強くなってます

 さて、俺のスキルが大勢の前でバラされました。

 クラスメイトたちからは羨望の眼差し……と、嫉妬のまなざし。

 そりゃそうだよな。カースト上位連中がめちゃくちゃ睨んでるし……こええ。


「慧くん慧くん、キミやっぱ主人公じゃん!!」

「やかましい。ってか元はといえばお前がな……」


 為朝。マジで距離置こうかな。

 とりあえず、これからスキルの訓練ということで、王城内にある訓練場へ。


「おお、コロシアムのようだ!!」

「お前さ、口閉じるってこと覚えろよ……」


 まあ、わからなくもないが。

 すると、アリアさんが俺に言う。


「ケイ。前に出てくれ」

「……あ、はい」


 言われた通り前へ。


「ケイ。きみのスキルで、この場にいる全員のスキルを『模倣コピー』できるか?」

「え、ええ~っと……まあ、できます。でも……スキルは最大で五つまでしかストックできないです」

「ほう、それを知っているということは……ふむ、昨日のパーティーで検証したのか?」

「ま、まあそうですね」

「ふっふっふ!! 慧くんは『ワイルド』の能力者だったのか!!」

「すんません、『相撲取り』のスキル試したいんで、あいつブン投げていいすか」


 まあ冗談だ。為朝も『相撲取り』だし、たいして太ってない男二人で相撲取ることになる……そんな地獄絵図誰が興味あるよ。

 

「ケイ。これからは、キミを中心に鍛えていこうと思う」

「はい?」

「きみは間違いなく、このクラス最強のスキル持ちだ」


 すると、黒鉄レオンが挙手した。


「意義ありです!! アリアさん、確かに有馬のスキルは協力ですが……最強というのは理解できません!! 数ある能力を使いこなすより、一つを極限まで極めた方がいいと思います!!」

「俺もそう思います。ってか、俺を中心とか……その、無理です」

「ふむ……どうやら、この三十人の中心はレオン、きみのようだな」

「はい!!」


 おいおい、山田先生はどうした……って、生徒に交じって体育座りしてるし!! あんた教師だろ!!

 黒鉄レオンも堂々と『はい』とか叫ぶなよ……。


「甘いな。黒鉄レオン……慧くんは『ワイルド』だ。状況に応じてさまざまなスキルを使うことができる。一より全、普通に考えたらそっちのが」

「『ライトニング』!!」

「あびょばぶぶっぶぶぶる!?」


 おお、『賢者』の魔法を使えた。

 今のは初級の『ライトニング』だ。いいねこれ、為朝用に使うか。

 

「……とにかく、このクラスがオレが率いていきます。みんな、いいよな!!」

「ああ」「そうそう」「まあ、当然」

「レオンくんがリーダーだよね」「うんうん、決まってる」

「そうだな、黒鉄頼むぞ!!」「先生も安心だ!!」


 おい先生、あんた教師だろ。

 というか……黒鉄レオンのやつ、なんか調子乗り始めたというか……為朝がいう『ざまあ対象』っぽい言動や態度になり始めてる。

 いやいや、俺は『ざまあ』しないからな。されるのもゴメンだし、リーダーやってくれるならぜひやってほしい。


「アリアさん、ってわけで……俺中心とか勘弁してください。あっちのやる気ある『勇者』さんに任せましょうぜ」

「む……わかった」


 俺はクラスの中に入り、代わりに黒鉄レオンが立ち、アリアさんの隣に。


「みんな、まずはそれぞれのスキルを確認して、チームを分けようと思う。攻撃、守備、補助と補佐と、戦力を均等に分けてチームを作ろう。アリアさん、いいですよね」

「ああ、そうだな」


 さっそく仕切り始めた……っと、そろそろシビれてる為朝を起こすか。


 ◇◇◇◇◇◇


「…………ど、どうも」

「よろしく、有馬」

「よろしくね、有馬くん」

「……よろしく」

「おう、頼むぜ」


 えー……最悪です。

 俺こと有馬慧、黒鉄レオン、夢見レイナ。そして相川セイラと鎧塚金治。俺を除く四人がカースト上位連中じゃねえか!!

 黒鉄レオンはクラスのまとめ役、夢見レイナはその幼馴染でヒロイン。

 

「……なにあんた、ジロジロ見て」


 まず、相川セイラ。

 ハーフなのか、髪色が金髪ロングでしかもポニーテールだ。スタイルもよく、スカートから伸びる足はすらっと長く、胸もデカい。


「おいテメェ……セイラをジロジロ見てんじゃねぇぞ!!」

「め、滅相もない」


 そして、鎧塚金治よろいづかきんじ……こいつ、セイラに惚れているとかいう空手部で、身長も高いしガタイもめちゃくちゃいい。

 この四人、いつも群れて目立つんだよな……なんで俺がこいつらのチームなんだよ。


「とりあえず、有馬。いろいろあるだろうけど、これから同じチームで頼む」

「あ、ああ……何度も言うけど、俺は別にクラスのまとめ役とかどうでもいいし、隅っこで細々やるから気にしないでくれ」

「そういうわけにはいかない。オレたちはチームなんだし、頑張ろうぜ!!」


 キラキラしやがって……とりあえず、手を出してきたから握手。

 すると、アリアさんが言う。


「それではこれより、スキルの扱い方、そして戦闘訓練に入る!! 皆、心してかかるように!!」


 やりたくねぇ……当たり前のように『戦闘訓練』とか、いやすぎるわ。


 ◇◇◇◇◇◇


 こうして、俺たちのクラスで戦闘訓練が始まった。

 スキルの使い方を学び、戦いの訓練をして、この国の歴史を学んだりもした。

 この異世界、ファルーンは長年魔王と戦っており、すでにけっこうな数の村が滅ぼされているらしい。

 魔族は、『常世の森』とかいう超危険地帯に住んでおり、魔王の領地もそこら一帯とか……マジ勘弁してくれ。

 

 そして、この世界に来て一か月ほど経過。

 みんながスキルの使い方を覚え始め、レベルも少しずつ上がっていた。

 今では、黒鉄レオンのレベルが最高の7にまで上昇、俺はというと、16まで上がっていた。

 ふつーにスキル使ったりしてるだけなんだが……マジ、王国の期待がすごい。

 

 レオンは『勇者』なんだけど、王国はどう見ても俺に期待してる。

 王様に個別で呼び出されたり、お姫様の茶会に呼ばれたり……マジ勘弁ほしい。

 カースト上位連中と同じチームなんだが、そいつらも最近、ギクシャクしている。

 そりゃ、まとめ役の黒鉄レオンじゃなく、俺ばかり優遇されたらいやだよな。


 当然、俺も嫌なんだが……どうしようもない。

 そんな時、ついに事件が起こる。

 そう……やっぱり来てしまったのだ。


 俺がハメられ、王国から追放される『事件』が。

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