第59話 ドーム公演 *アイカ視点
久しぶりの王都は、『総候参朝』が近づいて、旧都に行く前よりも賑やかさが増してる気がする。
王宮の前宮をくぐって中庭に入ると、大掛かりな工事が始まってた。
『総候参朝』で使う、仮設の舞台と客席を作ってるらしい。
仮設にする意味あります? って規模の工事の横を通り抜け、リティア宮殿に戻る前に、本宮の『謁見の間』に向かう。
まず、王様に報告する『復命』というものらしい。
正面には立派な椅子に座った王様と、横には側妃サフィナさんと第5王子のエディンくんも。
――うわぁ。そっかぁ。
時代劇なんかで見慣れた構図だけど、実際に見るとひどい違和感。校長先生の横に奥さんと子供さんが立ってたら、かなり引く。けど、これが「王国」ってことなんだろう。
リティアさんの後ろに皆んなで並んで片膝を着く。騎士団っぽい。先頭のリティアさんが堅苦しい言い回しで、色々王様に報告してる。
謁見の間には、初めて入れてもらったけど『間』といっても、でかい。
王宮の奥、真ん中に建つ本宮の4階から10階がぶち抜きで、普通の建物だと21階くらいの吹き抜けになってる謁見の間。謁見宮殿とかの方が、しっくり来そう。
サフィナさんは相変わらず吸い込まれるようにお美しく、エディン王子は可愛らしい。
王様の後ろには王様の侍女長、ロザリーさん。
今日も、姐さん! って感じで、しっかりとした目鼻立ちに怜悧な刃物のような微笑を浮かべて真っ直ぐ立ってる。
サフィナさんの後ろには……。
――でけえ!
あれが、サフィナさんの侍女長、カリュさんか。
侍女の先輩3人が口を揃えて「カリュには負ける」と言う、立派なお胸に目が釘付けになる。伏し目がちで気弱そうな表情も、たまらんです。
謁見の間を下がってリティア宮殿の自室に戻ると、山のような贈り物が届いてた。
――なんだこれ?
広過ぎると思ってた表の応接室が、贈り物で埋まってる。
「お帰りなさい」
と、私専属女官のケレシアさんが、にこやかに迎えてくれた。
ケレシアさんの笑顔で、ふわっと、心の中で花が咲くように、ほどける。
2週間弱ぶりの上品でハイソな佇まいは、第2王子妃のユーデリケさんと同系統だけど、ケレシアさんの方が庶民的。
――はぁぁぁぁ。お母さん!
って、胸に飛び込みたくなるよ……。
「ただいま、です……」
この美人の女官さんを独占できるなんて、幸せなことだなぁ。
もちろん、ケレシアさんにとってはお仕事で、本当の娘さんが別にいることは分かってる。だけど、嬉しいものは嬉しい。
――私の部屋で、帰りを待っててくれたなんて……、最高です!
ケレシアさんが急いで拝礼服に着替えさせてくれる。次は旧都から運んだ主祭神さんの依代を、王都の大神殿に納めるらしい。自分が『お世話』してもらえることが、こそばゆく嬉しい。
ケレシアさんによると、西南伯公女ロマナさんが私にお祝いを贈ったことを聞きつけた列候さんたちから、どんどん贈り物が届いているそう。
――貴族様のお付き合い? 見栄の張り合い? ……大変だなぁ。
ロマナさんは敢えて公開して、余計な詮索を封じてるのかもなぁ。
なんて考えてるうちに、お揃いの拝礼服を着たクレイアさんが迎えに来てくれた。アイシェさんとゼルフィアさんも一緒に、リティアさんと大神殿に向かう。
神櫃を恭しく捧げ持ったイリアスさんを先頭に、お揃いの玉虫色の拝礼服で大路を歩く。
――リティアさんの後ろ姿、すっごいキレイです!
侍女の先輩3人もボリューミーなお胸と締まったお腰と……。
街の人たちの視線をいっぱい感じるなぁ。スーパーアイドルグループが、ドーム公演に向かうみたい。
――いやぁ……、自分もこの一団の一人だってことが、現実とは思えません。
王宮の南側に鎮座する大神殿は、王宮とまったく同じサイズの威容で建ってる。王国の主祭神『天空神ラトゥパヌ』を祀ってあるそう。
西側に広がる無数の神殿群とは、建物の規模が雲泥の差だ。
王家と列侯との格の差を誇示してるんだろな。
ドキドキしながら、大神殿に足を踏み入れた――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます