第5話 潜入調査①

 わたしたちは裏参道に向かった。


 そこで、亀山村の代表たちと合流し、落ち葉の回収作業を手伝うことにした。


「はい、軍手」

「すみません。お借りします」

「でも、なんだが悪いねぇ。お仲間さんとの件も解決してないのに掃除まで手伝ってもらってさー」


 佐倉と名乗るの男が気さくな態度で声をかけてくれた。


「いいえ、お気になさらずに。佐倉さんが仲裁してくれていなかったらもっと悪い方向に進んでいたと思います」


「お綺麗きれいな上、つつましい性格。どうだいオレと結婚を前提とした真剣なお付き合いを……」

「お断りします!」

「残念ー。でもオレあきらめないから」

「その熱意は買いましょう。可能性は低いですがチャンスありです」


 ウインク。


「や、やった〜」

「も~ そうやって思わせぶりなことを言ってまどわすのはよくないことだからね、茜。ごめんなさい。佐倉さんも本気にしないで」


 佐倉は頭をきながらまばたきを繰り返した。


「佐倉18連敗~」

「残念賞~」


 遠くからそんな声が飛んできた。


「お前らー、立ち聞きすんじゃねー」

 

 みんなに愛されているリーダーといったところだろうか。心地よい雰囲気だ。

 

「佐倉さんは亀山村の村長なのですか?」


「いいや。村長はオレの親父。足腰が弱っちまった親父の代理として、ここ数年、仕方なくやってるって感じかな」


「そうでしたか。御神石についてはなにか聞かされていますか?」

「うーん……………………忘れた」


 わたしは体がガクッとなった。

 なんだったんだ、その間は――期待して損した。


「いや待てよ。確か……きつねがなんたらって言っていたような……」

「狐ですか」

「あとは思い出せん!」


「最後の質問です。鶴川村と亀山村は仲が悪いと聞きましたが本当ですか?」


「だれがそんなデタラメ言ったんだ。過疎かそ化の進む村どうしなんだぜ。いがみ合ったところでなんの得にもならんよ」


 鶴川村の加賀と、亀山村の佐倉の話に生じたズレ。それはつまり、どちらかがうそをついていることになる。

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