そのころ、クラスメイトたち①

 ファルーン王国、王城訓練場にて。

 現在、慧のクラスでは微妙な空気が流れていた。


「よぉぉぉぉぉし!! みんな、明日の魔獣討伐は気合入れていくぞォォォォォォォ!!」

「「「「おぉぉぉぉ!!」」」」


 相屋為朝が率いる『真の勇者』チーム、総勢二十二名。

 

「みんな、大丈夫だ。落ち着いて、学んだことを出せばいけるさ!!」

「「「「「…………」」」」」


 黒鉄レオン率いる『勇者』チーム、総勢六名。

 為朝率いる真の勇者チームは、慧に言われた通り、為朝を中心に動いていた。

 こちらのチームは気合が入っている。男女混合だが浮ついた雰囲気はなく、それぞれがスキルを磨き、強くなるための努力を怠らない。


「為朝くん、あたしのスキルなんだけど……」

「うむ。渡辺氏は『僧侶』だったか。回復魔法のラインナップを」

「すごいね……僧侶って聞いただけで、わかっちゃうんだ」

「そりゃまあね!! 異世界モノは大得意!! ふふ、追放ざまぁから悪役令嬢、チートに俺つぇぇ、俺なんかやっちゃいましたの無自覚系までドント来い!!」

「ふふ、面白いね。為朝くん」

「はっはっは!!」

「おいそこ、ラブ禁止だぜ!!」「そうよそうよ!! 真面目にやれ!!」

「はっはっは!! すまんな、オレまたなんかやっちゃいましたか?」


 二十二人のチームは、為朝を中心にゲラゲラ笑っている。

 一見不真面目そうに見えるが、全員のレベルは5まで上がり、魔獣討伐の任務を繰り返すことで実力も、自信も付いて来ている。

 為朝は、仲間たちをうまく載せ、楽しく、面白くやりながら強くなっていた。

 そんな為朝たちを、アリアは見る。


「……タメトモ。ケイとは別の意味で『必要な存在』だな。だが……」


 アリアは、もう一方の……レオンたちを見る。


「オレ、あっちに行きたい……」

「アァ!? んだとテメェ!!」

「だってお前ら!! なんでもかんでも言うこと聞かせようとするし、オレはオレで強くなりてぇんだよ!! いちいち命令すんじゃねぇよ!! なにかあるとすぐ怒鳴りやがるし……有馬が言ってた意味わかったぜ。お前ら、マジでこの国征服するつもりだろ!!」

「テメェ!!」


 キレる鎧塚。クラスメイトを殴ろうと拳を振り上げるが、レオンがその手を掴む。


「やめろ、鎧塚……」

「レオン!! テメェ、こんな言われてムカつかねぇのかよ!!」

「……いいから、やめるんだ」


 鎧塚は手を離すと、クラスメイトの少年は鎧塚を睨んで為朝たちに合流した。

 少年が頭を下げると、為朝が肩をバンバン叩き、少年は笑う。

 あっという間に、あちらのチームに溶け込んだ。

 これで、黒鉄レオンたちのチームは、残り五人。


「……鎧塚、レイナ、セイラ。それと……先生」


 山田先生は残っていた。そして、レオンに言う。


「黒鉄……もう、わかっただろう。今のお前は、見ていて辛い……」

「…………」

「仲間は、友達は、いうことを聞かせるものじゃない。一緒に戦う仲間なんだ」

「…………」


 それは、わかっていた。

 でも、レオンは……自分が選ばれた『勇者』だと錯覚し、仲間たちを管理し、言うことを聞かせようと大きな声を出し、クラスメイトたちを従えようとした。

 でも……最初だけは付いてきた。

 だが、有馬慧の追放騒ぎが起きてから。そして、相屋為朝が新しいリーダーになってから、誰もが黒鉄レオンの言うことなど聞かず、為朝の下に付いた。


「レオンくん!! そんな顔しちゃダメだよ!! だって、レオンくんは『勇者』なんだよ? 勇者は、強くてカッコよくて、みんなの憧れなんだから!! ね、あんなクラスメイトなんてどうでもいい。レオンくんが魔王を倒すんだよ!!」

「れ、レイナ……」

「夢見、落ち着きなさい。勇者っていうのはあくまで称号……」

「うるさい!!」


 夢見レイナは、山田先生の差し出した手を弾く。

 様子が少しずつおかしくなっていた。


「セイラも言ってたじゃない!! レオンくんは真の勇者だって!! レオンくんのチームで頑張るってさ!! ね!!」

「れ、レイナ……ど、どうしたの? なんか変だよ?」

「鎧塚くん!! 鎧塚くん、レオンくんと一緒に、勇者の仲間になって世界を救うって言ったもんね!! 鎧塚くん、すっごく強いし、できるよね!!」

「お、おお……」


 困惑していた。

 夢見レイナの様子がおかしい。

 それか、もともとおかしかったのか。黒鉄レオンに心酔し、この世界における『ヒロイン』の役になろうとしていた夢見レイナは、顔を嬉しそうに歪めてレオンに抱きつく。


「レオンくん、がんばろ!! 真の勇者は、こんなくらいじゃ負けないモン!! 明日の魔獣討伐で、目にモノ見せてやろっ!!」

「……あ、ああ」


 夢見レイナの勢いに押され、黒鉄レオンは頷いた。


 ◇◇◇◇◇◇




「…………ふふ、いい感じに育ってる」



 ◇◇◇◇◇◇

〇夢見レイナ 16歳 女性

〇スキル『聖女』 レベル4

〇パッシブスキル

・オートヒール・幸運上昇

〇使用可能スキル

・神聖魔法

※??????????

・悪女神フォルトゥーナの祝福

 ◇◇◇◇◇◇



「さぁ……踊ってもらうわよ、お姉様たち♪」

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