仲間ってなに?

 さて、日が暮れ始めたので、そろそろ野営の支度である。

 目的地の近くである川沿いで野営と言った通り、ちゃんと地図の通り来れた。

 で……テントとか、荷物は俺が持っているので、案の定。


「あの、有馬くん……テント、お願いしていいかな?」

「……いいけど。そっちは何すんだ?」

「薪を拾ってくるね。レオンくん、行こっ」

「ああ。じゃあ有馬、よろしく」


 夢見レイナに言われ、四人でゾロゾロと枝拾い……一人くらい手伝えよ。

 まあ、異世界っぽくない、一人でも広げられるワンタッチテントだ。こういう道具が伝わっているってことは、過去にも召喚あって、知識をある程度残したのかもしれん。

 俺はテントを広げ、かまど用の石を探すが……ない。


「うーん、デカい岩ならあるが」


 川沿いにはデカい岩がある……あ、そうだ。


◇◇◇◇◇◇

有馬ありま けい

〇スキル『模倣コピー』 レベル20

・現在『格闘家グラップラー』 レベル5

〇パッシブスキル

・腕力上昇 ・見切り

〇使用可能スキル

・上段爆掌・中段槍突・下段鎌狩

〇スキルストック

・勇者・聖女・賢者・相撲取り・格闘家

・弓士・ボクサー・レスラー・盗賊・弁護士

 ◇◇◇◇◇◇


「とりあえず、鎧塚のスキル使ってみるか……」


 俺は構えを取り、スキル発動。


「『上段爆掌』!!」


 ボッ!! と、上段に向けて放つ掌底が岩に直撃、爆発した……って、マジ爆発した!? なにこれ手に火薬でも仕込んでんのか!? 痛くねぇし!? 怖い!!


「何の騒ぎだ!?」

「爆発音がしたぞ!! セイラ、下がってろ!!」


 げっ……レオンと鎧塚が来た。しかもレオンは剣を装備してるし。

 

「あ、いやその、問題ない。かまど用の岩を探してて」

「かまど用の岩……それで、なんで爆発が」


 俺にも想定外なんだよ。岩を割ろうとしたら爆発したなんて信じてもらえるのか……ってか、もう一回やれとか言われたら絶対やらんけど。


「チッ、おい有馬、なんだか知らねぇけど、騒いでんじゃねぇぞ」

「ごもっとも……悪い、気を付ける」

「フン。 お? でも、悪いことだけじゃねぇな」


 鎧塚の視線の先を見ると、爆破の振動で気絶した川魚がプカプカ浮いていた。

 ラッキー……と、言えばいいのかな。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、かまど用を組み、焚火をする。

 食事は魚。合計で九匹の魚をゲットしたのだが……。


「わ、わたし……魚捌いたこと、ない」

「あたしも。臭いし無理」


 夢見レイナ、相川セイラ……今どきの女子にありがちな『料理したことない女子』だ……おっと、こういうのは差別に当たるんだっけ。

 鎧塚を見るが舌打ちされ、レオンも首を振る。


「……俺がやるよ」

「ンだよ、できるんなら最初からやれや」


 なんかムカつくな……温厚な俺もそろそろキレちゃうよ?

 レベル25の格闘家の上段爆掌喰らわせてやるか? それとも相撲取りの突っ張り顔面に喰らわせてやろうか? なーんてことは言わない。

 魚をさばいていると、四人は荷物からお菓子を出し食べ始めた……いやもう、めんどくっせぇ。

 魚は串焼きにして、味付けは塩だけ。

 焼けるなり、相川セイラががっつき始める。


「おいしっ……異世界の魚、アユみたいな味するね」

「確かにうめぇな。おい、もう一本」

「ははは、鎧塚、落ち着いて食えよ。ほらレイナ」

「ありがと、レオンくん」


 ……こいつら、俺に感謝の言葉もなしかい。

 まあ、いい。ってかしっかり二本ずつ食いやがった。俺、一本しか食ってないのに。


「じゃ、水浴びしてくる。男連中、覗いたら殺すし」

「ごめんね、行って来る」

「気を付けて。何かあったら呼べよ?」

「おい有馬ぁ!! 覗くんじゃねぇぞ!!」


 てめーが一っ番覗きそうだよな、鎧塚ぁ!! 

 って、言えたらいいんだが……小心者なので言えません。

 俺は焚火の傍でお茶を飲む。


「あ、そうだ」


◇◇◇◇◇◇

有馬ありま けい

〇スキル『模倣コピー』 レベル20

・現在『賢者ワイズマン』 レベル6

〇パッシブスキル

・知力上昇・翻訳・詠唱破棄

〇使用可能スキル

・黒魔法・青魔法・赤魔法・緑魔法・黄魔法・紫魔法・白魔法

〇スキルストック

・勇者・聖女・賢者・相撲取り・格闘家

・弓士・ボクサー・レスラー・盗賊・弁護士

 ◇◇◇◇◇◇


 スキルを『賢者』にセットし、俺は城から持って来た本を読む。

 異世界の言葉は理解できるけど、文字は読めなかったんだよな。でも、『賢者』のスキルを付けていると、文字が翻訳されて読めるようになる。


「異世界のラノベ、面白いんだよな……こっちの世界じゃチートとかない、一般人が勇者になって魔王を倒す系のストーリーばかりなんだよな。俺、ラノベ作家になって、こっちの世界で『チートハーレムざまぁ婚約破棄』系の小説書いちゃおうかな……スキルで『小説家』とかあるかな……ふふふ」


 なんて考えていた時だった。


「「きゃーっ!!」」


 と、女子の悲鳴。

 筋トレしていた鎧塚、素振りをしていたレオンがバッと顔を水場に向ける。

 俺はチラッと視線を送ったが、二人がすでに駆けだしていたので読書の続きをする。まあ、夢見レイナに『何もしないで』って言われたし、ちゃんと約束は守るぜ。


「異世界ハーレム……俺には無縁だな。ってか、男側はいいけど、女側ってどういう気持ちなんだろうか……アレって絶対に無理があるよなあ」


 薪を追加で燃やすと、煙が出た……水分多いとこうなるんだよ。


「レイナ、今助ける!!」

「た、助けてほしいけどあんまり見ないでっ!!」

「鎧塚、こっち見んな!!」

「うっほっほ!! 悪いな、緊急事態だ!!」


 なんか水系の魔獣でも出たのかね。

 欠伸をする……そういや、見張りとかどうするんだろうか。


「ぐぉぉぉぉぁぁぁぁ!!」

「鎧塚ぁぁぁぁぁぁ!! クソ、負けるかぁぁぁ!! 『神器解放』!!」


 盛り上がってるなぁ……様子とか見に行った方がいいのかな。

 でも絶対に女子は裸だし、見たらキレるだろうし、そもそも夢見レイナに言われてるし。

 まあ、なんとかなるか……さて、読書読書。


 ◇◇◇◇◇◇


 それから十分後。

 ボロボロの鎧塚、疲れ気味のレオン、そして無傷の夢見レイナ、相川セイラが戻ってきた。


「おー、お疲れ」

「テメェェェェェ!!」


 キレる鎧塚。まあ、当然っちゃ当然だが。


「有馬、なぜ……なぜ、何もしなかった」

「いや、夢見が何もするなって言うから」

「え……レイナ?」


 驚くレオン、すると夢見レイナは言う。


「ひどい……わたし、そんなこと言ってない!! そもそも、仲間が傷ついたり、困ってたら助けるものでしょ!? 有馬くん……最低」


 え、えぇぇ……? なにこいつ?

 相川セイラを見ると、ゴミを見るような目で睨むし。


「……とにかく、ここまでにしよう。レイナ、相川、今日はもう休むといい。鎧塚……きみの無傷じゃないんだ。休むといいよ」

「う、うん……」

「……マジ最低」

「ケッ……有馬、あんま調子乗ってんじゃねぇぞ」


 そう言い、三人はテントへ。

 そして、レオンは言う。


「……有馬。どんなに強力なスキルを持っていても、仲間がいなければ、きみは絶対に勝つことはできないよ……じゃあ、おやすみ」


 そう言い、テントへ引っ込んだ。


「え、俺見張り? ってか……なに、今の」


 仲間って……そりゃ、お前ら四人は仲間だろうよ。

 でも俺、普通にハブられてるんだが……あいつらの言う仲間って、マジで何?

 そもそも、勝つって……倒すの、魔王の話だよな?

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