シャオルーン王国……まあ、うん

「……ん、ふぁぁ」


 早朝。目を覚ますと、妙にくすぐったい。

 ああ……ルナのネコミミが、俺の顎をくすぐっている。いつもはマオのポジションなんだが、マオは床に転がり、ルナが俺にしがみついて寝ていた。

 目を覚ますと、ルナも起きる。


「ふにゃああ~……」

「おはよう。朝だぞ……ふぁ」

「んん、ふにゃ」


 寝ぼけてるのか、ネコミミがピコピコ動く。そして、床にいたマオも目を覚ました。


「にゃああ……うう、ご主人さまぁ」

「おお、おはよう」


 俺はマオを抱っこ。窓際に行き、窓を開ける。

 明るい光が差し込み、朝のさわやかな空気が入ってくる。

 大きく深呼吸をすると、ようやく目が覚めた。


「いい朝だ……」

「主、おはようございます」


 と、窓の下から声……そこにいたのは、銀色のクワガタムシ……ではなく。


「おはよう。シュラガザードさん」

「おはようございます。さわやかな朝でございますね」

「あ、ああ……うん」


 一か月経つが、まだ慣れない……魔王四天王の一人、シュラガザードさんが住むことになったなんて。

 というか……よくわからんけど、兄のギルティアスさんに負けて改心、ギルティアスさんが従う俺に忠誠を誓ったとか。

 改心して心を入れ替えたのか、蟲族の皆さん一人一人に頭を下げ、蟲族の象徴であり誇りであるツノをへし折って謝罪した。

 ツノを自ら折ることは蟲族で最大の屈辱であり、命を自ら断つのに等しいとか。シュラガザードさんに家族を殺された者もいるみたいだが、蟲族全員の前でツノを自分で折り、もう誰も責める気になれなかったとか……ちなみに、ツノはもうちゃんと生えている。

 そして、心を入れ替えて、今は村の草むしりをやっていた。そう、村の草むしり担当として、十年間ほど従事することになったとか……うーん。厳しいのかそうじゃないのか、俺には判断できん。

 でも、真面目にやっているし、ギルティアスさんも少し嬉しそうだったし……まあ、いいんだろうな。


「にゃうー」

「ああ、メシだな。さ、ルナも着替えていくぞ」

「ふにゃあ」


 まだ寝ぼけているのか、ルナは着替え途中でベッドに転がってしまう……かわいいな。

 二人を着替えさせ、一階へ。

 食事を食べ、今日の仕事をするために『政府』へ行く。


「にゃあ。ご主人さま、あそんでいい?」

「ああ、ルナと遊んでこい」

「ふにゃ。今日は森に虫取りに行くのよ。いくわよマオ」

「にゃー」

「あまり遠出するなよ。気を付けてな」


 マオ、ルナは毎日遊んでいる。友達っていいもんだ。

 俺は一人で『政府』へ……するとそこには、藍音がいた。


「あ、慧。遅いよ」

「お前が速いんだよ……」

「はいはい。愛しの旦那様」

「……それやめろ」

「アタシだって嫌よ。でも仕方ないじゃん……とにかく、お仕事よ」


 俺、藍音は『シャオルーン政府』……と言う名の二階建ての家に入る。

 中では、金華さん、猫数匹、サモエドのマイケル、チャウチャウのモフ助がいた。みんな『シャオルーン政府』の重役たち……人間いねぇし!!

 

「おはようございます。ご主人様、奥様」

「おはよ。あと奥様ってやめてよー」

「わかりました。ですが、お忘れなく」

「わかってるって」


 藍音は「はあ」とため息を吐いた。

 そう……藍音は、俺の『婚約者』となり、今はシャオルーン王国に住んでいた。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、襲撃から一か月……俺は正式に『シャオルーン王国』を立ち上げ……というか、もともと存在した国だし立ち上げって変か? まあいいや。

 とにかくシャオルーン王国を立ち上げ、初代国王となった。


 そして、世美川優華さんがガイアルーン王国代表としてあいさつに来た。外交的なモンはよくわからないが、正式にガイアルーン王国が訪問したってことで、ガイアルーン王国はシャオルーン王国を認めたってことで、エイルーン、アグニルーン、ファルーンに伝えたらしい。

 優華さん曰く、「近いうち他の四国からも使者来るんじゃない?」とのこと……ファルーン王国からもくるんだろうか。

 

 そして、両国の友好の証として……ガイアルーン王国勇者、久寿川藍音を俺の『婚約者』として送ることになり、金華さんが了承……いやマジで、異世界あるある、唐突な婚約者展開じゃん。

 藍音も驚いていた。まさか、俺と結婚とか……でも、言葉では嫌々言うが、ガイアルーン王国に帰るでもない、シャオルーン王国に住んでいる。


 というわけで、シャオルーン王国となった元廃村。

 他の廃村も開拓がはじまり、ガイアルーン王国から来た技術者とかも住み始めた。

 村の規模も大きくなり、噂を聞いたドワーフ族や、放浪中のスケルトン族なんかも移住を始めた。

 今では、村の規模が二百人を超えた。犬猫も知らぬ間に増えてるし。


 とまあ……こんな感じで、俺の異世界生活は続いている。

 今のところ、国王っぽいこと何もしていない。

 というか……人が増えても、俺は特に仕事していない。エリは狩人としてレベルアップ中だし、ミュウも狩りしていたけど、人が増えてきたおかげでフォルテの支店も稼働を始めて忙しくなった。

 ミュウ……俺の婚約話聞いて「アタシも結婚する!!」とか言ってる……異世界あるある、都合のいいハーレム展開とかマジ勘弁してほしい。為朝が現状知ったら魔王よりも恐ろしい存在になりそうだ。

 とにかく、俺は国王になった。


「金華さん。俺、何かすることある?」

「特にありません。村を散歩し、仕事中の住人たちをねぎらってもらえれば」

「……わ、わかりました」

「じゃあ慧、散歩行こっか」


 こうして、俺と藍音は今日も……村を散歩し、住人達に激励するのだった。

 ってかマジで王様っぽいこと何もしてねえ!! 毎日散歩して、仕事してる住人達に「がんばってくださ~い」って言うだけだし!!

 異世界あるあるの王様ってもっと忙しいモンじゃねぇのかい!!


「……はあ」

「なにため息吐いてんのよ」

「いや、もっと仕事したい……スローライフっていうか、ただの暇人だぞこれ」

「真面目ねー。じゃあエリと狩り行く?」

「……狩りか。そういや、狩りとかやったことないな」

「よし決まり。じゃあ、エリのところ行こう。たぶん今の時間なら、狩り行く前の準備してるはず」

「わかった。じゃあ、今日は狩り行くか」


 さてさて、エリのところに行きますかね。

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