第7話 調査報告

 わたしたちは潜入調査の報告をするため拝殿の中で待つ加賀の元に戻った。聞かれてはまずいこともあるかもしれない――彼なりの配慮はいりょだった。


 拝殿の中に入ると、祭殿の中央にある赤い座布団の上に加賀が座っていた。そこは本来、御神石が祀られていた場所。バチでも当たらなければよいが。


「思ったより早かったね」


 加賀は意味もなく笑顔を見せた。


「なにか情報はつかめたかな?」

「はい。予想外のことがふたつ」

「では聞かせれもらおうか」


「結論から言いますと、御神石はもうにはありません。当初わたしは落ち葉の中に御神石が隠されていると思っていました。ですので、落ち葉の回収作業のお手伝いをしながら御神石を探したのですが、残念ながら発見することはできませんでした」


「おいおい。探して見つからなかったからという結論は、少々強引すぎるだろう。もっと論理的に考えないと」


 わたしたちはいちど視線を合わせる。加賀の一挙一動いっきょいちどうに注意を払っているからだ。


「その必要はありません。だって、犯人の自供が得られたのですから」


「今……なんて言った?」


「ですから、と言ったのです」


 加賀の表情が一瞬こわばった。首を大きく回した後、頭を左右に倒し、動揺をさとられまいとする。



「ちなみに、もうひとつの予想外も聞かせてもらえないかなぁ?」



「あれっ! おかしいですね〜」


「なにがだ!」


 加賀の語気が強まる。


「ここは普通、、と聞き返すところじゃないですか。今の流れだと、加賀さんはすでに犯人がだれなのか知っているように聞こえてしまいますよ」



 言葉に詰まる加賀。



「まぁいいでしょう。犯人は葉桐さんでした。報酬の100万円に目がくらみ闇サイトの依頼を引き受けてしまったそうです。依頼者の指示で神社清掃の集合時間を遅らせ、当日は駐車場で空砲を3発撃ち、その後、分岐点まで急いで走り、鶴川村の人たちに見つからないように神社まで行ったそうです。次に、依頼者によってあらかじめ細工のされていた拝殿裏側の壁板から中に侵入し、御神石を壁板の穴から外に落とし、その上に落ち葉を乗せ見えないようにした。これが今回の騒動の全貌ぜんぼうです」



 わたしたちは加賀に詰め寄った。

 押し黙る



「ここにくる前に確認したのですが、御神石はこの拝殿裏の急斜面の下に落ちていました。それも割れた状態で。数日前に報道された割れた殺生岩となにか関係があるのではないですか? 教えてください!」

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