テンプレ通り!
冒険者ギルドに向かった。
城下の中央にドンとある建物だ。でっかい三階建てでレンガ造り……すごい立派だ。
中に入ると、鍛え抜かれた格闘家みたいな連中が、武器防具を装備しているのが大量にいた。
そっか……スキルを持たない冒険者の最大の武器は、己の身体ってわけか。
大体、四~五人くらいでまとまっている。これ、チームだなたぶん。
俺は周りを確認しながら中に入る。
「…………やっぱいない、か」
スキル持ちはいない。
受付はみんな女性だ。為朝と俺の違いは、こういう時に若い女性受付の元に行かないことだ。
恰幅のいいおばちゃん受付に行き、聞いてみた。
「あの、すみません」
「なんだい、あたしみたいなデブのおばちゃん受付に来るなんて変わりモンだね。あっちに若い子いるじゃないか、そっちにしな」
えええ……下町のおばちゃんみたいな返しされたわ。
まあいい、とりあえず質問する。
「えっと、聞きたいことあるんで。その~……ベテランっぽいおばちゃんのがいいかな、と」
「はっはっは!! あんた、面白いね。よし、受付歴三十八年、ファルーン冒険者ギルドの裏看板、ドドネアおばちゃんに聞いてみな」
なんか気に入られたのか、機嫌よくなったな。
「あの、スキル持ってる人、ここにいますか?」
「スキルぅ? そんなのクラン行くしかないね。ここはスキル持ってない冒険者しか来ないよ。ああでも、うちのギルドマスターならスキル持ってるね」
「おお、会えますか?」
「会えないよ。今、郊外にある『ドラゴンズ』のクランで会議やってる。数日は留守さ」
「そうですか……じゃあ、クランに行けばスキル持ちに会えますか?」
「どうかねぇ……基本的にスキル持ちは、城に召集されて騎士になるか、クランを興して冒険者を引っ張るかだ。個人で会いたいなんてのはけっこういるけど、会ってたらきりがないからね、基本的に個人に会うなんてことはしないと思うよ」
「そ、そうですか……参ったなあ、一目見るだけでいいんだけど」
「あんた、スキル持ちに憧れてんのかい? はっはっは、そういう冒険者はけっこう多いねえ」
「いやあ……」
憧れというか、コピーしたいんですよね……とは言えん。
参ったな。マジでこのまま街を出るしかないのかな。
と、頭をボリボリ掻いている時だった。
「お母さん、お弁当忘れてたわよ」
「ああ悪いね」
にゅっと、横から手が伸びてきた。誰かと思って見ると、なんとも立派な装備をした女性冒険者が、手に弁当を持って俺の隣へ。
◇◇◇◇◇◇
〇エリアリア 16歳 女性
〇スキル『蹴闘士』 レベル2
〇使用可能スキル
・エアドライブ・スカイキック
〇必殺技
・なし
◇◇◇◇◇◇
ギョッとしたね。まさか、俺と同い年くらいの子がスキル持ってるんだもん。
すると、受付おばさんことドドネアさんが言う。
「あ~……そういや、うちの娘も持ってたね、スキル」
「なに? お母さん」
「いや、この子がスキル持ちに会いたいってね。クランを紹介してたのさ」
「へ~……」
女の子……エリアリアっていうのか。
スキルは『蹴闘士』……足技をメインに戦うのかな。
とりあえず、貴重なバトルスキル、コピーさせてもらうぜ。
◇◇◇◇◇◇
〇
〇スキル『
・現在『
〇パッシブスキル
・脚力強化 ・体力上昇
〇使用可能スキル
・一覧
〇必殺技
・一覧
〇スキルストック
・なし
◇◇◇◇◇◇
「───よし!! あの、ありがとうございます!!」
「へ?」
急なお礼に驚くエリアリアさん。ドドネアさんが首を傾げて言う。
「なんだいアンタ。急にお礼なんて」
「いえ、スキル持ちを一目見れたので……これでシャオルーン領地に行ける」
すると今度はエリアリアさんが言う。
「はあ? あなた、あんなところで何するつもり? 魔獣の巣と、廃村しかないわよ?」
「まあ、いろいろありまして。ちょっとスキル持ちに会わないと、道中危険だったんですよ」
「……なにそれ?」
「とりあえず、感謝します。じゃあ」
「待ちな。小僧……ワケありだね? 金もってるかい?」
「え? まあ、少しは」
「よし……エリ、この子の護衛、してあげな」
「えぇ? なんで?」
「あんた、ドラゴンズやタイガースの勧誘がウザイって言ってたろ。だったら、しばらくこの子の護衛でもして、街を離れたらどうだい?」
「あ~……それはいいかもね」
ドラゴンズ、タイガースって……クランだよな? 野球チームじゃないよな? ってか、なんか勝手に話が進んでいる気がする。
「ね、あんた、あたしを雇わない? シャオルーン領地の途中まで護衛してあげる」
「……えーっと」
「金あるんだろ? ケチケチするんじゃないよ、男だろ?」
「あ、はい……じゃあ、お願いします」
こうして、為朝が喜びそうな展開……野良スキル持ちの少女、エリアリアさんが一時的に仲間になった!!
◇◇◇◇◇◇
というわけで……エリアリアさんと一緒に王都を歩いていた。
「あの、なんでエアリアルさんは」
「エリでいいよ。言いにくいでしょ?」
「じゃあエリさん」
「さんもいらない。ケイは十六歳? あたしと同じじゃん」
「……じゃあ、エリ」
うー、女の子呼び捨てとか慣れないな……まあ、いいか。
「エリはなんで、スキル持ちなのにクランに入らないんだ?」
「めんどくさいから」
ぶった切った……いやまあ、すっごいわかる。
「クランとか城の騎士とか、かなり勧誘されるのよね。でもあたし、ソロでやりたいし。お母さんにスキル持ちのこといろいろ聞いてたみたいだけど、あたしのこと言わなかったでしょ? お母さん、あたしがいろいろ誘われているのめんどくさいってこと知ってるから教えなかったみたい。ま、お弁当届けにきたからあたしのことバレちゃったけどね」
なーるほどなあ。
エリ。見た目はかなり美少女だな……相川セイラとか夢見レイナよりもだ。
長い髪は腰まであり、アオザイみたいなのを着ているが足はブーツ、手にはグローブ付けて、腰にはポーチを装備している。
「勧誘ウザいし、しばらく王都から出て旅でもしようかなーって思ってたところに、あんたが現れたってわけ。んふふ、金貨一枚の依頼、しっかりやるから道中は安心してね」
「どうも。期待しています」
「ええ。はぁ~……聞いてよ。なんか城で『召喚』とかいうスキル使って、異世界からスキル持ちいっぱい呼んだの知ってる?」
「……え、ええまあ」
「それでさ、個別指導するとかで、クランのスキル持ちとかいっぱい呼び出されてるみたいなのよ。で、あたしにも指導して欲しいって話来てさー……めんどくさいったらありゃしない」
「……なるほど」
うーん、こういう時って『俺、召喚されたんですけど強すぎるんで追放されました』って言うべきなのかな。為朝だったら『秘密にしろ!!』とか言いそうだけど。
「さて、まだ日も高いし、ここから半日くらい歩いたところにある村まで行こっか。シャオルーン領地までは歩いて二十日くらいかな……」
「じゃあ、よろしく頼む」
「うん、まっかせて!!」
こうして、テンプレ通り……美少女との旅が始まるのだった。すまんな、為朝。
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