ガイアルーン王国にて③
「じゃ行くわよ!!」
ガイアルーン王国にて。
四人は戦闘スタイルだ。
『勇者』久寿川藍音は、ガイアルーン王国で発掘される『ガイアメタル』で作られた山吹色の鎧『ガイアメイル』にマント、そして同じガイアメタルで作られた専用大剣『ガイアバスターエッジ』を背負っている。ちなみに装備の名前は藍音が命名。
『賢者』世美川優華は、山吹色のローブに杖というシンプルな装いだ。魔法使いである優華は実戦的な装備で、余計な物を一切省くタイプのようだ。
『暗殺者』城山美晴は、山吹色のフード付きコートを装備、腰にはナイフが差してある。暗殺者なのに山吹色のコートは目立つのだが、藍音が『仲間で揃えたい』と我儘を言うので今のスタイルになった……ちなみに美晴は色とか気にしていない。
『武術家』桃井すももは、山吹色のジャケットに短パン、グラブにレガースを装備。四人の中で一番小柄だが、スキルの恩恵で身体能力は高い。こちらも余計な装備を付けず、身軽さ一番のようだ。
四人はこれから『シャオルーン領地』へ向かう。
ファルーン王国の勇者、有馬慧によるシャオルーン領地の不法占拠を止めるという名目だが……実際には、有馬慧の整備した村を奪い取り、そのままガイアルーン王国のシャオルーン領地探索の前線基地とする予定である。
藍音は優華に言う。
「今更だけどさ、けっこうずるいってか、卑怯よねー……ファルーン王国が送り込んだ勇者、何も知らないんでしょ?」
「情報では、勇者同士の揉め事が原因で、魔王を倒すまでシャオルーン領地にいて欲しい、って王族に言われたらしいわ」
「はぁぁ? 魔王を倒すって……もう何百年も倒してないし、四天王すらまともに戦ってない膠着状態なのに?」
「ええ。予想だけど……その有馬慧って子、普通のスキル持ちじゃないのかもね。ファルーン王国だってシャオルーン領地が高レベル魔獣の巣になってることや、魔界に近いこと知ってるはずだもの……」
考え込む優華。すると美晴が言う。
「でもでもさ、普通じゃないって言っても、召喚されたばっかじゃん? レベルも20くらいじゃね?」
「……そうね。まだ召喚されて一年経過していない子だし……いくら召喚者がこの世界の人間よりレベルが上がるのが高いと言っても、レベル80になる辺りで上がりにくくなるわ。いくらシャオルーン領地の魔獣が相手でも、レベル80を超えることはないと思うけど」
考える優華。すると、すももが優華のお尻をぺしっと叩く。
「きゃっ!?」
「優華、考えすぎはよくない」
「す、すもも……もう、いきなりお尻叩かないでよ」
「あはは。優華の尻は今日もモッチモチね」
藍音がケラケラ笑い、優華が赤くなる、美晴がにししと笑い、すももがウンウン頷く。
ガイアルーン王国勇者パーティーは、いつも通りだった。
そんな時だった……四人の前に、ファルーン王国勇者パーティーが立ちふさがる。
黒鉄レオンは、四人を前に頷いた。
「行くんだな、有馬慧のところに。オレがぶるへえぇぁぁぁっ!?」
次の瞬間、藍音の右ストレートがレオンの顔面に直撃、レオンは地面を何度も転がり、近くの木に激突した。
「あ、優華おやつ持った? まだなら買っていかない?」
「ちゃんと用意したわよ。あなたの好きな『異世界ポップコーン』……この世界のトウモロコシで作ったあなたの自信作」
「んふふ。今じゃ国民食だもんね~」
「れ、レオンくん!!」
「テメェら何しやがっぶれうっぇ!?」
すもものハイキックが金治の脇腹に命中。アバラがベキベキ砕ける音が聞こえ、金治は真っ青になり蹲る。
そして、武器を取ろうとした相川セイラだが、気付いた時には両手首が切断されていた。それに気づくと真っ青になり、足元に落ちていた手首を見てガタガタ震え気を失う。
美晴がナイフをクルクル回転させ鞘に戻すと、藍音たち四人は何事もなかったように歩き出していた。
夢見レイナは、四人に必死で回復魔法をかけている。
ラーズハハートはレオンたちを見て、どこかつまらなそうにしていた。
そして……回復したレオンが立ち上がり、叫ぶ。
「ま、まって、まってくれ……!!」
「あ?」
藍音は不機嫌丸出しでレオンを睨む。その顔つきにレオンがビクッと震えるが、負けじと言う。
「あ、有馬慧の……魔王のところに行くんだろ!! お、オレたちも行く!!」
「勝手に行けば」
藍音はそれだけ言い、また歩き出す。
だが、レオンはまだ叫ぶ。
「ま、待ってくれ!! 有馬慧のことなら知ってる!! オレたちと同じ召喚者で、あいつのスキルは『
ズドン!! と、黒鉄レオンの真上から『ガイアバスターエエッジ』が落ちてきた。
眼前。あと少しズレていたら、脳天から大剣が突き刺さっていただろう。
ジョロジョロジョロ……と、レオンは盛大に漏らし、へたり込む。
「あのさ、有馬慧ってあんたのクラスメイトよね? 今は違くても、一度は仲間だったんでしょ?」
「へ、あ」
「その仲間のスキルをベラベラ話して楽しい? レベル上げするわけでもなく、飲んだくれているゴミクソ野郎……あたしたちに寄生してどうするつもり? 魔王? あたしから見ればあんた、勇者じゃなくてその辺を歩いてるゴブリン以下だわ」
「な……」
「これが最後。あたしらに関わんな。次、顔見せたら……殺す」
「ひっ……」
ジョロジョロジョロ……ブチチッ。と、レオンの尻から聞こえたくない音が聞こえてきた。
◇◇◇◇◇◇
レオンたちを無視し、藍音たちは歩いていた。
そんな藍音に、優華は言う。
「大丈夫?」
「ひっさびさにムカついたわ。あたしさー、魔族より中途半端な強さでイキる召喚者のがウザいと思う」
「そうね。仮に仲間……いえ、同行を許したところで、私たちより強い勇者がいれば、速攻で乗り換えそうな人ね」
「そーね。ま、帰る場所もなさそうだし、あそこまで脅せばガイアルーンにも近づかないでしょ。仲間のエルフと一緒にエイルーンに戻るか、アグニルーン辺りに泣きつくかもね」
「ええ……エイルーンの勇者は平均レベル80くらい、アグニルーンもそのくらいだったかしら? まあ、復讐に来てもあなたなら返り討ちにできるわよね」
「まーね」
四人は、レオンのことを忘れて談笑しながら歩き出した。
だが……優華は、一つだけ気になっていた。
「得体の知れないバケモノ……まあ、低レベル勇者の戯言ね」
シャオルーン領地まで、もう少し。
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