幕間 最終話

 文化祭当日がやってきた。もはや、高校の文化祭のレベルを大幅に超えて、コミケレベルになっていた。チャイナドレス、「くっ!」と言っている女騎士、何人が中に入っているのかブルー◯イズ◯ワイト◯ラゴン、うさぎ耳のおじさん。異様な盛り上がりを見せている。

 そして、史郎達のタコ焼き屋も……。


「何でやねん」


「いや、俺も思う。誰だ史郎にコレ準備したの」


 腰蓑と、つけ耳。


「ゴブリンやん」


「だな」


 瑠璃が、恐る恐る出てきた。


「エ、エルフです……」


「……」

「み、耳だけでも良いかな?」


「ぁ、あうぅぅ……。だ、大丈夫です……」


「なんか……ゴメンね?」


 クラス委員長の西村沙耶が手を叩く。

〈パンパン〉


「はい! 女子全員集合! 反省会やるよ! 早く!」


「「「「「「「はい!」」」」」」」


 開店前の一番忙しい時に、クラスの女子全員が出て行ってしまった。


「えっと……どうしたの?」


「まぁ……気にすんな……。さ、俺らは準備だ」


 村人A?コスプレの頼斗がサクサクと準備をしていく。


 開店直前に女子が帰ってきてバタバタしたものの、順調にたこ焼きは売れていき史郎の休憩時間になった。


「頼斗、俺休憩行ってくるわ」


「おうよ。お姫様に宜しくな」


「ああ」




 春のクラスの出し物はお姫様喫茶。もちろん春もお姫様コスプレで接客している。言わずもがな店内は大盛況、春も他所行きの笑顔でニコニコと接客に勤しんでいる。



 急に慌ただしくなるお姫様方。身嗜みを整え出し、そわそわしている。客の注文も無視されだす始末。


「どうしたの?」


 春がクラスメイトに聞いた。


「大丈夫、大丈夫よリサ。いらっしゃいませ。これだけ言えるだけでも大金星よ。すーはーすーはーすーはー。ヤバいヤバいヤバいヤバいーーーーーー」


 確実に聞こえていない。そこに頼斗がやってきた。


「おう春、めっちゃ可愛いじゃん。ついでにコレ付けとけよ」


「……。何よ急に気持ち悪い……。何? つけ耳?」


「良いか? 絶対につけとけよ? お前絶対今日、家で俺に感謝すっから!」


 頼斗が足早に去って行った。


「何なのよ……長い耳?」




 暫くして、店内が静まり返った。コツコツと革靴が廊下を叩く音。


「春はいるかな? 休憩?」


「はいっ!! 休憩! 休憩ですぅー!!」


「ありがとう」


「きゃー! ありがとう言われた! ありがどゔぃわれだぁー!!」


 受付の女の子が腰砕けになりその場に座り込む。


〈コツコツコツ〉


 春の前には、執事服を着た史郎がいた。


「お姫様、お迎えに上がりました」


 恭しく一礼をした史郎がスッと手を差し出す。


「春も俺と一緒でエルフだね。すごく綺麗だよ」


「ぐずっ……じろぅざんん……おにいぢゃんに……ありがどうっでづだえどいでぇぇぇ」


「お、おいおいど、どうした!? 伝える! 伝えとく!? 泣かないで!?」


 春を連れ出した史郎は、校庭で春が泣き止むまでオロオロしながら待っていた。



 

 暫くして春が落ち着き、二人で文化祭を見て回る。ビキニのダー◯ベイ◯ーに、ターン◯ガン◯ム、零◯機、カオスな一階を抜けて二階に。

 射的、屋台、バンド演奏を見た後、二人は屋上のベンチに腰掛けていた。


「あーっ、楽しかったー!」


「ふふっ、私もです! 史郎さん」


「良かったぁー、俺だけメチャクチャ楽しんだと思ったよ!」


「私だけメチャクチャ楽しんだと思っちゃいました」


「「ふふっ」」






「この文化祭が終わったら、流石に受験一色になる」


「はい」


「じ、受験が終わったらさ……。どこかデート行かないかな?」


「……はいっ! 行きます! 行きますー!!」


「うおっ!? い、いいの?」


「はいっ!! いつでも! いつまでも!!」


「いつまでも!? 割とすごい事言ってるよ!?」


「はいっ!! し、史郎さんのお、お、お、お、お嫁さんになりたいですっ!!」


「レイ」


〈ドサ ドサッ〉



「コイツはいらんな、適当に住人か。コイツは……天使のストックか」


そう呟くと、白いローブの老人は、白い靄が晴れる様に消えて行った。

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