第3話良いか悪いか…
神田桃と同棲するようになってルールのような取り決めは初日に行われた。
「私…家事が苦手なんです…本当に何も出来なくて…」
甘えるように僕の視線を探る彼女に軽く嘆息した。
「いいよ。全部僕がやる」
「ホント!?良いの!?」
「構わないよ。だって養ってくれるんでしょ?情けないこと言うようだけど…」
「うん。それは任して欲しいな。数年先のスケジュールまで埋まっているから。問題ないよ」
「凄いな。交際を初めてから調べてみたが…本当に有名人なんだな…」
「うん。痴漢にあっていた当時も売れかけていたんだよ?悪質なストーカーに狙われていて…駅のホームで付き纏われていたんだ。覚えているでしょ?」
「あぁ。うん。あれは大変だったね。変質者に怯えていた桃は僕が座るベンチの隣に腰掛けてきたね」
「そう。どうにか気付いてって願って…徐々に近付いていったの。この人、恋人ですよ〜。って変質者にアピールするようにしたんだ。そうしたら須藤さんは気付いてくれたよね?どうしたんですか?って言ってくれて…私は本当に助かったって感じたの。端的に事情を伝えたらすぐに助けてくれたよね。変質者にあっち行けって言ってくれて。でも変質者は食い下がってきて…恋人?何?同級生?とか言って近付いてきたのを須藤さんは私を庇って駅員さんのところまで連れて行ってくれたよね。変質者が居るから警察呼んでほしいって言って…その場で変質者が連行されるまで私を守ってくれた。あの時…こんな人と将来一緒になりたいって本気で思ったんだ」
神田桃は過去の出来事を懐かしく語ると美しく微笑んで僕の膝に手を置いた。
「懐かしい出来事だね。僕も殆ど忘れかけていたよ。後にも先にも痴漢から美少女を救った経験なんて無かったから。唯一の事だったから…どうにか思い出すことが出来て…僕もよかったよ」
二人きりの室内で甘く感じる視線を向けられながら僕は深く呼吸をした。
この先のことを少し考えながら僕は未来を少しだけ不安に思った。
このままで良いのかと自問自答しながら眉根を少しだけ寄せていた。
「どうしたの?怖い顔して…」
「いや…このままで良いのかなって…」
「何が?どういうこと?」
「ん?もしも僕が桃に捨てられたら…先はないなって思ってしまってさ…」
「なんだ…そんなこと?私が幹を捨てるわけ無いでしょ?大丈夫。いつまでも安心して過ごすといいよ」
「そう…なのかな…」
「ホントだから。信じて?」
「わかったよ…」
僕らはお互いの存在が生きていく指標の様なものとなり共依存的な交際をこれからも続けるのだろう。
それが良いか悪いかは今の僕らにはまだ知る由もないのであった。
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