第3話 N城天守問題
その時期をいうのは、どうも、隣国の大名から攻められた時だというのだ。
その地区では、京から離れた地域になるので、幕府の力も及ばない。
「地方は地方で、戦略を練って、群雄割拠している」
ということで、京に近くて、しのぎを削っているところよりも、地方の方が、下克上は激しかったのかも知れない。
守護代であったり、国人などと呼ばれる集団が集まって、領主に反旗を翻すと、領主も、さすがに守り切れない。
何しろ、他の国と戦をする時は、領主の手足や頭脳となるべく連中が、勝手に動き出したのだから、手に負えるわけがない。
まるでフランケンシュタインのようなもので、
「味方であれば、これほどの千人力はいないが、敵に回してしまうと、もうどうしようもない」
ということになるのだ。
そこで、彼らの作戦としては、
「城を難攻不落に思わせて、相手の動きを鈍らせよう」
ということになった。
その時に考えられたのが、
「じゃあ、多くな塔のような建物を作って、相手を威嚇すればどうだ?」
ということであった。
「そんな建物、作るのに時間がない」
といえば、
「何、脅かすだけだから、張り子でいいんだ」
ということで、作戦としては、
「秀吉の、墨俣一夜城」
のような作戦だった。
ちなみに、時代とすれば、こちらの方が少し早い、専売特許があるとすれば、こちらにあるといってもいいだろう。
そこで、張りぼてに毛の生えたような天守のようなものだったが、相手はすっかりビビッてしまって、最初に少し攻撃しただけで、引き下がっていったのだ。
少しの間、天守は張り子のままで残ってたが、何しろ特急で作ったものなので、すぐに壊れてしまった。
ただ、
「これを機会に、天守を作るか?」
という話が持ち上がった。
もちろん、その時には、天守などという言葉はなかっただろうから、適当な言葉を当てていたに違いない。
ただ、短期間だけでも存在していた天守を絵に描いた男がいた。それが発掘の際に見つかったことで、
「天守が存在したのではないか?」
ということで調べてみると、攻めてきた側の国に残っている資料を見ると、
「F藩に攻めていった時、威風堂々とした颯爽な建造物に、恐れおののいた」
というような歴史書が残っていたのだ。
実際には信憑性のある歴史書だったので、
「世紀の発見」
と呼ばれたものだ。
この城に、
「天守閣があった」
という話は、
「都市伝説」
として昔から残ってはいた。
しかし、あまりにも漠然としたもので、その形が書かれている書物が見つからないのだから、
「都市伝説だ」
と言われてもムリもないことだった.
しかし、隣の県の城を発掘してみると、この城に聳えていたとされる天守とまったく違う形の天守があったのだ。
当時としては。まだ天守はほとんどなかったことから、
「どんなものを作っていいのか分からない」
ということで、N城天守も、家臣たちが、
「いかに相手の度肝を抜くか・」
ということで考えられた天守だったのだ。
奇抜でさえあればいいわけで、相手が、戦意を喪失するような、歪であってもかまわない。
そういう意味で、
「まるで鬼の面とでもいうような形相に近い天守だったといえる」
というような城で、実際にどのようなものであったのかは、N城址からは、ほとんど発見されなかったが、近くの民家に残っていた絵巻のようなものから発見されたのだった。
その家では、元のN城主だった男の家老をしていたという。
家老自体は、城主が転封された時に、付き従っていったのだが、どうやら、天守を描いた絵だけが残されたようだった。
今まで残っていたというのも奇跡のようなものだが、家人も、蔵の中にあるのが、戦国時代の家老のもので、家宝のようなものだということは知っていたが、それがどういうものであるかということは、ハッキリと分かっていなかったのだ。
ということで、ちょうど、テレビ番組で、
「家宝などを持ち寄って、鑑定してもらえる」
というものがあったので、出演して、専門家に鑑定してもらうことにした。
放送は普通に行われ、
「信憑性は限りなく高い」
という評価だったのだが、それだけでは済まなかった。
番組とは別に、
「ここに描かれている絵は、歴史的な発見に大いなる一歩を示すものになるだろう」
ということで、その絵の研究が、持ち主の許可の元、行われた。
もちろん、借りるわけだから、相当な金銭が所有者にもたらされたことはいうまでもない。
「この絵に描かれているのは、N城のことですよね?」
と専門家が聞くと、
「ええ、そのように聞いています。うちには絵巻や文書も残っているので、それも、お貸ししましょう」
ということで、早速持ち込まれての、歴史的調査が行われた。
実際に調べてみると、
「どうやら、あそこに天守らしきものがあったという都市伝説のようなものがウソではないということが証明されたかのようですね」
ということになってきた。
「それはすごい」
と言っているちょうどその時、その話を聞きつけた隣の県の研究者が、
「うちの藩の歴史書から、N城を攻めた時、天守があったという書物が見つかったんだけど、それらしきものはないということで、我々は結論づけたんだけど、今皆さんが調査しておられることは、こちらの研究が一度断念せざるを得なかった状況を覆す。大変な大発見であるということになるんですよ」
というのだった。
そんな噂もあることから、市の方では、市長を中心に、検討委員会が開かれることになった。
ここの市長は、任期からすれば、結構長い。元々、アナウンサー出身で、
「アナウンサーの頃から、甘いマスクで主婦層あたりから人気がある」
と言われていたが、陰でいろいろなウワサも聞いたことがあった。
「市長になる前の選挙で、奥さんが選挙運動を手伝ってくれているのをいいことに、選挙応援の他の女生徒不倫をした」
さらに、
「不倫がバレて離婚問題になった時、不倫はイメージダウンだからといって、奥さんに口止め料を払った」
などというウワサである。
どこまで本当のことなのか分からないが、
「火のないところに煙が経たない」
とも言われるので、
「どちらでもいいや」
と、興味のない人ほど、信じるのではないだろうか?
そういう人は、逆に、
「信じるから、興味がなくなってくる」
のではないだろうか。
それだけ純真な人なのだろう。そんな人を政治離れにするのだから、ウソだろうが本当だろうが、市長は、市長であるがゆえに、
「その罪は重い」
と言えるのではないだろうか?
そんな市長は、昨今の、
「世界的なパンデミック」
が巻き起こった時、SNS上などでは、
「逃げる市長」
として有名になった。
「あいつは、自分の手柄になるような時は、すぐにしゃしゃり出て、テレビに出ようとするが、今回のような自分がやり玉にあがりそうな時は、絶対にテレビに出てくることはないよな」
というものであった。
確かに、自治体としてマスコミの前に出るのは、県知事であった。すべての決定権は国にあるのだろうが、それを申請することができるのは、都道福家知事だけである。
しかし、流行が加速すれば、普通は県庁所在地の市長であれば、危機感からマスコミの前に出て、せめて、市民に対して、
「何に気を付けるべきなのか?」
などということを、率先して発表することは絶対に必要である。
しかし、その市長は、まったく出てこようとしない。
「あいつも罹って、うめいているんじゃないか?」
などと言われたりもしたが、どうでもいい番組に、マスクを嵌めて出ていることがあったので、
「なんじゃ、結局逃げているだけか」
ということで、さらに、市民に敵を作ることになるのを、あの市長は分かっているのだろうか?
アナウンサー時代は、夜など、キャバクラなどを梯子していたらしいが、市長になって公務が忙しく、そこまではできないのだろう。
「それにしても、市長というのは、そんなに何期も続けるほど、いいものなのだろうか?」
と思うが、果たしてどうなのだろう?
そんな市長が、今回の城が注目されたことで、慌てて、検討委員会を発足したが、実は最初から乗り気でもなかったようだ。
そもそも、お城になど興味があるわけでもなく、ただ、有識者や、歴史研究家たちが、騒いでいるので、一応、何らかの対策をしないといけないと思ったのだろう。
ここらあたりでは、
「有識者や研究家などの、大学教授などを敵に回すと、市長選では不利になるので、決して敵に回してはならない」
と言われているようだった。
そのことは、最初から分かっていて、今まで敵に回すことがなかったので、奥様連中からの人気と合わせ、今のところ、他に有力候補もいないことから、
「市長の座は安泰だ」
ということであった。
ただ、市長は、今回の件に関してはあまり乗り気ではない。
少なくとも、市の財政を圧迫する事業であることは間違いない。だから、市だけでどうなるものでもなく、資金面では、県や国に協力を仰いだり、さらには、有力企業にスポンサーになってもらう必要があった。
もし、再建ということになれば、それらの協力は最低限必要で、それがかなわなければ、どうなるものでもないというのが、検討委員会の結論だった。
では、
「本当に再建に向けて、前進するのだろうか?」
ということであったが、やはり研究者や有識者は、
「再建は必須事項ではないか?」
ということであった。
というのも、F城の方は、
「資料が少ない」
という理由で却下した。
もちろん、それは苦しいいいわけであって、本当の理由が、
「市には、そんなものに使う金はない。俺たちがポケットに入れる金がなくなるではないか?」
ということであったが、死んでも口にできないことで、バレることは完全な命取りになるということである。
F城の時は何とかごまかせたが、今度も、まさか同じ理由で却下することはできない。そんなことをすれば、F城の時のことも、今さら引きずり出されて、せっかくうまくごまかせたことが、そうもいかなくなるのだ。
そういう意味で、N城天守の再建は、F城の時のように簡単に、
「再建しない」
と、議会で決めることもできない。
たぶん、あの時ほど簡単にはいかず。議員の中には、あの時に再建に反対した人も、今回は賛成にまわるということになるだろう。
そうなると、
「議会を開いてしまうと、もう終わりで、再建するということに、自動的に決まってしまい、市長としても、腹をくくるしかない」
ということになるであろう。
そのことは市長も十分に分かっていて、それで何とか、
「議会を開く前で、検討委員会にて、審議の材料を集めよう」
ということにして、ワンクッション置いたのだ。
しかし、このクッションが決して、市長がもくろんだものではなかったようで、検討委員会を開けば開くほど、
「再建賛成の証拠」
となるものが、次々に出てくるのだった。
それを思えば、
「俺は自分で自分の首を絞めたことになるのか?」
と思ったが、やはり、検討委員会は開かないわけにはいかなかったのだろう。
市長は、検討委員会を発足させたことで、
「あれだけ逃げ回っていた市長も、ちゃんとやることはやっているんだな」
と、少しだけであるが、一目置かれたのはよかったのだろう。
もし、ここで委員会を開かなければ。
「ああ、やっぱり、あいつじゃだめだ」
とばかりに、次の選挙では、当選を危ぶまれるほどの支持率になったのではないだろうか?
支持率というのは、落ち始めると、歯止めが利かない。
これまで市長選の時には、それなりに支持率も高く、ただ、それはハッキリとした対抗馬がいないことから起こることで、別に、本当に支持しているわけではないのかも知れない。
それは、先々代のソーリと同じで、
「何も成果が上がっているわけではないのに、名前と他に対抗馬がいないというだけで、いたずらに、長期政権になった。あのソーリのようではないか」
と言われていた。
あのソーリを、
「最悪だ」
と思っていたが、どうもそうでもないようだ。
今のソーリは、もっと最悪で、その渦中のソーリが罪人風に行っていたとされる、
「疑惑を解明する」
といって、総裁選を勝ち抜いたくせに、ソーリになってしまうと、
「先々代のいいなり」
になってしまい、まさに、
「傀儡政権」
とまで言われた。
しかも、国内で、パンデミックや不況。さらには、自然災害などで、金が必要な人が相当数いるのに、そんな人間を放っておいて、海外に対して、戦争で攻められている国があるので、
「その人道支援だ」
ということで、容赦なく、日本人の血税を、簡単にばら撒いている。
要するに、このソーリは、
「日本は、金をどんどんくれる。そんな国のソーリの名は……」
ということで、自分が世界から英雄のように思われたいがための、ただの。
「パフォーマンス」
にすぎなかった。
最初は人道支援ということで、それらの行動に支持率の低下は、そこまで顕著ではなく、高い水運を保ったままであった。
しかし、ここにきて、ある宗教団体。いや、実態は詐欺集団と、政府の大臣を中心として、与党全体がその団体にまみれているという状況が浮き彫りになってくると、さすがに支持率は急落、しかも、
「私はちゃんと世間の意見の聞く耳を持っている」
と言っていたくせに、説明責任を果たそうともせず、たまに表に出てきて、釈明するかと思えば、
「毎回同じことを繰り返し言っているだけ」
ということで
「これだったら。何も出てきて言わない方がいいのではないか?」
と、まるで、国民感情という火種に、火をつけて、そこに油を注いでいるのと同じではないのだろうか?
しかも、その先々代の問題のソーリが、暗殺されたことで、そのソーリを支持する人たちの票を失いたくないということで、こともあろうに、
「国葬にする」
などと言い出したのだ。
国民もさすがに、先々代が、都合が悪くあると、一度ならずも二度までも、
「病気が悪化した」
といって、病院に逃げ込んだ男の悪行を許しはしないだろう。
あのソーリのせいで、自殺に追い込まれた人間が少なくとも一人はいるのだから、今回の暗殺も、
「天誅だった」
といってもいいだろう。
それを、まるで、
「国のために殉職した」
とでもいうように、国葬とはどういうことなのだろう?
自殺をした人は他にもいたかも知れないが、これは何も人数の問題ではない。一人であろうが、数億人であろうが、
「命が奪われた」
ということに変わりはないのだ。
その命というのを、そのソーリがどう考えたのだろうか? 国会で攻められても、
「それはすでに解決済み」
と冷静にいうだけで、答えになどなっていない。
それを思うと、
「政府って、何なのだろうか?」
と思わざるをえないのだった。
日本がどこに向かっているのか、考えれば考えるほど、
「ソーリが交替すればするほど、どんどんひどいやつになっていくではないか」
としか思えないのだ。
しかも、
「今度の首相は今までと違う」
と思っていただけに、裏切られたと思うとその思いはひとしおだ。
だからなのだろうか?
なかなか国民は、ソーリのことを信じようとする。
「そうでもしないとやってられない」
という思いがあるのも事実なのだろう。
国民を裏切り続けてきた、歴代ソーリ、ここ何台者ソーリに共通して言えることは、
「国民の過半数以上が反対していることを、強引に推し進める」
ということであった。
先代のソーリだって、
「世界的なパンデミック」
の中、いくら決まっていたからといって、オリンピックを強硬した。
何が、
「安心安全」
だというのか、たくさんの患者を出し、何よりも、開催前の、スキャンダルなどのドタバタ劇は、
「果たして、日本が開催国です」
と言って、誇れるものだったのだろうか?
出るわ出るわ、スキャンダルや解任事件。それを国民は冷めた目でみながら、
「それでもオリンピックをやるのか?」
ということで、反対票が、アンケートでは、七割を超えていたはずだった。
ちなみに、今回の国葬問題も、反対が七割を超えていて、実際に国葬の最中には、沿道でデモ隊による抗議運動が勧められていたくらいではないか。
他の国の参列者たちは、どう思っただろう?
そんなに反対者がたくさんいる国葬に出なければいけない自分たちのことを、
「可愛そうだ」
と思っていたかも知れない。
オリンピックの時だってそうではないか。
国民の意見を無視してまで、世界オリンピック委員会の会長の、
「ご機嫌取り」
のための開催。
ここで辞めてしまうと、
「二度と日本が誘致を願い出ても、一度中止をした国ということで、開催に賛成する国など出てはこないだろう」
という思惑もあったのだ。
それを考えると、国民の反対意見など、
「どうせ、大会が終われば、国民は忘れてくれるさ」
とばかりに思っていたのだろう。
その証拠が、
「国民は、オリンピックが終われば、気持ちが、やってよかったと思うはずだ」
というきれいごとを言っていたが、実際には。
「終わってしまえば、ウワサと一緒で、他のことに目が行くので。オリンピックを強硬したという意見は萎んでいくだろう。しかし、もしオリンピックをしなかったら、あの首相の時のオリンピックは中止になったという汚名ばかりが残ってしまって、何もいいことはないではないか?」
とうことになるのを恐れ、天秤に架けた結果、
「オリンピック恐慌」
という暴挙に出たのだ。
結果このことが、国民の信頼を失い、次の総選挙前に、
「このソーリでは、議席数と一気に失うだろう。俺たちのような比例当選した崖っぷちの議員は、次にはもう生き残れない」
ということで、今のソーリを次の総裁選では支持しないという人が増えてきたことで、党の重鎮である人から、ソーリに対して、
「ここは、身を引いてくれ。そうでもしないと収拾がつかない。我々も君を支持することはできないので、君は強引に出てくれば、我々は敵ということになる」
という、一種の、
「脅し」」
を仕掛けられた。
それを思い、先代のソーリは出馬することなく、
「よかった」
と思っていると、さらに最悪のソーリが出てきたということだ。
「これが日本なのか?」
と思うと、情けなくて仕方がないというものだった。
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