ガイアルーン王国の勇者たちが見学した

 さて、戦いが終わり……藍音たちを村に案内した。


「おお、廃村って聞いてたけどすごいじゃん」

「まあな。というか、すごいのは住人たちだけど」


 キョロキョロする藍音。

 世美川優華さんも驚きながら言う。


「ここが、私たち『勇者』にとっての脅威……こうして見ると、そうは思えないわね」

「わわ、藍音藍音、みてみて、猫ちゃん」

「こっちはわんこ」


 城山美晴さんと桃井すももさんは、歩いていた猫と犬を抱っこした。


『ちょっと、仕事中よ。触らないで』

『ボクも急ぎなので……』

「「しゃ、喋った!?」」


 驚く二人。犬猫は二人から解放されると、そのままどこかへ消えた。

 藍音も驚く。


「犬猫って喋るんだっけ……」

「ああ、俺のスキルでちょっと強化したんだ」

「……そういや、あんたのスキルって『摸倣コピー』だっけ。どういう原理?」

「俺、スキルをコピーしてストックすることができるんだ。で、いつでも好きなスキルにチェンジして使うことができる」

「すっご!! なにそれ万能じゃん」

「自分で言うのもアレだけど、マジでそう思う」


 さて、家に到着。

 すると、イヌ耳少年ことレクスが出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、ご主人様。お客様ですか?」

「ああ、お茶頼む」

「はい!!」

「ほう、イヌ耳ショタ……」

「いっとくが俺の趣味じゃないぞ」


 藍音め……まあいいや。

 家に入ると、可愛いネコミミ少女も出迎えてくれた。


「にゃあ。おかえりー」

「おかえり。おそい」


 マオにルナだ。すると、二人を見た世美川優華さんが。


「か、かわいいっ!! え、え……ね、ネコミミ少女!!」

「こっちがマオ、こっちがルナ。えーっと……俺の召喚獣だ」


 ゲームっぽい言い方だが、間違っていない……よな?

 世美川優華さんはマオを抱っこすると、いきなり頬ずりした。え、こんなキャラなの?


「あ~かわいい。連れて帰りたい!! 藍音、ここを潰すのはダメ、いいわね」

「わかったわよ……ってか、あたしらだけじゃ絶対無理だって」

「「同感~!!」」


 ガイアルーン王国の勇者パーティーたち、ここを潰さないようです!! いやーよかった……ということはもしかしたら、仲間フラグか?

 レクスがティーカートを押してきたので、とりあえず全員をソファに案内する。

 お茶を飲み一息入れ……藍音は言った。


「とりあえず、あたしらは慧を敵とは思わない。むしろ、軽く村を見ただけでわかったわ。敵対より、友好関係を築いた方が、慧たちも、ガイアルーン王国にとってもいいわ」

「それを聞いて安心。正直、俺も敵対したくない」

「ええ。あたし、あんたのこと好きだしね」

「……え」

「……え? あ!? いや、その、そういう意味じゃなくて!! ど、同士としてよ!!」

「お、おお……びっくりした」


 マジで。でも、エリやミュウとは違う、趣味の合う同郷の同い年か……。


「でも、趣味の合う同郷の同い年か……って考えてるところ悪いけど、私からいい?」


 お前は読心能力者か。とツッコみたくなった。

 世美川優華さんは言う。


「藍音が言った通り、ガイアルーン王国はシャオルーン……王国でいいのかしら? シャオルーン王国とは争わない。今後は、国同士の交流を深めたいと考えています」

「考えています……って、世美川さんの一存で決めていいの?」

「ええ。私は勇者パーティーだけど、ガイアルーン王国の宰相でもあるから。それに、現国王の婚約者でありアドバイザーでもあるの。私の言うことなら彼は聞くわ」

「そ、そうなんだ……」

「有馬慧くん。あなたは、シャオルーン王国の王という扱いでいいのね?」

「…………」


 正直、お断りしたい。でも……たぶん、そうじゃないといけないんだよな。


「ああ。そうだ」

「わかった。いくつか確認したいことがあるんだけど……」

『失礼します。でしたら、私から』


 と、俺の足元に半透明の猫、金華さんの『火猫』が現れた。

 いきなり現れた猫。すると、火猫は淡く輝くと、一瞬で消えて金華さんとなる。


「き、金華さん……びっくりした」

「申し訳ございません。騒ぎが落ち着いたようですので」

「騒ぎって……魔王四天王が来たんだけど」

「天仙猫猫とケルベロスがいれば問題ないでしょう」


 言いきっちゃった……まあそうだけど。

 ってか、金華さん曰く戦いは警備隊に任せて、残りの住人はみんな普通に作業してたらしい……スケルトン族もドワーフ族もみんな頑張ってたとさ!!

 おっと、紹介しなきゃ。


「えっと、この方は金華さん。あー……この国の宰相かな」

「ご主人様……ようやく、国として認め、王の立場で発言をしてくれましたね」


 金華さん、なんか嬉しそうにほほ笑む……こんな美人のお姉さんに微笑みかけられると、こっちも照れるんだが!!


「初めまして。私はガイアルーン王国の宰相、世美川優華と申します。まずは謝罪から……我々はシャオルーン王国に対して宣戦布告とも取れる態度を」

「もう済んだことです。それより、まずは外交について……」


 難しい話始まった~!!

 藍音も「うわ。面倒くさい話始まった」みたいな顔してるし。

 マオ、ルナもいつのまにか寝てるし……俺、王だけどこういうめんどくさいのだけは、やっぱり嫌だ!!


 ◇◇◇◇◇◇


 たっぷり一時間ほど「国益」とか「外交」とかうんぬんかんぬん話をしていると、入口ドアが開いた。


「「ただいまーっ!!」」

「おう。ってか来客中だし静かにしてくれ」

「ん。って……誰?」


 エリ、ミュウが帰ってきた。

 エリは腕をグルグル回しながら藍音を見る。


「どーも。藍音だよ」

「ども……って、なにこれ、アンタめちゃくちゃ強くない?」

「勇者だしね。あんたは住人?」

「え、ええ」

「ケイ~!! いっぱい狩りしてきたの。新鮮なお肉いっぱい手に入ったから、今夜は肉パーティーだね!!」


 肉パーティー……うっぷ。爆死した黒鉄レオンを思いだしてしまう。


「す、すまんミュウ……肉はちょっと」

「えーなんで? そういや、村の入口に血が飛び散ってたけど、なんかあったの?」

「……すまん、マジで勘弁して」


 しばらく肉は食いたくない……爆死だぞ爆死。

 そういや、あいつらどこ逃げたのかな。


「ご主人様。とりあえず今日は藍音さんたちにお泊り頂くことになりました。今後、ガイアルーン王国との外交も始まりますので……」

「あ、ああ」

「え、ちょ!! ケイ、この子なに!? かっわいいいいいい!!」

「ふにゃ……うるさいぞ」


 あ、エリがルナに気付いた。マオと並んで寝ていたし、そりゃ気付くよな。

 とりあえず……今日はもう疲れた。

 ガイアルーン王国とはケリ付いたし、いろいろ知りたいこともあるけど、今日はゆっくり休ませてもらおうかな。

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