第5話 テキトー炒飯
12月20日。
今日は休みだ。夕飯は何にしようか。
子供たちには、基本的に僕の飯は喜ばれる。子供たちの苦手や嫌いな食材は使わないからだ。妻は栄養のバランスを考えて、いろんなものを作る。特に妻は魚介類が好きなので魚料理を作るが、子供たちのテンションは低い。
魚は嫌いじゃないけど、寿司以外はあまり食べたいと言わない。サラダは取り合いになるくらいになるくせに、魚はあんまり食べない。魚はシャケか鰤の照り焼きか塩サバくらいだ。ちなみにコストコの鯖の切り身は美味い。シャケと鯖はコストコの大容量のものをジップロックに小分けにして冷凍保存してある。娘はイクラをアホみたいにたくさん食う。これもコストコで大容量を買ってくる。年末年始は何故かイクラ丼を食うのが定着していて、この間の休みに、コストコでちゃんと年末用のイクラは買ってきた。
話を戻そう。魚介類、特に海老、蟹、烏賊、蛸を全く食べない。タコ焼きは食べるくせに。
パスタなんか作る時は、僕と妻は海老や帆立を入れたい。だけど息子と娘は、作っても買わないのでパスタは2種類作ることになる。面倒臭いので自然と魚介メニューの頻度は少なくなってしまう。
そもそも僕は魚が触れない。切り身であっても、あの鱗側というか青い部分、魚の腹の部分を触ると、足の爪先から頭の先へ『ブルブルブルッ』と寒気が走ってしまう。むかし結婚する前に妻がハワイでシュノーケリングをしてて、魚が綺麗だと喜んでいたが、僕には恐怖でしかない。
まあ、そんなわけで僕が魚料理をすることは、ほぼない。
朝起きて、さぁて、今日の夕飯は何にするかなぁ、と朝飯代わりにオイコスのヨーグルト(これも、この間コストコで買ってきたやつ)を食いながら考えていると、電話が鳴った。
『あんた今日、休み?』
実家の母さんからだ。実家はとなりの学区なので超近いところだ。
『ヨーカドー行くよ』
お誘いの電話。若い頃は母さんと出かけるなんて恥ずかしかったが、この年齢だと気にならなくなってくる。
母さんは、午前中に健康のために歩いて出掛ける。決まった時間にウォーキングとかだと面倒臭いらしい。何か理由を作って歩くために出掛ける、そうしているらしい。1〜2週間に1度は、そうやって一緒に買い物に出掛ける。その時に、両親の体調の具合、弟や親戚の近況、母さんの愚痴などを聞いている。
今日はヨーカドーだったが、曜日によってはアピタの場合もある。火曜が安い日なのだ。アピタは少し距離があるので、そういう場合は父さんが車を出して3人で出掛けることもある。一緒に買い物をしていると、息子と娘に渡してちょうだい、とグミやラムネを買ってくれる。大学3年と中学3年なのだが、母さんにとっては小さい時から孫は変わらないのかもしれない。子供たちもバアバが買ってくれたグミやラムネを喜ぶ。
なんとなく一緒にスーパーを回っていると、ポッと目に入ったのが皿うどん。昨日『オモウマい店』を観ていて、やたら忙しなく動く店主の中華料理屋が出ていて、皿うどんが美味そうだった。
夕飯は皿うどんに決定。
確か家の冷蔵庫にはチンゲンサイがあったはず。豚の細切れとヤングコーン、うずらの卵を買い足した。忘れちゃいけないのがナルト。あとはモヤシ。
モヤシは2袋買う。
今日の夕飯も決まって、ついでに昼の弁当でも買おうと思ったが、迷ってやめた。家を出た時には息子はいたが、昼にいるかわからない。僕は息子の大学のスケジュールを知らない。息子はバイトや遊びで夜遅く帰ってくるので、朝はギリギリまで寝ている。たまに起こしてやると『授業は午後』と不機嫌な返事が帰ってくる場合があるので、そのままにしている。知らないが、自分の予定だからちゃんと起きて行ってるのだろう。
ここで弁当を2つ買っていってしまうと、息子が大学に出てていない場合、1個ムダになってしまう。逆に1人分だけ買っていって昼に息子がいたら、1人分だけ作るのも面倒。もし息子がいなけりゃ、また自分の飯ならテキトーにやればいい。
いるのか、いないのか、と思いながら帰ると、結局息子はいた。
『おい、今日、学校は?』
と聞くと、
『今日はなんもない』
とベッドから返答が聞こえた。まだ半分寝ている。息子はわりと愛想が良く、今時の息子には珍しく、親とよく話をするが、寝起きは非常に悪い。小さい頃からよく寝る子で、最近夜遊びが多くて、たまに何も予定が無い日があると一日中寝てる日がある。そんな不摂生な、と叱りたいところだが自分の若い頃を思い返してみると、朝まで飲んでてそのまま仕事に出勤なんてやってたから、ひとのことは言えない。
これが『午後』という返事だと『午後から学校』。『バイト』という返事だと『授業はないけど夕方からバイト』。『なんもない』というのは、昼も夜も飯を家で食う、ということだ。
じゃあ昼飯は2人分作らなきゃな、と冷蔵庫を開けるとタッパーに昨日の白米。賞味期限が22日の卵。必然とメニューは『炒飯』になる。
さぁて具材は、となると、取り敢えずニンニクと生姜のチューブを出す。S&Bのチューブのシリーズは、ニンニク、生姜、カラシ、柚子胡椒はいつも冷蔵庫に揃っている。豆板醤もある。この辺の調味料を使えば、なんだって美味い。あとは味覇と醤油。オイスターソースは......取り敢えず保留。
焼豚の代わりに厚切りのハムを一切れ。これを細かく刻む。そしてナルト。
ナルトは皿うどんで使うのだが、4人前で作ろうとすると、いつも半分余ってしまう。ラーメンとかでも使えるが、1人前に薄く切ったのを2〜3枚。無いと寂しいのだが、あんまりナルトをたくさん入れると意外に邪魔なものだ。
だから、その半分余る予定のナルトを切る。このナルトを微塵切りにする。あとは細ネギて、具材終了。
まずはごま油でニンニクチューブと生姜チューブを炒める。そこへ微塵切りにしたハムを投入。焼き色が付いてきたら豆板醤を少し。そして微塵切りナルト投入。
なんかヘラでテキトーに混ぜてから、卵3個、直接フライパンの上で割って投入。溶き卵にする必要はない。目玉焼きになる前に、フライパンで混ぜればいい。
卵が半熟のうちに冷飯を投入。料理酒をぶっかけて、蓋をしてしばらく待つ。冷えたご飯が、少し柔らかくなればよい。
2〜3分放っておくと、蓋を開ければひっくり返ったオムライスみたいになっている。
そこへ味覇をテキトーに入れて、ご飯の塊を崩すように混ぜる。一緒に卵もバラバラにしていく。塩胡椒も、ちょっと入れる。
米と卵がバラバラになるまで混ぜて、醤油を半周くらい入れて、ひたすら混ぜる。ちょっと味見をして、味が薄かったので、醤油をもうちょい。オイスターソースはどうしようかな、と思ったが、焼売の味付けをオイスターソースにしようと思ったので、昼の炒飯にはやめる。
最後に仕上げで細ネギを混ぜる。
混ぜる時はフライパンも揺すりながら混ぜると、やりやすい。どのくらい混ぜるかというと、腕が疲れてくるくらいが目安。
もっと炒めた方がパラパラになるのだろうが、息子はちょっとペシャッとした方が好きだと言う。
はい、これで完成。
お好みでラー油をかけるなり、野沢菜を乗せるなりして、食べれば良し!
【材料】
冷飯・・・男2人分なので茶碗4杯分くらい
卵・・・3個
厚切りハム・・・一切れ(べつに無くてもヨシ)
ナルト・・・10センチくらい(1本で売ってる半分)
細ネギ・・・テキトー
味付け
ニンニクチューブ・・・3センチくらい
生姜チューブ・・・これも一緒かな
豆板醤・・・2センチくらい
料理酒・・・ご飯を蒸らすために、ちょぴっと
味覇・・・小さじ2杯くらいかな
醤油・・・これも一緒かな
塩胡椒・・・2振りくらい、まあ適当
午後1時ころ、眠たそうに起きてきた息子が一口食べて、
『美味い!いつも通りペチャっとしてて美味い!!』
それは、褒めてんの?
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