第6話 怪しい人物
「1、2年というと、この公園がある程度整備されてから、少し時間が経っていましたね。それを思うと、犯人が死体を埋めるにはちょうどよかったのかも知れませんね」
と、平松市長はいった。
「なるほど、確かにこのあたりは、公園になっているので、わざわざ、公園の誰も立ち入らない場所には入ろうとしませんよね、そういう意味では、何か他に計画がなければ、捜索することはありませんからね」
と桜井警部補は言った。
「でも、市の事業として、まったく何もしないというわけではないので、その情報がないとすぐに見つかるかも知れないですね」
と市長がいうと、
「でも、その情報を掴むことができれば、一番安全なのかも知れないですね」
というと、
「市の職員であれば、皆知ることができるんですか?」
と聞かれて、
「全員に情報が流れるということはないですが、まずは、公園の管理をしている、環境関係であったり、史跡保護関係の部署などは、知っていますね。でも、別に緘口令を敷いているわけではないので、市役所にいれば、普通に機関紙や部内回覧なあどで、情報は普通に共有しています」
と、市長は言った。
「なるほど、だったら、犯人にとって、今のところ、一番安全なのかも知れないですね」
と警部補がいうと、
「そうかも知れませんね。今回のも、この間の台風の影響で少し露出したところを、犬が見つけたということなんでしょう? まあ、それはある意味仕方がないことですね」
と市長が言った。
「白骨になった人が誰なのかって、すぐに分かるものなんですか?」
と、市長が続けて聞いたが、
「そうは簡単にはいきませんよ。複顔をしたとしても、ハッキリと分かるものではない。ここまで白骨化していると、DNAも難しいのではないかと思いますね。できるとすれば、歯型や、治療による部分くらいしかないでしょうね。何しろ内臓もないので、病気も血液型も分からない。何をどこから調べていのか、正直困ります」
と桜井警部補は言った。
「じゃあ、行方不明者の中で該当しそうな人を探すしかないのかな?」
と聞くと。
「なんといっても年齢も分からないし、性別もハッキリとしない。肉の部分はほどんど残っていあいわけなので、本当にどうしようもないですよ」
ということだった。
「警察の科捜研がどれほどの解明力があるかということでしょうね。さすがに、白骨化してしまっていると、人間の特定にまでは難しいでしょうね?」
「私も警察にいながら、科捜研のことまでは分かりませんね。さっき鑑識に聴いたところでは、性別はもちろん、年齢というのも判別が難しいということでした。だから、行方不明者といっても。今のところむやみやたらに調べなければいけないでしょうね。しかも、死体を確認してもらおうにも、これでは、確認してくれという方が無理です」
というものだった。
「ということは、犯人とすれば、被害者が白骨化してしまった時点で、ある程度は勝ちだといってもいいじゃないですかね?」
と市長がいうと、
「そうかも知れないですね、結果的に被害者の身元が分からなければ困るという人間でないと、ちょっと判明しないかも知れない。しかも、この状態であれば、自殺なのか、ただの死体遺棄なのか分からないということもあるので、そこまで考えると、今のところ、これが殺人であれば、犯人の思うつぼというところでしょう?」
ということであった。
「なるほど、警察も今の時点では、お手上げ状態ということでしょうか?」
と聞くと、
「そうですね。死んだ人間を特定しない限り、この人が被害者なのかどうかも分からない。犯人自体が、とにかくこれを殺人事件ということにしたくないと考えているのであれば、この時点では、犯人の勝ちになってしまうでしょうね」
と、桜井警部補は言った。
桜井警部補は、事件のことはそれ以上何も分かっていないだけに、少し話を変えた。
「ここの城址公園というのは、天守の再建や、さらなる整備というのはしないんですか?」
と聞かれた市長は、
「今のところ、大きな計画はありませんが、天守閣の再建に関しては、検討委員会が設置されていて、時々会議が行われています」
というと、
「でも、この市は、F城の方が有名で、あちらの方が天守の再建としては、優先順位が高いのでは?」
と言われると、
「確かにそうなんですあが、F城の方は、現存資料に乏しく、以前は再建案もあって、検討委員会が発足したんですが、専門家の意見として、再建するまでには、及ばないという結論から断念したんですよ。でも、最近になって、N城の方から、資料が見つかったり、別の県の資料の中から、N城を攻めた際の城攻略の資料が出てきて、そちらの信憑性はあると判断しました。どちらの資料も共通点が多かったからですね」
と市長がいうと、
「なるほど、そういうことなんですね。じゃあ、もし、今回のことが事件であり、殺人か、死体遺棄事件だったとすれば、少なくとも、犯人は、ここが再開発されるということを知らなかった可能性が高いですね」
と警部補がいうと、
「そうかも知れませんが、今刑事さんが言ったように、白骨化してしまうと、身元の判別が極端に難しくなるということから、犯人にとっては、今発見されることは、それほど、困ったことではないんじゃないでしょうか?」
ということであった。
「そうだね。もし、身元が分かったとしても、証拠になるものを発見したり、ましてや、犯人の特定など難しいだろうね。指紋の問題。防犯カメラ、ドライブレコーダーと、絶えず更新が掛かっているものは残っていない可能性が高いからね」
と警部補が話した。
「じゃあ、考え方として。白骨が見つかることに関しては、自分の身は安全だから、別に問題ではないと思っているということなのだろうか?」
と市長がいうと、
「そういうことなのかも知れないね。逆に見つからないと困るという場合もある。そして、白骨が見つかるだけではなく、その身元まで分かるくらいのことは、犯人には想定済みで、逆に身元が分からないと困るということなのかも知れない」
「どういうことですか?」
「例えば、遺産相続であったり、保険金の受取であったりね。ただ、その場合は、遺産を相続する人間、保険金を受け取る人間に容疑は不可あるだろうおけどね」
と警部補がいうと、
「でも、1年も2年も経過していれば、犯人のとっては、関係ないというほど、安全圏だと思っているでしょうね。容疑は限りなくクロでも、物的証拠が何も出てこないとすると、それも、考えられないことではない」
と市長が言った。
「でも、死体が発見された以上、我々は捜査をしないといけないでしょう。今のところは、他殺の可能性が高いということで、後は何も分かってはいないからですね。これもある程度、犯人の計算通りなのかも知れないな」
と警部補がいうと、
「そうですよね。これが事件だということになると、犯人は、相当に頭のいい人で、最初からうまく計算された犯罪に思えますよね?」
と市長は、自分の考えを示した。
「そうだといえるだろうね。まずは、何か一つでもハッキリしたことが分からないと、警察も動けないんですよ。とりあえずは、事件と事故の両面で捜査することになるでしょうからね」
ということであった。
「私も、協力できることは、何でもしていこうと思っていますので、いろいろ聞きたいことがあれば聞いてくださいね」
と市長がいうと、
「ところで、市長さんは、前はアナウンサーをされたいた、平松さんですよね?」
と警部補が聞くと、
「ええ、そうですが」
というと、警部補の顔は一瞬曇った。
それが何を意味するのか、市長には分からなかったが、桜井警部補は、平松市長の噂話をいくつか聞いたことがあり、そのほとんどが、
「悪しきウワサ」
だということもあり、思わず怪訝な表情になったのだ。
かといって、それを相手に悟らせてはいけないと思い。表情と感情が入り混じり、まるで奥歯に何かが引っかかったような複雑な表情になったのだった。
桜井警部補の聞いた市長の悪しきウワサの出どころは、ほとんどが、奥さんから聞かされたことだった。
元々桜井警部補の奥さんは、アナウンサー時代から、平松のファンだったという。
専業主婦をしていた平松の奥さんは、昼間の情報番組、夕方のニュース番組と、平松アナの出演する番組はチェックしていた。
毎日のように見ていたのだが、そのうちに、市長に立候補するということで、テレビを挙げての市長選の応援に、どこか、急に冷めた気がしたのだった。
「平松アナは、そんなに必要以上なことをしなくても、普通に当選するのに」
という思いが強かったからだ。
確かに平松アナの人気は、当時からすごかった。当時は警部補もまだ刑事の時代。ある意味、仕事にばかり気を遣っていたので、奥さんはおざなりになってしまっていたのだが、奥さんとすれば、その心の隙間を埋めてくれた一つの材料が、
「平松アナの存在だった」
といってもいいだろう、
他の主婦からも人気があったこともあって、奥さんとしても、少し気が気ではないとことがあったが、その思いが、
「旦那がかまってくれなくても寂しくはない」
と思えるようになったのは、
「不幸中の幸いだ」
といってもいいだろう。
平松アナが主婦の絶大な人気を持っているということは、ウワサでは知っていたが、ずっと桜井は、自分の奥さんが、平松アナに嵌ってしまっているということに気づいていなかったのだ。
「それだけ、仕事ばかりに神経が集中していた」
ということなのだろうが、
本人の桜井は、自分がそこまで家族をないがしろにしているという意識はなかった。
そういう意味で、刑事時代に、家族に気を遣うことなく、その実力を発揮できたというのは、
「平松アナの存在が大きかった」
といっても過言ではないだろう。
平松アナという人間の存在は知っていたが、そんなに主婦の間で人気があるということも、まさか、市長に立候補することになるなど、想像もしていなかった。
しかし、奥さんには分かっていた。
「平松アナは、この後、もっともっと上を目指す人なんだろうな」
という思いはあった。
それが市長だとまでは思っていなかったのかも知れないが、だからこそ、平松アナが、
「私は今度の市長選に立候補します」
と発表した時、別に驚くこともなかった。
ただ、奥さんの中で、微妙な寂しさがあったのも事実だ。
特に、昼下がりから、夕方の番組に多く出演していた平松アナだったので、今までは、
「賑やかな、喧騒とした時間に、平松アナの顔を見ている」
という印象があったのだが、市長選への出馬を表明したことで、
「何か遠くなったような気がする」
と感じると、今までの喧騒としたイメージを抱いていた夕方が、急に寂しさと恐ろしさ、さらには、言い知れぬ不安に包まれていくのを感じたのだった。
特に、夕方というのは、
「いろいろな意味で、多感な時間帯である」
というイメージは持っていた。
「西日を感じていると、疲れとダルさを一緒に感じるようになり、脱力感からなのか、ムダな汗のようなものが滲んでくるのを感じる」
と思っていた。
さらに、その西日が終わり、完全に日が暮れるまでというのは、風がピタッととまった時間、つまり。
「夕凪の時間帯」
だということに気づく。
夕凪の時間帯というのは、西日の影響が、明らかになくなってきた時間帯で、風が急に止む、そんな時間帯のことをいう。
そして、その時間、太陽の恩恵をほとんどうけないくせに、若干の明るさが残っていることで、モノクロに見える時間があるのだという。
そのモノクロになっていることを、人間は悲しいかな意識をしていないのだ。
「目の錯覚だ」
と感じるのは、無理もないことを意識しようと強引に考えるからなのかも知れないが、そのせいからなのか、
「交通事故多発の時間帯だ」
というではないか。
そんな夕方の時間を、別の言い方をすれば、
「逢魔が時」
と呼ばれるという。
「魔物と一番出会う可能性の高い時間帯だ」
というわけである。
真夜中の丑三つ時など、
「草木も眠る丑三つ時」
ということで、一番出やすいと言われる時間がある。
確かに、丑三つというのが、
「時計を方角に見立てたその時、午前二時前後だということを考えると、その方角が、北東である」
ということが分かるのだ。
北東の方角というのは、
「鬼門の方角」
と言われ、人間にとって不吉な方角だと言われる。
だからこそ、丑三つ時は、
「もっとも、幽霊や妖怪に出会う時間だ」
ということになるのだ。
ちなみに、妖怪というのは、人間以外の生き物が、怪物、怪しい存在に憑依したりしたものである、幽霊というものは、人間の魂が、この世で彷徨っているさまのことを言っているのであって、そもそも、元の状態が、人間なのか、それ以外かということで分けられるものであった。
そんな夕方には、交通事故が多発している。
「モノクロに見えていて、そのことをさらに自覚していないからだ」
ということであり、それだけで説明がつくのだろうが、さらに、そこに、
「逢魔が時」
という発想を絡めることで、オカルト的な印象を深めることで、
「人間の感情や、不安や恐怖が、超自然的なことによって、左右されるというものではないだろうか?」
と考えられるのかも知れない。
そんなことを考えていると、奥さんが、平松アナから、少しずつ感情が離れてくるのを分かるようになってきて、今度は逆に、
「逢魔が時に似合う存在が、平松アナではないだろうか?」
と感じるようになってきた。
妖怪変化というわけではないが、今まで自分の気持ちに入り込んできた平松アナが、自分の感情によって、逃げられないようにしていたと自負していた奥さんにとって。立候補を証明したあの人は、
「私の中からすり抜けていくような存在になってしまったのではないだろうか?」
と感じるようになったのであった。
奥さんは知らなかったが、
「市長選立候補の表明」
というものをした時点で、
「私たちのアイドル」
というイメージを持っていた平松アナが、すり抜けていったことを感じると、
「あぁ、あの人はアイドルでも何でもなかったんだ」
として、気持ちが離れていくことを感じていたのだった。
アナウンサーというものを、アイドルと同じものだとして可視することは、主婦の毎日のストレスを解消してくれる存在として、ありがたいことであった。
しかし、実際に、
「会うことのないだけで、相手からの一方的な発信」
という状態を、どう感じるかというのが、大きな問題であったのだ。
もどかしいと思うのか、それとも、
「ここまで、私の気持ちをイラつかせて」
と思うのか、どちらにしても。ファンに、そう思わせたのだとすれば、アナウンサーの中でも、
「アイドル部門担当だ」
ということであれば、一応の成果はあったということであろう。
そもそも、アイドルというものがどういうものなのか、難しいところであった。
昔のように、
「一人でアイドル」
というよりも、不特定多数の中のアイドルがたくさんいるのが、今である。
そもそも、
「選抜制」
というのも、ある歌番組に、まだ無名の頃に、
「スポットライト」
というイメージで出演が決まった時、プロデューサーから、
「こんなに大所帯では、放送できませんよ」
ということで、人数を絞ることになったことで生まれた選抜総選挙などというやり方。
これは、プロダクション側が最初からもくろんだものではなく、番組との間での問題が、このような形にしたというのは、面白いものであった。
本人たちにとっては、たまったものではないのだろうが、ファンとして、そして、プロダクション側としては、
「新しい形のアイドル」
として売り出していくことに成功した。
本人たちは決して望んでいることではないだろうが、競い合うことで、レベルアップしていくグループになるというのは、
「ケガの功名だった」
といってもいいのではないだろうか。
そんなアイドルグループを、テレビでおだてたり、プロモーションの手伝いをするのもアナウンサーの仕事であっただろう。
しかし、それだけではアナウンサーとしては不十分で、彼ら自身が、まるでアイドルのように振る舞うというのも、局側からすれば、戦略としては面白いものなのかも知れない。
特に女子アナというのは、アイドル級のかわいらしさがあると、言われてきて、アナウンサーに、まるでアイドルのような愛称をつけて呼んだり、女子アナのおっかけなどが出てくると、もうアイドルも同然である。
放送局内部には、女子アナのグッズが、局のゆるキャラのグッズと一緒に売られているのは、まさにアイドルであった。
「最近の女子アナは、一定の男性ファンがいないと生き残れない」
などという話もあり、彼女たちもたまったものでもないかも知れない。
「なんといってもアナウンサーというのは、ただでさえ、狭き門だといえるのではないだろうか?」
ということを分かっているだけに、
「せっかく、狭き門を潜り抜けてきたのに、その先に待っているのは、アイドル扱い? 私たちは、難しい試験を潜り抜け、大学に入学し、そして、トップクラスの成績で卒業しないと、いくらアイドル級といっても、アナウンサーにはなれないのよ」
という、アイドルとの明らかな違いを、プライドとして持っていることであろう。
そういう意味で、アイドルというものを、どうしても、
「少し下」
という見方をしてしまうのはしょうがないことだろう。
特に、アイドルが出ているバラエティ番組で見せる、あのバカさ加減には、いい加減、愛想が尽きるというものであった。
「あんなアイドルが出る。バラエティ番組の司会など、やりたくないわ」
と女子アナは思っていることだろう。
しかし、男性アナウンサーにはそんな嫉妬があるわけではないので、それほど気になることではない。
かといって、男性アナウンサーの中には、
「アイドルなんて、まったく違うジャンルの生き物だ」
という、存在こそは認めても、自分の世界には存在しないということを。意識しているのであった。
「アイドルとアナウンサーの間には、決定的な結界が存在していることだろう」
と考えていたに違いない。
市長は、そこまで確認すると、執務に戻るために、市役所に戻っていった。桜井警部補も、部下の出口刑事を、付近の聞き込みに残し、自分は署に戻っていった。しかし、何しろ、殺人なのかもわからず、殺人であったとしても、いつのことなのかもハッキリしない中において、聞き込みを行うのは、まるで、砂漠で砂金を拾うようなものである。
警察署に戻った桜井警部補は、門倉警部に報告を行ったが、目新しいものは何もなく、
「ただの状況説明」
にしかならなかったのであった。
「桜井君はどう思う? この事件をこのまま放っておいてもいいと思うかね?」
と門倉警部に聞かれたが、
「そうですね、今のところ何とも言えませんね、科捜研なりで何か進展があって、被害者の身元が割れなければ何とも言えませんからね。ただ、白骨死体が誰なのか? ということだけはハッキリさせる必要はあると思います。通常業務を行いながら、時々気にかけておこうとは思っています」
というと、
「そうだな、とりあえずは、桜井君に任せてみようか?
と言われ、
「分かりました。できるだけ、時間を割きたいと思います」
といった。
門倉警部も、本来であれば、
「そんなに事件性のないものなら、そんなに気にする必要はない」
というのであろうが、桜井警部補の様子を見る限り、どこかおかしいのは一目瞭然、そのため、桜井警部補に、適当なことはいえないと思ったのだ。
そもそも、桜井刑事は、実直なところがあり、勧善懲悪とまではいかないが、今のままでは、簡単にそのままにしておけないという思いがあったのか、その証拠が、出口刑事を聞き込みに残したことだった。
何かが気になっているから残したのであって、事件性がないと思えば、いちいち残すようなことはしないだろう。
そう思っていると、出口刑事から、新たな情報がもたらされた。
「ハッキリとは分かりませんが、一年くらい前から、このあたりで、カメラを持った男性が、ウロウロしていた時期があったというのです。そして、その人を急に見なくなったということを近所の子供から聞きこんできました」
ということであった。
そして、もう一つ気になる言葉としては、
「その子が、近所の河原で野球をやっているんですよ。それを監督がいつも、ビデオチェックのために、録画しているらしいんですが、その中に、カメラで撮っている人を抑えた画像があるらしいんですが、それが残っていたんです」
と、出口刑事が興奮気味に話をすると、
「そっか、それはありがたい」
「監督とすれば、子供たちの安全を考えて、何かあったらいけないということで、怪しい人物をカメラに収めていたということですが、それをお借りしたので、持って帰ります」
ということであった。
それを聞いた門倉警部は、
「子供たちの安全を考えてということは、どれだけ、怪しかったということなんだろうね?」
と言われて、
「そういうことだと思います」
と言った。
N城の近くには、川が流れていて、中洲になっていると言ったが、その少し先で、さらに合流して、大きな川になって、海に流れ込んでいるのだった。
そのため、河川敷は広くなっていて、野球のグラウンドや、ゴルフまでできるだけの河川敷が築かれていた。
城址公園に近いというのも、無理もないことであり、公園からまっすぐに降りてきたところに野球場があることから、
「怪しい人物が、今回の事件にかかわりがないとは言えないだろうな」
ということで、とりあえず、ビデオを借りてくることにした。
出口刑事が戻ってくると、手には、マイクロチップのようなものが持たれていた。
「さっそく確認してみますか?」
ということを出口刑事がいうと、
「よし」
と桜井警部補が言ったので、急いで、ビデオ再生の準備に掛かった。
かなりの時間の録画のようだったが、ある程度、男が分かる時間は確認してのことだったので、戻ってきてすぐに、マイクロチップを装填したのだった。
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