物資到着!
さて、久しぶりのフォルテはニコニコで、揉み手しながら俺に言う。
「いやぁ~、ケイさんのおかげで大儲け!! 魔獣の骨や『核』がものすご~く高値で売れまして。もうウッハウハですわ、ウッハウハ」
「お前そんなキャラだっけ……急激に胡散臭い商人っぽくなったな」
「あっはっは。ささ、物資を山ほど持って来たので、どうぞお収めください!!」
フォルテの愛牛であるエルダーバイソンが、コンテナを大量に運んで持って来た。
コンテナの数はかなりある。ひーふーみー……おい、コンテナだけで二十超えてるぞ。
「数すげぇな……あの牛だけで運ぶの大変じゃないか?」
「まあ、スキルの『風』で浮かせてますんで。精霊さんに感謝やね」
「あー精霊魔法か。スキルってそういう使い方するべきだよな……破壊の嵐とか望んでないぞ俺」
「はい?」
「いやこっちの話。って……あれ?」
フォルテの後ろに、見覚えのある人がいた。
俺と目が合うと、ニコニコしながら近づいて来る。
綺麗な身なり、脂ぎった顔、でっぷりしたお腹に、ゴテゴテした指輪……めちゃくちゃ悪徳商人っぽく、主人公に『ざまあ』されそうな見た目のおっさんだ。
「ぐふふ、どうもケイ様。ごきげんよう」
「えーと、デップリッチさん」
デップリッチ……そう、奴隷商人のデップリッチさんだ。
異世界あるあるでは主人公たちに破滅させられて最終的には魔獣化して殺されそうな運命を背負ってそうだけど、この人めちゃくちゃいい人なんだよ……私財投げうって奴隷たちを買って保護してるし、子供たちにもめちゃくちゃ好かれてるんだ。
「あの、今日は何か?」
「いえ。子供たちに服や勉強道具、それとお菓子などをお持ちしまして。申し訳ございません、勝手な真似と知りつつ……」
「…………」
ああもう、人は見かけじゃねぇなもう!!
俺は猫のハヤテに頼み、作業中の子供たちをみんな呼んでもらった。
「おじちゃん!!」「デップリッチさん!!」「おじちゃーん!!」
「おお、みんな元気にしていたか? さ、お菓子を持って来たぞ」
「「「「「わーいっ!!」」」」」
いい人すぎるだろ……この人、めちゃくちゃ守りたくなる。
すると、フォルテが言う。
「あーそうだ。何か新しい素材などあればお引き取りしますよ?」
「お前、この光景見て何も感じないのかよ……めちゃくちゃいい光景だぞ」
「はっはっは。確かに、子供は可愛いですねぇ」
「お前が言うとなんか犯罪臭い」
「ええ!?」
とりあえず、フォルテに猫たちが狩った魔獣の骨を卸す。
コンテナいっぱいになった骨を見てフォルテはニコニコだ。
「いや~、シャオルーン領地に住む魔獣たちはレベルも高くて手が出ないんですわ。一般人や冒険者じゃ手が出ないし」
「手が出ない?」
「ええ。基本的に、シャオルーンは『魔境』ですわ。冒険者たちはファルーンを拠点に、ガイアルーン、エイルーン、アグニルーンの領地にあるダンジョンや平原などの魔獣狩りをしますね」
「へぇ……シャオルーンの魔獣ってヤバいのか?」
「そりゃもう。正直、私でもここまで来るのは命懸けですね。護衛のコジローくんには感謝ですわ」
すると、フォルテの足元にスッと黒猫のコジローが現れた。
そうそう、フォルテの護衛頼んだっけ。
「お? コジロー、レベル上がってるぞ」
『強者との戦いがあった故……』
猫たちのレベルは平均で7~8くらいだが、コジローは12に上がっていた。
ちなみに、猫たちもレベルが上がるのは最近知った。
基本的に、この世界の生物は全てレベルが存在する。一般人がレベル1で、冒険者が2~5くらい。現地人最強がレベル8だっけ?
魔獣も平均で2~5くらいで、シャオルーンの魔獣は平均して8~12くらい。
魔王軍の平均レベルが20前後、魔王はレベル35って話だけど……多分、もっと高いと思う。だってアグニルーンの勇者が60以上あったしな。
レベルは確かに高いけど、魔王軍は数が桁違いに多いらしい。平均レベル20の魔獣でも、数千、数万いればかなり脅威となるそうだ。
「まあ、魔王討伐は為朝や他の勇者たちにお任せだけどな」
「はい? いきなり何です?」
「いや、脳内思考に対する答えというか……まあいいや」
とりあえず、大量の物資が来た。
中身を確認して、開拓の役に立てるとするか!!
◇◇◇◇◇◇
大量の物資を確認するんだけど……これがまた面倒くさかった。
「おいケイ!! こっちの酒倉庫に運んでおくぞ!!」
「え、倉庫なんてありましたっけ?」
「ケイー、これ木の苗だよ!! ブドウの木!!」
「えーと、マイケルにどこ運べばいいか聞いてくれ!!」
「ケイ、野菜や果物もあるぞ!!」
「それも倉庫? 倉庫ってどのくらいあるんだ?」
「着替えもある!! お、なんだこれ? 農具か?」
「えっと……」
「主!! こちらの武器ですが我らドラゴニュート族専用の『竜牙槍』です!! あの商人、こんなものを手に入れるとは……ふっ、やりおる」
「槍なだけにやりおる、なんちゃって」
「あら、これは本ですね……しかも大量に。あのマイケルさん。図書館などあれば私どもで管理しますが」
『図書館。ふむ……娯楽設備も必要ですな』
『にゃあー』『わん!!』『にゃうー』
えー……もう、住人たちほぼ総出で物資を漁っています。
ってか倉庫なんてあったのか? 開拓や建築のペース早くて俺も把握していない。
しかも、物資は全部俺の所有物ってことになってるから、何をどうすればいいのかみんなが俺に聞いて来るし……もうマジ大変。
農具、苗、種とか医薬品とか。あとは肉や野菜、酒樽やよくわからん道具、毛布や枕とか……もう細かすぎて俺もわからん。あとやり取りの途中でつまらんギャグ吐いたやつ誰だ。
俺はコンテナから少し離れてみんなを見た。
「えーと、ドワーフにドラゴニュート族、スケルトン族、ハーフの子供たち、そしてエリやミュウ、俺の呼んだ召喚獣たちに、犬猫たち」
増えたなあ……いやほんとに。
というか、まだ増えるんだよな。
「…………こうしてみると、もっとこう、頭脳派というか、秘書というか、こういう数管理する人が欲しい。マイケルは頭いいけど犬だし……エリ、ミュウは無理っぽい。うー……」
俺、成績は中の上くらい。しかも数学は苦手。
こういう管理とか無理。マジで頭いい人が欲しい。
「ああ、異世界あるある……こういうテンプレは好きじゃないが、頭脳派の種族とか来ねぇかなあ!!」
「何叫んでんの? ね、お菓子食べていい?」
「ん~飴玉おいしっ、ケイも食べよ? エリ、そっちのチョコちょーだい」
「……気楽なお前らが羨ましい」
すると、俺の足元にいつの間にかクロがいた。
俺の足に身体を擦り付けながら言う。
『にゃ……お困りのようね』
「クロ~!! お前、頭よさそうだよな? 物資管理する猫になってくれ!!」
『イヤよ。めんどくさい……でも、代わりならいるわよん』
「誰!?」
『猫召喚に
「金華猫……そういえばいたな」
スキルを『女神の眷属(クロ)』に変更!!
「ステータスオープン!!」
「は? 何言ってんの?」
「ケイ、だいじょぶー?」
うっさい。どうせ脳内ウィンドウだけど言いたかったんだよ。
◇◇◇◇◇◇
〇猫召喚
・猫又・金華猫・猫娘
・猫将軍・ケットシー・天仙猫猫
◇◇◇◇◇◇
あったあった。金華猫!!
さてさて、どんな猫が召喚されるのか。
「召喚、金華猫!!」
すると、足元に魔法陣が浮かび上がる。
ふわりと風が舞い、そこに現れたのは。
「召喚に応じて参上しました。金華猫と申します」
猫……じゃない。
緑がかった長い黒髪をポニーテールにして、縁なし眼鏡を掛けた『お姉さん』だった。
黒いネコミミ、そして尻尾が伸びている。
着ている服はなんか……身体にフィットするような全身タイツみたいなので、その上にチャイナドレスみたいなのを着てる。胸元とか開いてるから何かエロい。
すっげぇ真面目そう……身長も高いし、キリッとしてる。
「あのー……金華猫?」
「
「じゃあ金華さん……あのー、あれを見てどう思う?」
俺は、物資に群がる住人たちを指差す。
「……管理が必要ですね」
「うんうん。今はまだだけど、そのうち喧嘩とかになるかも……」
「ご主人様のお望みは『管理業務』ですか?」
「そうそれ!! 俺そーいうの全然わからんから、任せていい?」
「わかりました」
すると、金華猫は忍術を使う時みたいな印を組む……そして、金色に輝く半透明の『猫』を大量に召喚。猫たちが一斉に物資に向かって走り出した。
いきなりの猫に驚く住人たち。そして、金華さんが飛び、物資のあるコンテナの上に降り立つ。
「シャオルーンに住む皆さま、初めまして。私は金華猫……ご主人様の命により、この村の物資管理を任されました。これより、全ての物資は私が管理し、適切な配分をします」
す、すげえ……みんな黙っちゃった。黙ったというか驚いて声が出ないだけみたいだが。
金華さんは眼鏡をクイッと上げ、マイケルを見た。
「まず、住人の数、種族、物資の詳細などを確認しましょう。そちらの方……お手伝いをお願い致します」
『か、かしこまりました』
マイケルはペコっと頭を下げ、落ちていた物資の明細書を咥え金華さんに渡すのだった。
頭脳派だけど、なんかちょっと怖い……とりあえず、様子見しようかな。
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