犬たちの力

 さて、猫たちに名前を付けた。

 三十匹に名前つけるの大変だった。

 そして翌日。猫たちのエサは俺の『猫のエサ』でどうにでもなるが……俺とエリは?

 いちおう、領地に入る前に食料は買ったけど、あと何日ぶんもない。

 俺は、餌を食べる猫をジッと見ているエリに聞いた。


「な、エリ……俺たちの食事だけど、どうする?」

「あー……そっかあ。村で買った食料もなくなりそうだし、何とかしないとね。あたしが村まで買い出ししてもいいけど、一番はやっぱり、この村にお店を置くことかなあ」

「お店、って……廃村だぞ」

「いずれは、ってこと!! ケイ、領地開拓するんでしょ? 廃村も復活させて、生活基盤を整えなきゃ」

「わかってるけど、衣食住……どうすりゃいいんだ。特に、メシ」

「ご飯なら、魔獣を狩って食べるしかないじゃない」


 で、でた~!! 異世界テンプレ、魔獣の肉!!

 正直に言うが、四足歩行の動物みたいな魔獣を狩って食うのはいいが……二足歩行の生物を食うのはかなり抵抗ある。これは俺のこだわりだがね。

 でも、金だって無限じゃないし、もらった資金は何かに使えるかもしれないから、食料だけで消費したくないんだよな。

 

『にゃあ、ご主人様!!』

「ん、おお……えっと、トラキチ」


 俺は、一番最初に強化した猫をトラキチと名付け、三十匹のリーダーにした。

 

『魔獣狩りならお任せください!! にゃあ』

「え……お前たちが?」


 って、忘れてた。強化した猫は黒鉄レオンより強いんだっけ。


『にゃうー、強化された猫は、強さはもちろん知能なども強化されています。今なら、どんなことでもできそうです。にゃおー』


 いちいちにゃあにゃあ鳴くの可愛いな……じゃなくて、任せてみるか。


「わかった。狩りを任せるけど……いいか、無理はするなよ」

『にゃあ!! よし、行くぞ野郎ども!!』

『『『『『にゃあ!!』』』』』


 トラキチは、ネコを五匹連れて森に消えた。

 エリと俺はそれを見送り、エリが言う。


「と、とりあえずあたしも行くから!!」

「あ、おい!!」


 エリも負けじとトラキチたちを追って行った……大丈夫かな。

 とりあえず、食料に関しては任せるか。

 次は、住まいだ。いつまでもボロ村長家に住むわけにはいかない。

 異世界モノだったら、ご都合展開でパッと家が現れたり、やたら豪華な幽霊屋敷を主人公のチートで綺麗にするだけなんだが。


「資材もない、知識もない、道具もない……さて、どうすっかな」

『ちょっと……さっきから後ろ向きなことばかり』


 と、クロが近付いて来て、俺の足に頭をぐりぐり押し付けて来た。


『にゃぅ……猫たちなら何でもできるわ。強化した猫を舐めないで、あなたが思うままに命じてみなさい』

「……」


 そして気付く。俺の後ろに、ビシッと整列した猫たちがキラキラした眼で俺を見ていた。

 しかもソワソワしているのもいる……狩りに行った連中が羨ましいのかな。

 すると、今度はシロがふわふわした尻尾を揺らしながら来た。


『ケイ。きみは、もう少し積極的になった方がいいよ。キミ、頭の中で変なこと考えすぎなんだ。試しに命令したらどうだい? 猫たち、家をなんとかしてくれ……って』

「……じゃあ、やってみるけど。猫たち、家をなんとかしてくれ」

『その言葉を待っていたぜ!! にゃあ!!』

『『『『『にゃあ!!』』』』』


 すると、副リーダーに任命したまだら模様のマダラが叫んだ。

 そして、十匹のネコを連れて森の中へ……ええ、マジで?

 まあいい。じゃあ、他のネコにも頼み事してみるか。


「えーっと……あとは水、そして……ああ、こういう異世界モノだと畑とかもあるな。畑と水を何とかしてほしい」

『にゃあ。フフ、出番のようね』

『そうね。行くわよ、みんな』

『『『『『にゃあ!!』』』』』


 白い姉妹ネコのシーマとマーイが、残った猫を連れて行ってしまった。

 マジで猫頼み。俺、何もしていない。


『あなたはドンと構えていなさい。スキル『模倣コピー』で私たちのスキルをコピーした時点で、もう開拓は完了したようなモノよ』

「うーん……主人公はこういう時率先して動くんだろうけど、俺はあまり動きたくない。と……忘れてた。シロ、お前のスキルは?」

『ん、いいよ。コピーして』


 俺は近くの岩に座ると、クロが太腿に座り、シロがお座りして俺の前に。

 可愛いので、シロを撫でまわしながらスキルをコピーした。


 ◇◇◇◇◇◇

〇シロ ※※※歳 オス

〇スキル『女神の眷属』 レベルなし

〇使用可能スキル

・時空魔法・無限魔法・神魔法・犬魔法

 ◇◇◇◇◇◇


 クロとはちょっと違うスキル構成だ。

 神魔法だけは同じだが……時空魔法、無限魔法はヤバい系で……うん、犬魔法があった。


 ◇◇◇◇◇◇

〇犬魔法

・犬集め・犬のエサ・フリスビー&ブーメラン

・犬強化・犬召喚・犬トーク

 ◇◇◇◇◇◇


 うーん、猫魔法とあんまり変わんないな……で、今度は犬か。

 フリスビー&ブーメランって、遊び道具のことだよな。

 まあいいか……せっかくだし、使ってみよう。


 ◇◇◇◇◇◇

有馬ありま けい

〇スキル『模倣コピー』 レベル23

・現在『女神の化身ゴッデス・アバター(シロ)』 レベルなし

〇パッシブスキル

・速度上昇(極) ・咬合力上昇(極)

〇使用可能スキル

・一覧

〇スキルストック

・蹴闘士・女神の化身(クロ)

 ◇◇◇◇◇◇


 お、女神の化身に(シロ)って付いた。何気にコピーのレベルも上がっている。

 というか、咬合力上昇って……噛む力が上がってもなあ。


「よし、じゃあ……『犬あつめ』!!」


 猫集めと同じく、魔力が周囲に飛んで行く。

 すると、どこからともなく大量の犬が集まった……ってか、柴犬しかいねぇ!!


『くーん』『くぅん』『くるる……』

「あらら……みんな、痩せちまって。待ってろ、今エサ出してやる」


 俺は『犬のエサ』で大量のエサを出す。

 魔法を使うと、皿が現れ、骨付き肉やペースト状の練り餌がドドンと現れる。

 すると、我先にと犬が餌に喰らいつき始めた。

 その間に、俺は追加のエサを大量に出し、犬の数を数える。


「えーと……合計三十匹か。ネコと同じ数だな」

『みんな、この地に隠れ住んでいたみたいだね。ここは魔獣も多いし、犬だけじゃ生活するのは厳しい。キミの庇護に入れてよかったよ』


 シロがそう言うと、餌を喰い終わった犬たちが集まり、おすわりして俺を見ていた。


「あー……これ、猫と同じ流れだな。じゃあお前に『犬強化』だ」


 一番近くでお座りしている茶柴のワンコを強化すると、案の定。


『わん!! ご主人様、ありがとうございます!! この命、あなたに捧げます!!』

「お、おお……じゃあお前は、ムサシだ。これからよろしくな」

『な、名を与えてくれるとは……!! このムサシ、貴方に忠義を尽くしまする』


 そして、他の犬たちもゾロゾロと俺の足下へ。

 全員を強化し、名前を付けてやると、みんな大喜びだ。

 名前を考えるのだけで結構な時間が経過……そして、没頭していたせいで忘れていた猫たちが戻って来た。


『戻りましたご主人様、大物……にゃっ!? ご主人様、その犬たちは……』

「かっわいいぃぃ!! 今度は犬!?」


 トラキチとエリが、大きなイノシシを引きずって戻って来た。

 そして、他の猫たちも合流……合計六十匹の犬猫が集まった。

 

「ね、ケイ。今度は犬!? ふふふ、ほんとにここ素敵な場所ね!! あたし、永住する!!」


 エリは大勢のワンコたちに大興奮だった。

 ムサシを撫でまわしながら、狩って来た大猪を指さす。


「あ、イノシシ狩ってきたけど……猫たち、すっごい強いのね。牙とか爪とかほんとヤバいわ」

「軽いな。でも……すっごい大きさだ。あのさ、思ったんだが……手持ちの道具はナイフしかないけど、あんなのどうやって解体するんだ? そもそも俺、動物の解体なんかしたことないぞ」

『にゃあ、我々でやりますので!!』

『わん、我らも手伝いましょう!!』


 お、トラキチとムサシが互いをジーっと見て……大きく頷いた。


『にゃあ、犬たちよ……ご主人様を守るモノ同士、これから力を合わせよう』

『うむ。猫たち……ご主人様を想う気持ちは同じのようだ。これからよろしく頼む』

「か、かわいい~!!」


 トラキチ、ムサシが頭をぐりぐり合わせている……認め合ったようだ。

 そして、エリがあまりの可愛さに興奮している。


「あの……そろそろ、イノシシ」


 何となく空気の俺は、死んだイノシシを指差し皆を急かすのだった。

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