第4話 支えてくれる人
やっさんとは、4年の付き合いになる。
色々と俺の事情を知ってる人で、それでも俺を息子のように可愛がってくれる。
名前の通り屋城家の次男で、兄である社長と一緒に会社を切り盛りしている。
そこそこ大きな建設会社で、昼は建築、夜は主に道路工事などを幅広く手掛けている。
やっさんという愛称でみんなに親しまれている彼は、数字は苦手だからとオフィス業は全て兄に任せ、こうして現場を梯子して仕事をしている。
初めて・・・屋城建設を訪れた時、強面な社長とやっさんに少したじろいだが、やっさんは(俺と名前似てるな)と笑ってくれた。
その笑顔が何故か嬉しくて、俺は泣きながら事情を話し、どうしてもここで働きたいと懇願した。
強面な姿と違って、2人は優しく俺を慰めてくれた。
そして、一緒に頑張ろうと言って俺を受け入れてくれた・・・2人には感謝しても仕切れないくらいの恩義がある。
特にやっさんは、自分の家に誘って食事を食べさせたり、こうして現場が重なる時は何かと気にかけてくれている。
俺はそれが本当にありがたかった・・・。
「やっさん、夜の現場はまだ来ないですか?」
「そうだな・・・夜は何かと問題があるから入りにくいんだよ。まぁ、そんなに焦るな。あと1、2ヶ月したら年末に向けて仕事がたんまり入るさ。それより、お前ちゃんと飯は食ってるのか?」
「え・・・あ、はい。一応・・・」
「一応って・・・いい男が台無しなくらい、顔がやつれてるぞ?せっかく、この仕事始めて体格も良くなったのに、本当にいい男が台無しだ」
「ふっ、何ですか?それ・・・」
「お前、まだ25だろ?顔も目鼻立ちが整っていい男なのに、会う度に人生諦めたような顔しやがって・・・まだ、起きねぇのか?」
「・・・・はい」
やっさんの言葉に俺は小さく返事を返す。
「そうか・・・お前、彼の人生も背負うと覚悟を決めているなら、ちゃんと飯食って寝ろ。倒れたりなんかしたら、本末転倒だ」
俺の背中を叩きながら、やっさんが激を飛ばす。俺は苦笑いしながらぼそっとそうですねと返し、残りの弁当を口の中にかきこんだ。
やっさんはそれを見て、大きな口を開けて笑った・・・。
暗い中、アパートの階段を上がると、自分の部屋に灯りが付いているのに気付く。
俺は昨夜から消し忘れていたのかと考えながらドアを開けると、玄関で呑気に寝ている瞬太の姿が目に入った。
「・・・・おい、いくら幽霊でもこんな所で寝ていると風邪引くんじゃないのか?あ、いや、風邪は引かないか・・・とにかく邪魔だ」
俺の言葉に瞬太はひどいと言いながら、ゆっくりと起き上がった。
俺は靴を脱いで家に入ると、リュックをドカッと入り口に放り投げ、持っていた袋を台所に置くと、そのまま手を洗う。
「聞いてくださいよ〜。僕、頑張ったんです」
俺の側で浮かびながら声をかけてくる。
「・・・・何を頑張ったんだ?」
「ポルターガイストです!」
「・・・・は?」
頭がハテナな俺とは裏腹に、目を輝かせて嬉しそうに話す瞬太。
「だから、ポルターガイスト!心霊現象です!」
「話がわからん」
「健志さん、なんで電気が付いているか不思議に思いませんでした?」
「・・・・」
「そうです!この、僕がやりました!」
ドヤ顔で胸を叩く瞬太に、俺はため息を吐く。
「いつから付いてるんだ?」
「1時間前です」
「そうか・・・だが、幽霊は明るくなくても平気だろ?これでも、俺は節約してるんだ。だから・・・・」
「ごめんなさい・・・」
俺の言葉を遮り、さっきとは打って変わって項垂れた表情で謝る瞬太。
「・・・・いや、出来れば30分前とかに・・・」
「いいんですか!?」
また言葉を遮り、今度は嬉しそうに顔をあげる。
「僕、どうしても明りをつけて健志さんにおかえりって言いたかったんです。暗いと何か寂しいじゃないですか。だから、僕、頑張って初めてポルターガイストを起こしてみました。少し疲れちゃいましたけど・・・」
そう言って瞬太はエヘヘっと笑った。
確かにいつも帰ると部屋は暗い。だが、一人暮らしをしていれば普通の事だ。
でも・・・明るい部屋、目の前で微笑む瞬太、心の中に雫がポチャンと落ちた音がした。
「健志さん、おかえりなさい」
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