第2話共依存的な交際開始
「付き合うって…君の名前すら思い出せないんだよ?君のことは何も知らないに等しい。君だって僕のことをそんなに知りはしないだろ?」
ドギマギしながらでも冷静に口を開くと相手の様子を窺っていた。
「そうですね。それでも私は須藤さんが良いんです。あの時、救ってくれた須藤さんじゃないとダメなんです」
「なんでだよ…」
困り果てたように嘆息して息を漏らすと相手は続けて口を開いた。
「ではまずは自己紹介から。
「見覚え?テレビや何かに出ているってこと?」
「そうです。最近では結構な活躍しているんですが…」
「知らないな。テレビを見る暇はないから。でも売れっ子なら恋愛なんてしたらスキャンダルになるんじゃないか?」
「いえ。それは大丈夫です。私は公言しているので。須藤さんの存在を世間に対してインタビューなどで勝手ながら話させてもらっています」
「え…?名前は出してないよね?」
「もちろんです。それぐらいの良識はありますよ」
「そう。でも僕と付き合っても楽しくないと思うよ?今日は二十日ぶりの休みなんだ。相当な社畜だし…会える時間も少ないと思うな」
これを言えば相手も諦めてくれると思われた切り札を切ると神田桃は薄く微笑んだ。
「じゃあ仕事はやめましょう。私の稼ぎで養います」
「それは…」
「良いじゃないですか。ブラック企業をやめられて。私も須藤さんと毎日一緒に居られたら幸せです」
「毎日ってどういうこと?」
「え?だって仕事をやめるんですから家賃を払うのも大変でしょ?だから同棲しましょう」
「なんか話が急過ぎて…ついていけないよ」
「大丈夫です。その内に慣れますから」
「そうかな…」
話は平行線のようにも思えたが神田桃は美しい笑みを浮かべて僕に手を差し伸べてくる。
「私の手を取ってください。必ず幸せにしてみせます」
「良いのかな…甘えても…」
「何が気がかりですか?私は過去に救われているんです。それなので次は私が救う番でしょ?」
「そういうものなのか?」
「そうですよ。一緒に幸せになりましょう?」
「………」
そこから僕は軽く思考を回すのだが、このまま仕事を続けていたら過労死をしそうだと感じていたため甘えるような選択だが神田桃の手を取るのであった。
「付き合ってくれるんですか!?」
それに静かに頷いてみせると神田桃は嬉しそうにはしゃいだ。
「やった♡じゃあこれからいつまでもよろしくお願いします♡」
「あぁ。こちらこそ。世話になるよ」
「じゃあ早速うちに引っ越すための準備をしましょう。それと仕事は辞めてきてくださいね」
それに頷くと僕らは交際を始めることとなるのであった。
後日、会社に赴くと僕は退社届を出して簡単に仕事をやめてしまう。
そして、神田桃の住むマンションへと引っ越しを完了させるのであった。
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