そのころ、クラスメイトたち⑤

 慧たちが藍音と和解してから一か月。

 慧がシャオルーン領地の『王』になると緩く決意、ガイアルーン王国との外交にこぎつけようとしていた頃……ファルーン王国郊外にある危険地帯『オークの森』で、為朝たち『勇者二十五人衆』はせっせとレベル上げにいそしんでいた。

 そしてついに、勇者二十五人衆の一人、『紙士』山田洋治がレベル50になった。

 為朝は喜ぶ。


「よっしゃあ!! これでクラス全員がレベル50台!! はっはっは、やればできる!!」

「「「「「やったあああああ!!」」」」」


 全員大喜びである。

 ちなみに、アリアもレベル6まで上がった。


「……レベル50か。召喚者のレベルは上がりやすいと聞くが、ここまでとは。というか……上がる速度に個人差があるな」


 ちなみに、為朝はレベル68まで上がった。

 ただひたすらオークを狩る。三体ほど倒せばレベルが上がり、あとはそれを繰り返すだけ……だが、途中からレベルが上がり辛くなり、やっとこさ全員がレベル50まで上がったのだ。

 為朝は仲間を集め演説する。


「みんな、お疲れ様!! よーやく全員のレベルが50を超えた。だが……まだ足りない。『棺桶』に挑むまで、レベルを100以上にする!!」

「はいはい質問」

「なんだね、勇者二十五衆『晴天』の横川さん」

「あのさ、レベル100とかマジ? すっごく上がりづらいんだけど……」

「うむ。オークはもう終わり。次のレベリング場所はアリアさんに考えてもらっている」

「あ、ああ……一応、お前の言われた通りに探したぞ。だが……」


 アリアは言いにくそうだった。

 それもそのはず。アリアが見つけたレベリング場所は、ある意味でシャオルーンよりも最悪な場所。


「ファルーン王国が管理する平均レベル100オーバーの魔獣が住まう魔窟、魔塔ラピュリントス。魔族ですら近づかない、間違いなくこの世界最悪の場所だ……本当にそこでレベル上げをするのか?」


 それは、禁忌。

 この世界を作った女神が、強すぎて世界が崩壊しかねないと懸念し、強すぎる魔獣を閉じ込めた檻とも呼ばれるダンジョンだ。

 実際には、フォルトゥーナが使役できなかった魔獣が大量に閉じ込められており、魔獣同士で交配をしてさらに異形の魔獣が増え続けるという恐ろしい場所。女神の力で封印されているので安心ではあるが……入ろうと思えば入れるが、誰も近づかない。

 ファルーン王国が管理している場所であり、管理といっても誰かが守っているわけではない。あふれ出る魔力に怯え、魔獣も近づかないのだ。

 その話を聞き、為朝は笑った。


「はっはっは!! つまり……ゲームクリア後の隠しダンジョン!! わかりやすくいえば『序盤から挑戦できるが敵が強すぎるダンジョン』だ!! ある程度レベルが上がり、入口にいる魔獣なら時間かけて倒せる、そして経験値いっぱいもらって、少し強い状態でゲームをサクサク進めるってわけだ!!」


 ゲーム解釈。だが、これは現実である。

 アリアは何度も反対したが、為朝、そしてクラスの半数以上は行く気満々だった。


「タメトモ……本当に行くんだな?」

「ええ。アリアさん……我々は行かなきゃならんのです。自分たちの弱さを知り、こうして強くなるために戦い続けている。魔王を倒すために、力を付けなきゃいかんのですよ。そして……待っている『アイツ』を、迎えに行かなきゃな」


 為朝は遠くを見た。その方角はシャオルーン……慧のいる場所。


「慧くん……今頃、ハーレム楽しんでいるんだろうな。不自然に沸いてる温泉で混浴したり、ネコミミ少女がベッドに潜り込んだり、日本グルメを振舞って『オレつえー』を見せつけたり……」

「……?」


 為朝が何を言っているのかアリアには理解できなかった。

 ちなみに、混浴はないがネコミミ少女と一緒に寝てはいる慧。ハーレムではないが女の子はやたら多い環境にはいる。

 為朝がニヒルな笑みを浮かべていると、アリアの元に伝令が来た。


「アリア隊長、伝令です!!」

「うむ、なんだ?」

「ま、魔王四天王『銀角』のシュラガザードが討ち取られた模様!! その、シャオルーン領地にて……あ、有馬慧が討ち取ったそうです!!」

「なん、だと……」

「慧くうううううううううううん!! なにしてんじゃああああああああああ!!」


 有馬慧、シャオルーン領地で魔王四天王を倒す……そのニュースはファルーン王国にも伝わった。

 そして、もう一つ。


「そ、それと……あ、有馬慧ですが、ファルーン王国召喚者の枠から外れ、新たに『シャオルーン王国』を宣言、王として即位し、さらにガイアルーン王国との友好条約を結んだと」

「慧くうううううううううううん!! おま、異世界あるあるどころじゃねええええええええ!!」


 為朝が絶叫……そのニュースは、クラスメイトたちを驚愕させる内容だった。

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