第三章
いざ作業開始
さて、犬猫たちを従えることになった日の夜。
この日は、猫たちが狩ったイノシシを掻っ捌き、肉鍋にして食うことになった。
鍋は、村長の家を探したら出てきた……犬の嗅覚ってホントすごい。
火はエリに熾してもらい、肉は煮込む。味付けは塩だけ……異世界あるある、こういう時ってミソが欲しくなるね。
食事を終え、犬たち、猫たちが整列。
俺、エリ、シロ、クロの前に並ぶと、俺たちをジーっと見た。
「……?」
『ケイ、なに呆けてんのよ。あんたの言葉を待ってるの』
「あ、ああ。そっか、そうだよな……で、何すればいいんだ。頭がまだ混乱してるから、上手く考えがまとまらん」
エリを見ると、エリは整列する犬猫を見て目を輝かせている……わかる。可愛いよな。
「おいエリ、おーい」
「ん、なに?」
「あのさ……これからどうする?」
「どうするも何も。あんたはここで生活するんでしょ? だったら、生活基盤を整えなきゃ」
「生活基盤……」
「住むところ、飲み水がメインね。食料はまあ何とかなりそうだし……家の建て直しとかじゃない?」
「ふむ……」
ようやく考えがまとまってきた。
さて……少し、今の状況を整理してみるか。
◇◇◇◇◇◇
まず、俺の状況。
ファルーン王国は俺の力を持て余し、クラスメイトたちの不和を招くということで、魔族との戦争終結まで、このシャオルーンの地で大人しくしてほしい……と、いうことだ。
為朝、うまくやってるといいが。
そして、俺たちを召喚した女神様によると……この世界にいる『魔王』は、悪女神フォルトゥーナとかいう七人いる女神の末妹によって、悪いことになっているらしい。
フォルトゥーナが生み出した魔王が、魔族を引きつれて人間界を占領しようとしている。
そして、キレた女神の姉が受肉して地上に降り、フォルトゥーナを退治するとか。
俺は、このシャオルーンの地で、女神にお願いされて『領地開拓』をする。
この廃村、領地を手入れし、魔王によって傷ついた人間や魔族を受け入れるための土地を開拓して欲しいとのことだ。
そのために、女神の眷属である白犬シロ、黒猫クロを遣わせた。
俺は、ここまで案内してくれたエリと一緒にここを開拓する。
シロとクロのスキルをコピーして覚えた『犬魔法』と『猫魔法』で、総勢六十匹の犬猫を強化、使役することができるようになったしな。
しかもこの犬猫たち、めっちゃ強い。黒鉄レオンと同じくらいの強さを持つらしいし。
と、状況はこんな感じか……いろいろ整理したら、考えまとまってきた。
領地開拓……まあ、やってみるか。
◇◇◇◇◇◇
「……よし」
「お、考えまとまった?」
「ああ。じゃあ……猫たちのリーダー、トラキチ」
『にゃあ!!』
トラ猫のトラキチが前に出る……うん、やっぱ可愛いな。
「猫たちには、周辺の偵察と魔獣狩りを任せるよ。あと、犬たちを数匹連れて、食えそうな食料とか探してきて欲しい……犬なら、ニオイ的なモンでわかるだろ? チーム編成は任せる」
『にゃあ!! わかりました!!』
「そして、犬たちのリーダー、ムサシ」
『わん!!』
「犬たちには、住居の修繕を頼みたいけど……できるか?」
『できます!! 犬強化で知能も強化されていますので!!』
「そっか。じゃあ、住居の修繕と、飲み水……ここ、井戸もあるけど、井戸はどうすればいいんだ?」
テレビで見たことあるが、そんな都合よく思い出せん……今更だが、転移した日本人って都合よすぎるぞ。マヨネーズとかアイスとか、ふつーに生活してて作る機会も知識もあるもんか。
「うろ覚えだけど、井戸は俺がやってみるか。確か、井戸の水抜いて、井戸の側壁を綺麗にして……魔法でどうにかなるかな」
何事も挑戦だ、いろいろ試してみるか。
『くぅん、ご主人様……一つ、お願いが』
「ん、どうしたムサシ」
『住居を直すには道具が必要です。釘、金槌、鋸などあれば……』
「あ、そっか」
「それなら、あたしが近くの村まで買ってくるわ。まあ、シャオルーン領地から出ないといけないから、何日か留守しちゃうけど……」
「いいのか?」
「うん。魔獣狩りの手伝いしようと思ったけど、ニャンズたち強いしね」
「……わかった。じゃあエリ、買い出し頼む」
俺は金貨をエリに渡す……って、これって。
「な、なあ……金貨渡したら、これも税で取られるのか?」
「んーん。あたしはもうシャオルーン領地の人間だし、税制はこっちの法律に適応されるよ。ま、今はシャオルーン領地は税収ないし、問題ないよ」
「……税がないなら、みんなこっちに来たりするのか?」
「来ないよ。だって、こんな廃村だらけ、魔獣だらけの場所に住みたいって思う?」
「……まあ、確かに」
そう言いつつ、エリに金貨を渡す。
そのまま駆け出そうとしたエリだが、シロがストップをかけた。
『あ、待ってエリ』
「ん~シロかわいい。なになに?」
エリ、シロを撫でまわしまくる……なんだろうか。
するとシロ、俺に言う。
『ケイ、犬魔法に《犬召喚》ってあるでしょ。それ使って、エリの護衛を召喚するといいよ』
「犬召喚、そういやそんなのあったな……よし、エリ、いいか?」
「うん!! なんかすっごい面白そう」
俺はスキルから《犬召喚》を選択。
◇◇◇◇◇◇
〇犬召喚
・魔犬ケルベロス ・霊犬ブラックドッグ
・聖犬ライラプス ・竜犬テジュ・ジャグア
・大犬モザドゥーグ ・神犬イヌガミ
◇◇◇◇◇◇
なんだこのラインナップ……召喚したら世界が破滅しそうな名前ばかりじゃねぇか。
これだと猫召喚もマズい気がするけど、どうしたもんか。
まあ……とりあえず、名前からして大きそうな『大犬モザドゥーグ』にしてみるか。
「召喚、『大犬モザドゥーグ』!!」
両手を突き出してスキルを発動させると、地面に巨大な魔方陣が現れた。
そして、魔法陣から巨大な『前足』が……って!! で、デカすぎる!!
「ストップストップ!! で、デカいデカい……って、止まらん!!」
前足だけで全長三十メートルはある。それが、魔法陣を潜って現れた。
召喚が終わり、現れたのは……全長百メートルはありそうな山脈……ではなく、『犬』だった。
真緑の犬。顔には隈取があり、存在感が半端ない。
『召喚に応じて参上……我が名はモザドゥーグなり』
「でっか!! いやデカい!!」
エリや犬猫たちは唖然とする。そりゃ要塞級の犬が現れたら言葉失うわ。
すると、シロが言う。
『モザドゥーグ。身体を小さくして』
『かしこまりました……』
すると、目の前でモザドゥーグが小さくなっていく……そして、最終的には全長三メートルほどの犬になった。馬よりちょっとデカい大きさだ。
『主。命令を』
「……え、ああ。主って俺か。えーっと……エリを背に乗せて、町まで行って買い出ししてくれ」
『かしこまりました。では、奥方、我が背に』
「かっわいい!! 緑色の犬って初めてかも」
奥方にツッコミはなしね。まあ、そっちのが俺もうれしい。
エリはモザドゥーグの背に乗る。
「じゃ、買い物行ってくるね。モザちゃん、よろしくね!!」
『はっ……では、飛ばします故』
モザドゥーグは走り去った。すごいな、メチャクチャ速いぞ。
「よし、じゃあみんな、それぞれ作業を開始してくれ」
『『『『『わん!!』』』』』
『『『『『にゃあ!!』』』』』
こうして、俺たちの廃村開拓が始まるのだった。
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