蟲殻武装

 さて!! とりあえず今できることをやろうか!!

 そう思い、マオと一緒に村を歩いていると、デカい斧を担いだギルティアスさんと、その弟でヘラクレスオオカブト種のヘグドさんと出会った。

 

「これはこれは、我らが王」

「どうも。ギルティアスさん、ヘグドさん」

「お疲れ様です。お散歩ですかな?」


 相変わらずかっけえな。

 昆虫型アーマーを着こんだような姿は「かっけえ」という言葉でしか表現できん。

 しかも「ヘラクレスオオカブト種」とか「コーカサスオオカブト種」とかめちゃくちゃカッコいい振り分け方してるし。

 あ、そうだ。


「あの、ギルティアスさん。ちょっと失礼」


 俺は自分で「スキルを使う」と思いこむと……見えた。


 ◇◇◇◇◇◇

 〇ギルティアス 87歳 オス

 〇スキル『蟲闘士』 レベル46

 〇使用可能スキル

 ・蟲魔法 ・蟲闘気 ・第二形態変化

 ◇◇◇◇◇◇


「…………」

「王よ、何か……?」


 え、なにこれ……だ、第二形態ってマジ?

 蟲闘士。これ、スキルなのか?

 弟のヘグドさんを見ると、同じスキルがあった。

 とりあえずコピーしてストックしておく。二人はパトロール最中みたいだし、ここで別れた。

 さて、マオと二人で村の中央広場へ。ベンチがあったので座って確認する。


 ◇◇◇◇◇◇

 〇有馬ありま けい

 〇スキル『模倣コピー』 レベル29

 ・現在『骸骨士スカルメイジ』 レベル2

 〇パッシブスキル

 ・骨強化 

 〇使用可能スキル

 ・骨魔法・凶骨化・骨召喚

 〇スキルストック

 ・蹴闘士・女神の化身(クロ)・女神の化身(シロ)

 ・精霊導師・勇者・聖女

 ◇◇◇◇◇◇


 そういやスケルトン族のキスティスさんからコピーしてそのままだった。

 スキル……正直、開拓の人材揃って来た今、あんま使わないんだよな。

 異世界あるある……スキルはもっと使って目立ちキャーキャー言われて無自覚ハーレムチート野郎になるべき、なのだろうか。

 

「にゃあー」

「おっと、悪い悪い。もうちょい待ってな」


 マオが暇なのか、俺の袖を引く。

 なんとも可愛い猫よ。よしよし、このネコミミめ。

 と、撫でている場合じゃない。

 とりあえずスキルをセットすれば、俺のレベルがプラスされて使えるスキルも増えるはず。


 ◇◇◇◇◇◇

 〇有馬ありま けい

 〇スキル『模倣コピー』 レベル30

 ・現在『蟲闘士インセクトウォリアー』 レベル46

 〇パッシブスキル

 ・昆虫使役

 〇使用可能スキル

 ・蟲魔法 ・蟲殻武装

 〇スキルストック

 ・蹴闘士・女神の化身(クロ)・女神の化身(シロ)

 ・精霊導師・勇者・聖女・骸骨士

 ◇◇◇◇◇◇


「……あれ?」


 いろいろツッコミたいことはあるが、第二形態変化が消えた。

 今更だけど、俺がスキルをコピーしてセットすると、パッシブスキルとか追加されるんだよな。


「にゃあ、もふもふー」

「ん?」


 と、いつの間にか足元にシロがいた。そして、マオに撫でられている。


『やあケイ。何か気になることでもあるのかな?』

「シロ、いいタイミング……まあタイミング良すぎるけど。俺がスキルをセットすると、元の持ち主とは違うスキルが出る時あるんだが、なんだこれ?」

『それは簡単。悪女神フォルトゥーナが創造した『摸倣コピー』が、きみに付与されたことで変質してるのさ。まあ、ちょっと外的要因もあるけど……』

「……変質?」

『ああ。そもそもケイは人間で、第二形態に変形なんてできないでしょ? 今までの『摸倣』だったらスキルは変化せずにそのままで、もしきみが第二形態変化を使えば、肉体が無理やりスキルの力で変形して、そのまま死んじゃうよ』

「こわっ!? ま、マジで」

『うん。だから少しだけいじって……まあこの辺はいいや。とにかく、きみに仕えないスキルは別のスキルに変質するようになってる。安心していいよ』

「おお……そりゃありがたいな。あと、蟲族の皆さんって、みんなスキル持ってんのか?」


 これは疑問。スケルトン族のキスティスさんは『骸骨士』だけど、他のスケルトン族の皆さんを確認したらみんな『骸骨士』を持っていた。

 ドラゴニュート族は確認していないけど、蟲族の皆さんを確認してみたらみんな『蟲闘士』だった。

 シロはマオに撫でられながら言う。


『あれはスキルというか『特性』みたいなものだね。本来の『摸倣』ならスキルしかコピーできないけど、今言ったように変質してるから、種族の特性そのものをコピーして、さらにケイが使いやすいようにスキルが変質してるんだ。悪女神フォルトゥーナも知らないことだよ』

「……それ、とんでもないことなんじゃ」


 今更だが、俺が骨魔法使ったりすることって、スケルトン族の皆さんからしたらあり得ないことだよな……大丈夫かな。

 ってか、それこそチートみたいだな……うーん。


『ま、気にしなくていいよ。これからもいろんな種族の特性……変質したスキルをコピーして、このシャオルーン領地のために使うといい』

「あ、わんわんー」


 マオに撫でられていたシロは立ち上がり、スタスタ歩き去った。

 うーん、説明だけのために来たのか。ありがたい。


「よし、細かいことはいいや。とりあえず、俺にもできること……」


 ◇◇◇◇◇◇

 〇蟲殻武装

 ・インセクトアーマーを身に纏い防御力アップ

 ◇◇◇◇◇◇


「…………これってまさか」


 俺はゴクリと唾を飲み込む。

 これって『あれ』だよな。や、やってみようかな……ドキドキ。

 俺は立ち上がり、両手を交差させて叫んだ。


「変身!!」


 心の中で『スキル発動、蟲殻武装』と叫ぶ。

 すると、俺の身体にエメラルドグリーンの光が纏わりつき、アーマーとなって装着された。

 完全なアーマーだ。すげえ、昆虫型アーマーだ!!


「お、おおおおおおおおおおおおおおお!! すげえええええええええええ!!」

「にゃうー」


 大興奮の俺。

 変身、変身しちまった!! ニチアサ展開じゃん!!

 マオがよくわかっていない感じで見ているがどうでもいい。

 鏡、鏡が欲しい。


「ま、マオ!! かがみ、鏡あるか!?」

「かがみ……にゃあ」


 マオは手のひらから青い炎を出すと、それがブワッと広がって姿見となった。

 そこに映ったのは俺の姿。

 やべえ、かっけええええええええええええええ!!


「おおおおおおお!! すげえ、マジですげえ!! 昆虫型アーマーだ!!」


 色は緑系。黄緑やエメラルドグリーンも混ざった全身鎧。

 圧迫されているような感じはない。呼吸も普通にできるし、視界もクリア。

 生物的なモノかと思ったが、特撮ヒーローみたいな恰好だ。顔も変身ヒーローみたいだし……頭にツノ生えてるし、コーカサスオオカブトっぽい。

 武器とかあるのかな……パワーとかスピードとかも気になる。


「武器……あ、もしかして」


 ◇◇◇◇◇◇

 〇蟲魔法

 ・インセクトチョッパー ・アトラスエッジ ・ヒーターガン

 ・フルチャージ ・セカンドリベレーション ・コックローチパラダイス 

 ◇◇◇◇◇◇


 きたきたきたあああああああ!!

 くそカッケエ魔法。ちょっと試すしかないだろ!!


「行くぜ、『インセクトチョッパー』!!」


 右手を突き出すと、腕の鎧部分が変化して巨大な鋏みたいになった。

 おおおおお、マジで武器になった!! 蟲魔法、この鎧専用の武器じゃん!!


「にゃあ、ご主人さま。遊びに行こうよー」

「ん、ああちょい待って。これすごい。俺今日から蟲闘士メインで戦うわ!!」


 マオは興味ないのかな……俺、こんなカッコよくなったんだけど。

 やばい……今とっても戦いたい。

 すると、木の上から何かが落ちてきた。


「ご主人、何やら楽しそうじゃの」

「あ、にゃんにゃん」

「天仙猫猫……お前、ずっと見てた?」

「うむ。わらわはご主人の護衛だからの、あっちに犬もいるぞ」


 げっ……ケルベロスが建物の陰で見ている。

 ってかここ中央広場じゃん。めちゃくちゃ目立つに決まってる。

 天仙猫猫は俺に顔を近づける。


「ふむ、蟲の鎧か……なかなか面白い魔法じゃの」

「なあなあ。俺、今どのくらい強い?」

「そうじゃな……この子と同程度くらいかの」

「にゃ」


 マオと同じレベル……まあこの子、勇者レベル80くらいあるんだよな。かなり強いんだが、けっこう複雑な気分。

 

「ご主人、力を試したそうな顔をしておるの。フフフ、わらわで良ければ付き合うかの?」

「お願いします!!」

「待て!! 猫め……その役目、オレが請け負おう!!」

「お願いします!!」

「にゃあ。あそびたいよー」


 こうして俺は、ニチアサヒーローが変身したような姿に興奮……これをメイン戦闘方法とすべく、ケルベロスや天仙猫猫に鍛えてもらうことになったのだった。

 そして、あまりの興奮に俺は家に帰り、マオと一緒にベッドに入った時に気付いた。


「───……って!! 村のためにスキル使うって決めたのに何もしてねえ!!」

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