、その奥の方にぽつんと一軒の家が立っていた。そんな家には似合わないウッドデッキで、1人の少女がズズッと緑茶を啜っている。
森に音が響くものの、森の獣は一匹たりともその無防備な修道服の少女を襲おうとはしなかった。
左頬に火傷を持つ少女。彼女を狙おうと近付くどころか、獣どもは一歩でも離れようと努力していた程だったから。
森に住む獣は皆知っていた。少女は捕食者であり、自らは被食者であることを。少女が、人間の皮を被った怪物であるということを。
ふぅ
と、一息ついた少女は、湯飲みを机の上に置いた。
「勇者の反応が
少女は、机に置いた湯飲みを取ると、中の緑茶を一息に飲み干した。
ぐぐっと背伸びをし、立ち上がる。
かつて、化け物と呼ばれた少女が、再び動き出した。
━━━
評価されると魔王との決戦がちょっと豪華になります。
エルカ・ノール・リレート
筋力 C 耐久 D 俊敏 SSS 器用 B 精神 A 魔力 A
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