ようこそ勇者パーティー
さて、『ようこそ召喚者パーティー』の時間になった。
本来はドレスとか礼服だが、俺たちはそんなもんない。ふつーに制服だ。
パーティー会場に案内されるとドアが開き、会場内にいた人たちが拍手で出迎える。
「ようこそ!!」「勇者さま~!!」「あれが伝説の……」
「世界の平和を!!」「ありがとうございます!!」
大歓迎ムードだ。
クラスメイトたちも困惑半分、浮かれ半分ってところだ。
「うっほぉぉ!! 注目、注目されてるよ慧くん!!」
為朝……こいつは完全に浮かれてるな。
「俺が見るに、お前はクラスのお調子者枠で、ざまあ対象にはならないが主人公の仲間にもならないモブキャラってところだな」
「き、気にしてることを!! だからこうして異世界でキャラづくりを始めたのにっ!!」
会場内に入ると、王様と、その隣にいるお姫様三人……あれ、なんかお姫様増えたな。がいる。
王様が立ち上がると、両手を広げた。
「勇者諸君!! この度、召喚に応じてくれて感謝する!!」
あー……長くなりそうだ。
俺は聞いてるフリをしつつ、クラスメイトたちを観察した。
まずカースト上位連中。黒鉄レオン、夢見、そして数名……名前なんだっけ。
そいつらはもう順応したのか、堂々としている。
そしてお調子者の為朝……こいつはもう堂々どころか調子こきまくってるな。
他の生徒も、順応している奴もいれば、顔色の悪い連中も多い。
そりゃそうだ……いきなり『異世界』に来て、スキルとかいう妙な力で、平和にしてくれー……なんて、気味が悪すぎる。
ラノベとかアニメとかでも召喚はあるだろうが、ああいうのに順応してその世界のルールに適応できるなんて、異常者だけだ。
スマホも通じない世界で、現代人が生活するのはキツイ。
「グラスをどうぞ」
「え、ああ……はい」
思考していたら、王様の挨拶が終わっていた。
給仕のお姉さんが俺にグラスを手渡す。あ、思わず目が合ってしまった。
◇◇◇◇◇◇
〇
〇スキル『
・現在『
〇パッシブスキル
・食物の知識 ・華麗な給仕
〇使用可能スキル
・なし
◇◇◇◇◇◇
「え」
「む、どうしたのだ慧くん」
「あ、いや……なんかレベル上がった」
「はい?」
スキルのレベルが上がった。
いきなりでびっくりした……まさか、コピーするとレベル上がるのか? というか、それしかない。
今日コピーしたのは、為朝の『相撲取り』と、『聖女』と『給仕人』……だよな。まあレベル1から2になるくらいだったら、これくらいでできるみたいだ。
「それでは、乾杯!!」
あ、また思考していたら乾杯始まった。
すると、クラスメイトたちは食事のあるテーブルへ……なるほど、バイキング形式か。
さっそく、貴族っぽい連中がクラスメイトたちに集まって話を聞いている。
「ぬう……やはり、いけめんレオン氏に多くの女性が集まっておる」
「ほんとだ」
「ところで慧くん。レベルが上がったとは?」
「いや、レベルが上がったんだよ。レベル2になった」
「なんと!! ふむ、やはり慧くんは主人公体質なのか……ふむふむ、ざまあさせ、某も一緒に国から出て冒険者になるのもありか……」
「ブツブツ言ってるけど、俺冒険者とかならないぞ。あれただの日雇いバイトみたいなもんだろ。しかも命懸けの」
「み、身も蓋もないことを!!」
そもそも冒険者なんて職業あるのかな。
と───俺たちの元にも、貴族令嬢っぽいのが近づいて来た。
「あの、お話よろしいでしょうか?」
「何なりと、マドモアゼル」
「まあ、お上手」
「為朝……お前ってやつは」
「さ、あちらにワインがあります。星空を眺めながら、話をしましょう」
為朝は俺を無視し、令嬢と一緒に行ってしまった。
さて、一人になってしまった……お。
「はぁぁ……」
「山田先生」
「おお……有馬か」
サラリーマンハゲこと山田先生だ。ワイングラス片手にため息を吐いている。
「子供たちは順応早いなぁ……しかも、当たり前にワインだしな。未成年って概念がないのか?」
「異世界じゃ子供で飲んでるところありますしね」
「そうか……はあ、帰りたい」
「……先生、ホームシックですか?」
「ああ。ビールが飲みたいし、妻との結婚記念日も近いし、高校野球見たいし、熱い風呂に入りたい」
「大人ですねえ」
「……今は生徒たちも興奮が勝っているが、しばらくすれば間違いなく帰りたくなるだろうな。スマホが使えないだけで不便すぎる」
俺はポケットからスマホを出す……まあ、使えない。
山田先生はワインを飲む。
「有馬。お前は平気なのか? その、この世界」
「まあ……異世界っていうのは知ってますけど、召喚されたらたまったもんじゃないっすね。正直、帰りたいです」
「そうだよな……」
「ぶっちゃけると、俺らを召喚したこの国が『悪』で、この国が『悪』だと思ってる『何か』が『正義』の可能性もありますよ。こういうパーティー開いて、俺らの警戒心解いて、ぶっそうなことさせる可能性だってありますし……まあ、ラノベ知識ですけど」
「正義、悪か……」
「先生は『賢者』でしたっけ」
「ああ。明日以降、スキルの使い方、この国の情勢などを授業すると言っていた。まさか、この年で授業とはなあ」
「先生、いくつでしたっけ」
「……三十九だ。おい、どこを見てる」
やべ、禿げ上がった頭ジロジロ見てたのバレた。
ってか三十九歳……苦労してるんだなあ。
「ふう……ありがとうな有馬。お前と話して、少しは気が紛れた」
「いえ。俺もリラックスできました」
「はは……生徒の誰も私に話しかけないが、お前は普通に話してくれる。ありがたいよ」
「……いえ」
「そういえば、スキルだったか? お前は確か……」
「『
「ほお、すごいな」
先生、あまりわかっていないようだ。
試しに先生のスキルをコピーする……うん、まだレベル2のままだ。
「せっかくだし、この会場にいる人たちのスキル、コピーしてみようかな」
◇◇◇◇◇◇
パーティーが終わり、部屋に戻り……俺は冷や汗を流していた。
「ま、マジか……」
冷や汗の理由……それは、今の俺の状態のせいだ。
◇◇◇◇◇◇
〇
〇スキル『
・現在『
〇パッシブスキル
・勇者の闘気 ・勇者の守護
〇使用可能スキル
・神器解放
〇スキルストック
・勇者・聖女・賢者・相撲取り
◇◇◇◇◇◇
会場にいる人たちをコピーしまくったら、レベル10になっていた。
しかも、新しい能力『スキルストック』まで手に入れた。
これ、コピーしたスキルを保存できる。俺の意志で簡単にスキルを切り替えられる。
「け、けっこう強いよな……この国の情勢も知らないのに、レベル10だぞ」
なんか、嫌な予感してきた……どうしよう。
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