久しぶりの為朝

「慧くうううううううん!! このハーレム野郎がああああああ!!」

「うおおっ!?」


 ファルーン王国の勇者、為朝がやって来た!!

 が……完成したばかりの『シャオルーン王城』にある謁見の間で出迎えたら、現れるなりいきなり飛び掛かってきやがった。

 なので、ケルベロスが為朝の顔面を鷲掴み。


「いだあああああ!! ギブ、ギブ!! ちょ、慧くん何この褐色犬耳イケメン!?」

「ケルベロス、放してやって」

「む……わかった」


 ケルベロスが手を離すと、為朝が顔面を押さえ床を……というか、畳を転がる。

 この『シャオルーン王城』……どういうわけか、時代劇で見るような将軍の城そっくりだった。謁見の間も、畳敷きだし座布団敷いてあるし……ふすまとかどうやって作ったんだろうか。

 まあいいや。玉座に座るとか俺には合わないし。

 さて……為朝が現れるなり飛び掛かった理由は。


「にゃあ」

「ふにゃ」

「何こいつ……エリ、知ってる?」

「知らない。アイネ、敵ならやっていいよ」

「こほん。お二人とも、落ち着いてください。天仙猫猫……あなたも護衛なら動きなさい」

「かっかっか。金華猫よ、こやつは面白そうじゃのう」


 まあ、ハーレム野郎と叫んで飛び掛かる気持ちわかるわ。

 マオにルナは俺にすり寄って甘えてくるし、エリは畳が気に入ったのか客の前でもゴロゴロしてる。同じく藍音も畳を気に入り、金華さんと天仙猫猫は座っていた。

 為朝は歯を食いしばり、四天王より恐ろしい圧を放つ。


「テメェ……ワイらが必死こいて四天王を倒したってのに、ハーレム満喫中ですか? 今夜は誰ですか? ちくしょおおおおおおおおおおお!!」

「うるさっ……おい為朝、言っておくけどハーレムなんてないぞ」

「うるせえええええええええ!! ネコミミとか反則だろうがあああああああああ!!」


 クソうるせえ。

 ファルーン王国の代表ってことで為朝とアリアさんの二人で訪問してきたけど……どうせなら別のやつにしてほしかった。

 すると、黙っていたアリアさんが為朝を押しのける。


「すまんな、ケイ。それと……久しぶりだな」

「ええ。お久しぶりです。クラスのみんなは元気ですか?」

「ああ。皆、レベル上げに勤しみ、ようやく魔王四天王の一人、『棺桶』を討伐した」

「俺も『銀角』を倒しました。まあ、今は村で草むしりやってます」

「は?」

「えっと、まあとりあえず……えっと、シャオルーン王国の国王、有馬慧です」

「……まさか、国を立ち上げるとはな」

「ハーレムううううううううううう!!」

「すみません、そいつ黙らせてくれませんか?」


 為朝があまりにもやかましいので、ケルベロスが一瞬で背後に回り、為朝を絞め堕とした。

 これでようやく話ができる。


 ◇◇◇◇◇◇


「早速だが……黒鉄レオンたちのことだ」

「ああ、その……事前に報告した通り、あいつは爆死しました。壮絶すぎる最後でした……」


 藍音が「おえっ」と舌を出す。

 俺たち、あいつが爆死する瞬間モロに見たからな。

 だが、アリアさんが首を振った。


「…………お前には最悪の知らせだ。黒鉄レオンは、悪女神フォルトゥーナと名乗る女神と結託し、現魔王を討伐し新たな魔王となった」

「……へ?」

「ファルーン王国に宣戦布告文が届いた。二か月後……黒鉄レオン率いる『魔王軍』と『新四天王』が、ファルーン王国を滅ぼすと」

「はい? え、あいつ死んだはず」

「生きている。そもそも、宣戦布告をしに来たのは、黒鉄レオン自身だ。新四天王、夢見レイナ、鎧塚金治、相川セイラ、そして『黒豹』のオセロットの四人とな……」

「マジで……ってか、夢見たち何してんだよ」

「黒鉄レオンは言っていた。『魔王軍を少し整理して、新たな軍とした。この世界は我々が支配する』と……」

「…………」


 意味不明すぎる。

 というか、生きて……ああ、悪女神フォルトゥーナが何かしたのか。

 ってか鎧塚とかマジで何考えてんだ。この世界中を敵に回すようなもんだぞ。

 すると、藍音が言う。


「ね、それってある意味でチャンスじゃない?」

「え?」

「だって、あのクソ雑魚が新しい魔王なんでしょ? どうも目立ちたがり屋らしいし、ファルーン王国に攻めてくるなら、本人も出てくるんじゃない?」

「……確かに」

「だったら簡単。アグニルーン、シャオルーン、エイルーン、ガイアルーンの四国で、魔王軍を叩き潰せばいいじゃん」


 そう言うと、アリアさんも言う。


「まさにその通り。現在、ファルーン王国勇者の平均レベルは200近い……他の四国と協力し、連合軍を結成……魔王軍を壊滅させる」

「なるほど……そりゃいいな」

「ケイ。ぜひ、力を貸してほしい。我々人類は、長きにわたり魔王軍と戦い続けてきた。その戦いに終止符を打つチャンスがやってきたんだ」

「もちろんいいっすよ。ってか、黒鉄レオンたち馬鹿だろ……自分らのこと主人公みたいに思ってるくせに、やってること完全に悪役じゃん」


 悪は滅びる運命……まあ、負けたら鎧塚たちも終わりだな。

 というわけで、シャオルーン王国としてファルーン王国と協力することにした。


「にゃあ、だいじょうぶ?」

「マオ、さわっちゃダメよ」

「う、うう……ねこみみ、よう、じょ……」


 とりあえず、為朝とは久しぶりだし、これまでどんな道を進んできたのか聞いてみるかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ! さとう @satou5832

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ