猫いっぱい

 さて……まず、何から手を付けるべきか。

 俺は、白い柴犬ことシロ、黒い猫ことクロ、そしてエリを見る。

 そして、シロに言う。


「なあシロ。エリに女神様の話、してもいいか?」

『いいけど……信じないと思うよ』

「まあ物は試しで。エリ、ちょっといいか?」

「なになに。ワンコとにゃんこのお世話について? あたし、この子たちと一緒に暮らせるなら、ここにず~っと住んでいいかも」

「そうじゃない。あのさ……俺が召喚されたってことは言ったよな? それと、魔王のこと」

「うん。魔王を倒すために召喚されたんだよね?」

「ああ。実は……魔王は、魔王じゃないんだとさ」

「……は?」


 俺は説明した。

 魔王は、悪女神フォルトゥーナの眷属。そして女神の姉がフォルトゥーナを討伐するために動き出したこと。そして俺は、魔族や人間を保護するために領地開拓してほしいってこと。

 女神に聞いたこと……そういや、女神の名前聞けばよかった……を、説明すると、エリは首を傾げた。


「じょ、情報量多い!!」

「俺も同意……そもそも、スローライフ目指してたのに、領地開拓することになってるし。そもそも、異世界で領地開拓とか、高校生の俺に何を求めてるんだ……ああもう、どうすっかな」

『ね、そんなことよりさ、これからどうするの?』


 シロが尻尾をブンブン振る……こうしてみると可愛い柴犬だ。

 そしてクロが、ネコみたいに身体を俺の足にこすりつけて来る。


『んにゃ……女神様、私たちのスキルを役立てるように言ったじゃない。さ、コピーしていいわよ』

「あ、ああ……お前、ネコみたいだな」

『猫よ。にゃうう……』


 なんとなくクロを撫でると、エリが「あたしも!!」とクロを撫でまわす。

 とりあえず、クロを見てみた。


 ◇◇◇◇◇◇

〇クロ ※※※歳 メス

〇スキル『女神の眷属』 レベルなし

〇使用可能スキル

・空間魔法・超越魔法・神魔法・猫魔法

 ◇◇◇◇◇◇


「テンプレだな……空間魔法に、なんだ超越魔法って……神魔法って、神様の魔法? お、猫魔法……これいいな」


 とりあえずコピーして、と。


 ◇◇◇◇◇◇

有馬ありま けい

〇スキル『模倣コピー』 レベル22

・現在『女神の化身ゴッデス・アバター』 レベルなし

〇パッシブスキル

・幸運上昇(極) 

〇使用可能スキル

・一覧

〇スキルストック

・蹴闘士

 ◇◇◇◇◇◇


 よーし……さて、クロのスキルをコピーしたぞ。

 コピーしたはいいが、何をすればいいのか。


「なあエリ、領地開拓って、何すればいいんだ?」

「あたしに聞かれても。でもまずは、水とか食料、あと住むところかな」

「だよなあ……」


 とりあえず、もう一度周りを見渡してみる。

 どう見ても廃村だ。崩れ落ちた家が二十軒以上、汚染された井戸や川、腐り落ちた樹木、荒れ放題の畑……こんな感じの集落が、シャオルーン領地には無数にある。

 スキルを使って領地開拓!! なーんて、やたらやる気満々の十代若者が主人公のテンプレラノベかっつーの……マジ、やる気あんまりない。


『ちょっとケイ、やる気出してよ。クロのスキル、コピーしたんでしょ』

「まあそうだけど……よし、とりあえず」


 ◇◇◇◇◇◇

〇猫魔法

・猫集め・猫のエサ・猫じゃらし

・猫強化・猫召喚・猫トーク

 ◇◇◇◇◇◇


「おお、猫魔法いいな。よーし……いくぞ、『猫集め』!!」


 魔法を発動。

 すると、俺の身体から魔力が消費され、周囲に波紋のように広がる。


「え、なになに、何したの? って……わぁぁぁ~!!」

『ニャア』『にゃぅぅ』『にゃー』『にゃぁご』

 

 驚くエリ。すると、家の影、森、藪から大量のネコが集まって来た。

 数は三十匹ほど……みんな痩せ細っているし、汚れがひどい。

 

「いいね……それともう一つ、『猫のエサ』!!」


 魔法を追加発動すると、地面に『エサ皿』が現れ、餌で満たされた。

 餌は猫缶かな。猫たちはニャーニャー鳴きながらエサを食べまくる。


「水も欲しいな……『神魔法』にあるかな」


 ◇◇◇◇◇◇

〇神魔法

・神水魔法・神炎魔法・神嵐魔法・神地魔法

・神雷魔法・神光魔法・神闇魔法・神念魔法

 ◇◇◇◇◇◇


 これ絶対『賢者』の超上位系のスキルだろ……って思った。

 とりあえず神水魔法を選択。


 ◇◇◇◇◇◇

〇神水魔法

・ゴッドフォール・アクアスパイラル・ゼロエクストリーム

・タイダルウェイブ・王水・アクアワールド

 ◇◇◇◇◇◇


 なんか、どの魔法も使うと一帯が消滅しそうな気がする……王水って金すら溶かすヤベー水だろ。

 クロを見ると、俺の言いたいことを察したのか言う。


『魔力を絞れば規模も小さくなるわよ……まあ、ここは私がやってあげる』


 すると、クロの周囲に渦を巻いた水の竜巻が現れた。

 どうやらこれが『アクアスパイラル』らしい。本来は水の竜巻で周囲を吹き飛ばす技のようだ。

 竜巻を、空いた皿に入れると、猫たちは水を飲み始めた。


「ね、ケイ。ネコを集める魔法って最高だけど、これからどうするの?」

「…………」


 とりあえず使っただけ……なんて、言えないよな。

 するとクロ。


『あら、猫たちは役立つわよ。ふふふ、あなたの猫魔法に『猫強化』があるでしょう? それを使えば、猫たちはあなたの意のままに従うわ』

「マジで? よし……じゃあ、『猫強化』」


 ネコの一匹を強化してみると、全身の毛が逆立ち、二足歩行になった。


『にゃあ!! ご主人様と呼ばせていただきます!!』

「うおおお、すっげぇ……」

「かわいい~!! ね、触っていいの?」

「あ、待った。せっかくだし……エリに『猫トーク』を使う」


 『猫トーク』を使うと、強化した猫がエリに言う。


『にゃあ。奥様、これからよろしくお願いします!!』

「喋ったぁぁぁ!! かわいいぃぃ!!」

『ふにゃあー!!』


 エリが猫を抱きしめた。

 俺は残りのネコたちを強化。すると、三十匹が整列し、二足歩行で俺に敬礼する。


『ご主人様。おいしいエサをありがとうございます!! 我ら野良ネコ集団、あなた様に従います!!』

『『『『『ニャア!!』』』』』

「あ、ありがとう……思い付きの猫魔法、とんでもないことになったな」

『フフフ……強化した猫は、レベル7くらいの『勇者』と同じ力を持つわ。領地開拓に役立つはずよ』


 クロがそんなことを言う……この猫たち、黒鉄レオンより強いのか。 

 すると、最初に強化したトラ猫が言う。


『ご主人様。我らに名を付けていただけませんか!! お願いします!!』

「名前か……わかった」


 この日、ネコの名前を考え、魔法の水で猫たちを綺麗に洗うだけで終わった。

 領地開拓は明日から頑張ろう……猫たちの力を借りて。

 この日は猫たちに包まれ、幸せな気分で眠ることができたのだった。

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