スケルトンのスキル

「「……え、誰?」」

「えっと……先ほどお会いしたキスティスです。申し訳ございません、日中はこのような姿で……」


 早朝、受肉したキスティスさんを連れ、エリとミュウに会いに行った。

 エリはミュウの商店(仮)にいた。キスティスさんが驚かせた謝罪をしたいと言って連れてったのだが……まあ驚くわな。

 だってキスティスさん、人骨モードの時と違って、日中は『麗しの貴族令嬢』っぽいし。

 綺麗なプラチナヘア、スタイル抜群のボディ、どこか儚げな表情……うう、さっきモロに見た裸を思い出しそうになる。


「え、え……うそ」

「簡潔に言う。スケルトン族、日中は受肉する」

「は?」


 エリは「は?」って感じの顔で俺を見た。

 キスティスさんは恥ずかしそうに頬を染める。


「申し訳ございません。その……ヒトの美醜には疎くて。お見苦しい姿で申し訳ございません」

「いやいやいや……うそ、めっちゃ美少女じゃん!! ぐぬぬ……エリはともかく、アタシのライバルになりそうなデカさね……くぅぅ」


 おいミュウ、胸の大きさではお前の負けだ。

 じゃなくて!! 美醜に疎いとか……めちゃくちゃ美少女だぞ。

 エリは何となく不機嫌になり、咳ばらいをしてキスティスさんに言う。


「えーっと……とにかく、スケルトン族は日中は人間ね。もう受け入れるわ」

「はい。その……昨夜は、驚かせて申し訳ございませんでした」

「別にいいわよ。それと、あたしも大げさに驚き過ぎたわ……その、ごめんなさい」


 二人は握手。これで一件落着かな。

 さて、スケルトン族総勢十名の働き口だが、アースタイタンと一緒に農業をしてもらうことになった。

 今は猫たちがハーフの子供たちとやっているが、やはり猫では無理がある。

 なので、スケルトン族の皆さんに日中は畑仕事をしてもらう。

 場所を変え、畑に移動……そこでは子供たちが、猫と一緒に畑の雑草を抜いていた。


「あ、ご主人様。と……スケルトン族の皆さん」

「カイウス、ちょっといいか?」


 頭に狼耳の生えた狼族のハーフ、カイウス。

 年齢は十二歳。レクスの次に年長の少年だ。今は子供たちの副リーダーとして農業を担当している。

 俺はカイウスの頭を撫でつつ言う。


「今日から猫たちの代わりに、スケルトン族の皆さんが畑仕事をすることになった。お前が先輩として、いろいろ教えてやってくれ」

「お、おれがですか?」

「ああ。頼むぞ」

「あの、カイウス様、よろしくお願いいたします」

「え、えっと……」


 カイウス、キスティスさんの笑顔に真っ赤になった……うんうん、純情だねぇ。

 ちなみにスケルトン族の皆さん。元が骨なのか『疲労』を感じないそうだ。なので、畑を耕しはじめると、数年はそのまま耕し続けられるらしい……骨だけってすげぇな。

 もちろん、そんなブラック企業以上の労働はさせないが。


「えーっと……ドワーフの皆さんと麦畑、あとブドウ畑、野菜畑と、果樹園の手入れもあるのでかなり大変ですけど……」

「……えっと、俺もそのへんよくわからん。任せていいか?」

「はい!! 奴隷だったころは畑仕事やってましたし、デップリッチおじさんのところでは勉強もしていましたので」

「そ、そうか……正直、俺より頼りになるな」


 というわけで……スケルトン族の皆さんはカイウスの元、農業をお任せした。

 あとはカイウスに任せて、俺は別なところへ行こうとした時だった。


「あの、ケイ様」

「あ、はい」

「……本当に感謝します。何かお礼ができればいいのですが」

「いやいや、気にしないでください。あ、そうだ」


 と、俺はキスティスさんを見た。


 ◇◇◇◇◇◇

 〇キスティス 16歳 女性

 〇スキル『骸骨士』 レベル2

 〇使用可能スキル

 ・骨魔法

 ◇◇◇◇◇◇


「…………」

「ケイ様?」

「あー……あの、スキルってありますよね? それ、コピーしていいですか?」

「えっと、よくわかりませんが……どうぞ」


 すっっっげぇ迷ったが、一応『摸倣コピー』しておく。

 骸骨士って何だよ。スケルトン族の固有スキルか?

 なんか使ったら後悔しそうな気がする。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、エリとミュウは畑仕事をしていた猫たちと狩りに出かけた。

 村は相変わらず開拓が続いてる。

 ぶっちゃけ、俺の出番がない。何かしようとしても『主、このようなことは私どもが』って感じで止められてしまうのだ。

 ってわけで、現在俺は一人で、自室にいた。


「さて、確認するか……ちょっと怖いが」


 ◇◇◇◇◇◇

 〇有馬ありま けい

 〇スキル『模倣コピー』 レベル29

 ・現在『骸骨士スカルメイジ』 レベル2

 〇パッシブスキル

 ・骨強化 

 〇使用可能スキル

 ・骨魔法・凶骨化・骨召喚

 〇スキルストック

 ・蹴闘士・女神の化身(クロ)・女神の化身(シロ)

 ・精霊導師・勇者・聖女

 ◇◇◇◇◇◇


「…………ちょ、ちょっと気になりすぎるな」


 パッシブスキルの『骨強化』……ああ、骨が硬くなるみたいだ。これは素直にありがたい。

 そして『骨魔法』は。


 ◇◇◇◇◇◇

 〇骨魔法

 ・ボーンエッジ・骨鎧・骨砕き

 ・バックボーンデイ・魔骨葬送・カルシウムインパクト

 ◇◇◇◇◇◇


「名前じゃよくわからん……ってかカルシウムインパクトって何だよ」


 とりあえず、いつか試してみるか。

 そして『骨召喚』……嫌な予感しかないけど確認。


 ◇◇◇◇◇◇

 〇骨召喚

 ・我沙髑髏がしゃどくろ・狂骨・水晶髑髏

 ・スカラマシュ・骸骨龍・スケルトンキング

 ◇◇◇◇◇◇


 想像通りでした……肝試しとかで呼んだら喜ばれそうだ。

 そして最後、『凶骨化』は。


 ◇◇◇◇◇◇

 〇凶骨化

 ・対象一名の骨を変化させ戦闘力を向上させる

 ・使用後二十四時間は骨の強度が下がる

 ◇◇◇◇◇◇


 スケルトン族専用のスキルかな。

 人の身体で実験したらとんでもないことになりそうだ。


「とりあえず、今度勇者が襲ってきたら骨のオンパレードで倒すのもいいな。カルシウムインパクト食らわせてやろうかな」


 ステータス画面を眺めていると、部屋のドアがノックされた。


「はいよー」

「ケイいる? お兄ちゃん来たよ。いろいろ物資持って来たから確認してっ!!」

「ああ、今行くよ」


 フォルテか。なんだか久しぶりな気がする。

 いろいろ物資、で思った。


「……はあ、この世界に炭酸とかないかな」


 炭酸飲料……コーラとまではいかないが、シュワッとした飲み物欲しい。

 異世界あるある……そんな都合よくあるわけない、かなあ。

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