ガイアルーン王国の勇者たちがやって来た②
さて、来客とは一体……そう思いつつ、俺は一人で村の入口へ。
入口にいたのは四人の女の子だ。ドラゴニュート族、蟲族の混成による警備隊が構えているが、攻め合ぐねているのか戦いは起きていない。
とりあえず……日本人、だよな。
俺は警備隊を下がらせて前に出た。
「えっと……どうも」
「どーも。あんた、ファルーン王国が召喚した有馬慧よね」
俺のこと知ってる。
まあ、ファルーン王国が召喚した召喚者ってのはバレてると考えた方がよさそうだ。日本じゃまずありえないが……有名人、なのかな? なんだろうこの微妙な気持ち。
「まあ、そうだけど。で、あんたらは?」
「ガイアルーン王国『勇者』の久寿川藍音。こっちは仲間の世美川優華、城山美晴、桃井すももよ」
異世界あるある……自己紹介するのはいいが、一度で名前覚えられません。クラスメイトの名前すら俺は曖昧なのに、一気に言われてわかるかボケ……とは言わない。
とりあえず会釈。
「で、何か用事か?」
「そこの蟲族。ついでにそっちの……トカゲ? とりあえず潰しに来たわ。そのカッコいいインセクトアーマー着こんだような魔族、以前取り逃がしちゃったのよ」
「……このカッコよさがわかるとはな」
「え、あんたも?」
「そりゃそうだろ。外殻剥いで全身鎧にしてみたい気持ちはあったぞ」
「マジで!! あたしもあたしも!! いやー話わかるじゃん!!」
「ふっふっふ……俺は夢をかなえたけどな」
「えええええ!? ま、まさか……鎧作ったの!?」
「そうじゃない。けどまあ、そういうモンかな?」
「ちょ、もったいぶらないでよ!!」
くくく、俺が『変身』できることを知ったら、この子は羨ましがるな……って、なんか周りが少し白けている気がする。
「藍音、藍音」
「なによ。今いいところなんだから邪魔しないでよ」
「あのね……今はそんな場合じゃないでしょ」
「あ」
魔法使いっぽい女の子に肩を叩かれ……藍音だっけ。その子はハッとした。
そして咳払いし、俺に指を突きつける。
「えーっと……ファルーン王国の召喚者、有馬慧。あんたに選択肢をあげる。一つは、ガイアルーン王国の庇護に入りこの村をガイアルーン王国に受け渡すか、もう一つは抵抗するか」
「ちょっと藍音。庇護なんて話、なかったでしょ」
「あたしが決めた。こいつ悪い奴じゃない!! ニチアサ好きなら友人よ!!」
「あのね……あなたがニチアサとかいうの見てたの、六歳から八歳までの二年間だけでしょ。しかも女の子なのにそんな変身ヒーローにハマって」
「それ差別!! 女でも好きなの!!」
なんか揉めてるな……ってか、庇護?
「あの、俺ファルーン王国の勇者なんだけど」
「あんた、なんで自分がここにいるかちゃんと考えたことある?」
「え? そりゃ、魔王倒すまでここで大人しくしてろって」
「そんなの嘘に決まってんじゃん。魔王なんて倒せるわけないし、四天王ですら戦いにならないのよ?」
「……え」
「あんたがここにいるのは、ファルーン王国がシャオルーン領地を手に入れるための先兵みたいなモンよ。ある程度開拓進めばきっと、ファルーン王国が軍勢率いてここを占領するわよ。で、あんたは用済みってことで殺される」
「……マジ?」
「マジ。まあ、そういうことで……あたしらはそれを阻止するために来たの。で、命令ではあんたを始末し、魔族も始末する予定だけど……あんたは残してもいい」
「…………」
「考える時間欲しいなら五分あげる。はいスタート」
うーん……やっぱ裏があったあのか。
ファルーン王国……思った以上にやばそう。まあ、藍音の考えだけ鵜吞みにするのはアレだけど。
魔王、倒せないのかな。
レベル30くらいとかいう話だったけど……やっぱ嘘だったのか?
考えていると、いつの間にかケルベロスが背後に立つ。
「主、二秒あれば首を狩れるがどうする? あの傲慢な女の首を刈り取り、仲間の女三人に見せつけ戦意を削ぐという方法を提案する」
怖いわ。ってかそんなことしたらガイアルーン王国敵に回す。
「ケルベロス。あの四人強い?」
「……奴らが命を賭けた特攻をして、俺の尻尾の毛を一本斬る程度だな」
お前強すぎ。というか、あっちはこっちの戦力を見て何も感じていないのかな……というか、頭良さそうな女の子いるけど、こっちのレベルとか『鑑定』しないのかね。
せっかくだ。藍音を見てみるか。
◇◇◇◇◇◇
〇久寿川藍音 16歳 女
〇スキル『勇者』 レベル128
〇使用可能スキル
・神器解放 ・聖魔法 ・聖凱武装
◇◇◇◇◇◇
おお、強いな。
ケルベロスの半分くらい。人間でこれだけ強いの見るの初めてだ。
聖凱武装ってなんだろ? 一応コピーして……お?
◇◇◇◇◇◇
〇
〇スキル『
・現在『
〇パッシブスキル
・勇者の闘気 ・勇者の守護 ・勇者の極意
〇使用可能スキル
・神器解放 ・聖魔法 ・聖凱武装 ・聖召喚
〇スキルストック
・蹴闘士・女神の化身(クロ)・女神の化身(シロ)・精霊導師
・骸骨士・海人・蟲闘士・竜闘士・聖女
◇◇◇◇◇◇
おおお!! レオンからコピーした『勇者』が更新された!!
しかも、高レベルのスキルをコピーしたおかげなのか、俺のスキルも一気にレベル上がったぞ!! 一気に30くらい上がるなんて……やっぱ経験値おいしいのかな。
「あとさんぷーん」
あ、時間ちゃんと計ってた。
聖凱武装ってなんだろ? なんかカッコいい響き。聖召喚って何だ?
◇◇◇◇◇◇
〇聖召喚
・聖者エクセレス ・拳者バルトロ ・覇者ダイダロス
・魔者クロイトゥーネ ・知者トリスメギストス ・剣者ヤマト
◇◇◇◇◇◇
あーなるほど。偉人的な人を召喚するのか……まあ保留かな。
異世界あるある。登場人物は増やせばいいってモンじゃない。
「あといっぷーん」
さて、とりあえず答えは決まったな。
俺はケルベロス、そしていつの間にか俺の背後にいた天仙猫猫を押さえて前に出る。
そして、久寿川藍音が手をパンと叩いた。
「はい。時間切れ……で、どうする?」
「悪いけど、ここは俺の村なんでね。明け渡すとか無理だな」
「そ。あんたとは戦いたくないけど……周りの魔族ともども、始末してやるわ!!」
「ニチアサ好きならわかるだろ? そのセリフ……悪役そのものだ!!」
「ッ!? し、しまっ……」
「藍音」
「わ、わかってるって。有馬慧!! 勇者として、あんたをぶった切る!!」
「やってみろ!!」
◇◇◇◇◇◇
〇
〇スキル『
・現在『
〇パッシブスキル
・昆虫使役
〇使用可能スキル
・蟲魔法 ・蟲殻武装
〇スキルストック
・蹴闘士・女神の化身(クロ)・女神の化身(シロ)
・精霊導師・勇者・聖女・骸骨士・海人
◇◇◇◇◇◇
俺はスキルを『蟲闘士』に変更。
そして、その場で変身ポーズを決め、腕を交差して叫んだ。
「変身!!」
エメラルドグリーンの闘気が俺を包み、インセクトアーマーが装着された!!
「な、なにぃぃぃぃぃ!? 嘘、変身!? やだカッコいいいいいいいいい!!」
「はっはっはっはっは!! どうだ、すげーだろ!!」
「う、うぅぅぅぅ……!!」
興奮する俺、そして藍音。
周りが微妙に白けている中、俺と藍音の戦いが始まろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます