ミュウとフォルテ

 さて、エルダーエルフ兄妹のフォルテ、ミュウの二人は、完成したばかりの大きい家に店を構えることになった……が、まあいきなり店と言っても買い物できるわけじゃない。

 フォルテは言う。


「まあ、しばらくは本店と二号店の往復生活ですねぇ。この村の流通が回復したら、本格的に商売を始めます。とりあえず……何か、売れそうなモンありますか?」

「売れそうなモン、って言われても」


 すると、マオがでかい『玉』を転がして遊んでいるのをフォルテが見た。


「んん? んんん? ……あの、マオちゃん」

「にゃ?」

「それ、なんですか?」

「にゃうー、これ、猫たちからもらったの」


 転がして遊んでいたのは、赤い宝石みたいなデカい玉だ。

 俺の予想からすると、これは……。


「こ、これは『魔核』じゃないですか!! しかもこんなでっかい……!! こ、これどうしたんですか!?」

「ああそれ、猫たちが狩ってきた魔獣から出たんだよ」

「か、狩る?」

「こっちにいっぱいあるぞ」


 フォルテを連れて、これまで狩った魔獣の骨などが置いてある場所へ。

 魔獣の骨、皮、鱗や甲殻など、食えない部分が山積みになっている。


「うおおおおおおおおおおお!! た、宝の山やん!! すごいやん!!」

「口調変わってるけど……やっぱそうか」


 ふっふっふ……実はこれ、捨てようとしていたのを俺が止めたのだ。なぜなら、異世界ファンタジーテンプレでは魔獣の素材は高く売れるから!! 

 まあ、捨てると言っても犬たちが穴を掘って埋めようとしていただけだが。


「ケイさん!! こ、これ譲ってくれませんか!?」

「……タダで?」

「いえいえ!! 売った金額に合わせた物資をここに送らせていただきまっす!! ほっほっほ!!」

「テンションやばいな……まあいいよ。全部持ってけ」

「やったあああああ!!」


 フォルテのテンションがやばい。なんか元気な関西人みたい。

 さっそくフォルテはエルダーバイソンの牛くんに素材を運ぶ。せっかくなので運搬用のコンテナを貸してやり、素材を全部丁寧に入れた。

 そして、フォルテは指を鳴らすと、コンテナが浮き牛くんの背中に乗る。


「おお、魔法かあ……あ、そうだ。フォルテ、頼んでいい?」

「ハイハイなんでしょう。なんなりと」

「スキル、コピーしていい?」

「……はい?」


 ◇◇◇◇◇◇

 〇フォルテアイズ・ラスラメンデ 658歳 男

 〇スキル『精霊導師』 レベル11

 〇使用可能スキル

 ・精霊魔法・精霊召喚

 ◇◇◇◇◇◇


 おお、精霊導師……なんかすごそうなスキル。

 歳は658歳。やっぱエルフって長寿なんだな。

 スキルレベルは11か。この世界では多い方だ。というか、歳を重ねてもレベル11なのかあ。

 ではさっそくコピーしよう。


 ◇◇◇◇◇◇

 〇有馬ありま けい

 〇スキル『模倣コピー』 レベル24

 ・現在『精霊導師フェアリーワイズマン』 レベル11

 〇パッシブスキル

 ・精霊視認 ・精霊言語

 〇使用可能スキル

 ・精霊魔法 ・精霊召喚 ・精霊化

 〇スキルストック

 ・蹴闘士・女神の化身(クロ)・女神の化身(シロ)

 ◇◇◇◇◇◇


 おーきたきた。新しいスキル。

 精霊魔法、精霊召喚はいいが……精霊化ってなんだ? 俺が精霊になるのか? 蝶の羽みたいなの生えるんだろうか……たぶん使うことないな。


「よし、ありがとう!! 久しぶりにいいスキルを手に入れたぜ」

「え、ああ……よくわからないですが、はい」


 こうして俺は新しいスキルを手に入れるのだった。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 フォルテとの話し合いを終えると、エリがミュウと騒いでいた。


「アタシのがおっきいし!!」

「あたしのがデカいもん!!」


 二人の前にはデカいトカゲみたいな魔獣。

 一匹は脳天ブチ抜かれ、もう一匹は大量の矢が刺さっている。

 どうやら狩り勝負をしていたようだ。


「やれやれ……ミュウってば子供っぽいことを」

「お前の妹だろ? 何とかしてくれよ」

「……あの子はまだ十六歳でして。六百年ぶりに生まれた妹なので、私にくっついて世界を知ろうと冒険しているんですが……まだまだ子供なんですよ」


 六百年ぶりの妹……スケールでかい。

 すると、エリとミュウの視線が俺に向いた。


「ケイ!! いいところに、ちょっと来て!!」

「ケイ!! これ、どっちが大きい!? エリってば負けを認めなくてさー」

「お、俺に聞かれても」


 トカゲ……どっちもデカい。

 頭から尻尾まで並べてみるが、これ以上ないくらいぴったりの大きさだ。


「と、とりあえず引き分けで!! また勝負しよう、な?」

「「……むぎぎ」」

「ミュウ。少しいいですか?」

「あ、なにお兄ちゃん。お兄ちゃんはあたしのがデカいって思ってるよね!!」

「はいはいそうですね。それより、ボクはこれから本店に戻ります。あなたはここに残って、ケイさんのサポートをするように」

「え、いいの!?」

「ええ。その方があなたもいいでしょう? ここには同性、同世代の友人もいますしね」

「む、エリは友達じゃないモン!!」

「ははは。ではケイさん、ボクはさっそく行きますので」

「あ、護衛とか付けた方がいいな。えーっと……コジロー、いいか?」


 俺が呼ぶと、黒猫のコジローがスタスタ歩いて来た。

 口にカイワレみたいなのを咥えているのがまた可愛い。


『……なんだ、ご主人』

「あのさ、しばらくフォルテの護衛してくれないか?」

『……いいだろう』


 フォルテには餌用のカリカリをいっぱい持たせる。

 こうして、フォルテはコジローと共に村を出た。


「さて、いろいろあったけど、また村のために頑張るか」

「ケイ、よろしくね!! あ、ベッドは大きめでお願いね!! んふふ、一緒に寝ようね~」

「そこ!! ここは不純異性交遊禁止!!」


 村に新しくミュルグレイスことミュウが加わった……くっ、また女の子か。

 すまん為朝……俺は決して、ハーレムを望んでいない!!

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